800台のクラスタのGPS将棋が優勝
[2012年5月7日更新]
毎年5月に行われている世界コンピュータ将棋選手権、今年の第22回選手権は42チームが参加し、5月3日から5日に電気通信大学で開催された。コンピュータ将棋同士がサーバを介してLAN経由で対戦する。対戦するコンピュータは会場に持ち込むのが基本だが、今回は、ネットワーク経由でリモートで参加するチームも目立った。
今年1月にはクラスタ並列の将棋ソフトボンクラーズが米長永世棋聖に勝利し、プロ棋士レベルになってきたコンピュータ将棋、来年には第2回電王戦としてプロ棋士5名と5つの将棋ソフトが対局することが決定している。今回の選手権は、その出場権をかけての大会ということで注目を集めた。
5月3日の1次予選、5月4日の2次予選を経て、5月5日に8つのプログラムが総当たりでコンピュータ将棋最強の座を争う。2次予選では、昨年準優勝のBonanzaが敗れ、決勝進出ならずという衝撃的な結果となった。勝負は時の運とはいえ、上位のコンピュータ将棋が実力伯仲になったことを再認識させる結果であった。
決勝の激戦を制したのは約800台のPCで並列化し、1秒に2億8千万手を読むGPS将棋。準優勝は昨年優勝のPuella α(ボンクラーズから改名)、3位には昨年新人賞のツツカナ、4位ponanza、5位習甦という結果。この5チームが第2回電王戦出場の権利を獲得した。
GPS将棋は昨年も263台と大規模な構成だったが、今回はその3倍以上の構成(797台、804プロセッサ、3224コア、メモリ3272GB)で、大規模並列化で将棋を強くできることを実証した。6勝1敗での優勝、1敗も将棋は勝っていたが時間切れで敗れたもの。
準優勝のPuella αは4台のPCで22コア、4位のponanzaはクラウドで70コアなど複数のマシンを使うチームが多いなかで、決勝初出場のツツカナが1台のPC(2プロセッサ16コア)で3位に入賞したのは立派。なお、Bonanzaも26台、47プロセッサ、288コアというGPS将棋に次ぐ規模で参加していたが、ツツカナは2次予選でBonanzaを破った。
将棋の指手探索は樹構造になるが、可能な指手が非常に多いため、どの手を深く読むか判断しながら展開することになり、単純には並列化できない。多くのマシンに分散すると通信オーバヘッドも問題になり、大規模な並列化は難しいと考えられていただけに、今回GPS将棋が大規模並列構成で優勝という結果を出したことは、すばらしい。
コンピュータ将棋選手権は個人ベースの参加のため、大規模な環境を用意することは予算的に厳しいが、例えば64プロセッサのSMP型の大型サーバ、あるいは京のようなスパコンを利用できたら、さらに強いコンピュータ将棋ができる可能性がある。今後スポンサーがついてプロ棋士のタイトルホルダーとの対戦が実現することを期待したい。
今年は決勝だけでなく、1次予選、2次予選もニコニコ生放送でインターネットで放送され、プロ棋士の解説をのべ18万人近くの人が楽しんだ。対局の内容や対局会場の様子も、棋譜中継や、中継ブログなど、多彩な情報が発信され、ネット経由でも臨場感が味わえる選手権となった。
選手権の情報は下記にまとめているので、興味のある方は参照されたい。
===> 第22回世界コンピュータ将棋選手権 (詰将棋メモ)
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