連移動趣向?
[2006年10月30日最終更新]
以前、詰研会報300号記念の詰研大会で、趣向詰の分類を発表したことがある。そこでは趣向詰の目的を10種類に分類していたのだが、最近、大阪市立大学将棋部でいのてつさんの作品を見ていたら、10種類のどれにもあてはまらない趣向詰があった。分類を追加しなければならないようである。
・趣向詰の分類 (おもちゃ箱) (次頁へは、上部の木目のバーをクリック)
趣向詰の分類では、目的、構成、論理構造、物理構造の4つの観点から趣向詰を分類することを試みた。そのうち、目的による分類では、次の10種類に分類している。
移動趣向 | 玉(全体)の平行移動 |
ノコギリ趣向・連合趣向 | 詰方駒の平行移動 |
呼出し趣向 | 玉方駒の平行移動 |
連捨て趣向 | 詰方駒の消去 |
はがし趣向・連取り趣向 | 玉方駒の消去 |
連置き趣向 | 詰方/玉方の置駒を発生 |
持駒変換趣向 | 詰方/玉方の持駒の変化 |
置駒変換趣向(駒種、成生) | 詰方/玉方の置駒の変化 |
駒位置変換趣向 | 詰方/玉方の二つの置駒の位置の交換 |
知恵の輪趣向 | 変化要因が不規則 |
どれにもあてはまらない作品とは、大阪市立大学将棋部の詰将棋集のその11、いのてつさんの作品(詰パラ2004年12月デパート)。初形で27飛が質駒になっており、3手目から 「82歩、91玉、92歩、同玉、38角、47角合、同角、91玉、81歩成、同玉、36角、同香」 で、35香が36に移動して新たな質駒になる。以下、同様の手順で、44香が45に、53香が54に、62香が63に移動する。
これまでにも玉方の駒が連続して移動する作品はあったが、移動したあとすぐに取られていたため「連取り趣向」に分類していた(上田吉一さんの「五月晴れ」など)。
このいのてつさんの作品は後半は通常の遠打型の連取り趣向になるのだが、前半の趣向では斜めに並んだ香が移動するだけなので、これは連取り趣向とは呼べない。「連移動趣向」とか、新規の分類を作るしかなさそうである。
あまり良い名前ではないので、すでに名前が付けられているか、あるいはもっと良い名前があったら、ご教示ください。また、この趣向は以前にもあったのか、ほかにこの趣向の作品をご存知の方がいたら教えていただければ幸いです。
近藤孝氏の「蟻地獄」
2006年10月30日、Urakabeさんよりコメント
「近藤孝氏の「蟻地獄」近代将棋昭和46年7月も連移動趣向でかな?」
上田吉一氏の「積分」
2006年10月8日、神無七郎さんよりコメント
「同じタイプの趣向としては上田吉一氏の「積分」がありますね。」
ご教示ありがとうございます。「積分」、「蟻地獄」も香の移動が繰り返しのキーになっていますね。ただ、香の動かし方が不規則なので、私の分類では知恵の輪趣向になるかもしれません。
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コメント
同じタイプの趣向としては上田吉一氏の「積分」がありますね。
投稿: 神無七郎 | 2006.10.08 17:57
近藤孝氏の「蟻地獄」近代将棋昭和46年7月も連移動趣向でかな?
投稿: Urakabe | 2006.10.30 01:09
くるくる展示室 No.36 凡骨生氏作
おもちゃ箱 2006年7月
は連移動趣向なのでしょうか?
投稿: Urakabe | 2006.11.07 01:40
凡骨生さんの作品は玉が移動しているので、普通の移動(送り)趣向です。くるくるおもちゃ箱だと、第5章 お供がいっぱい に分類されます。
投稿: TETSU | 2006.11.07 05:04