田島秀男さんの詰将棋
[2020年10月2日最終更新] 345手の解説動画へのリンク追加
田島秀男さん、驚異の三重ノコでも話題になったが、田島秀男さんの作品はこれまでの詰将棋の常識では考えられないような超絶的な作品が多い。解答者ゼロや1名だけということも珍しくない。なにしろ、コンピュータでもほとんど解けないのだ。ネットでもいくつかの作品は見ることができるので、ここでも代表的な作品を紹介したい。詰将棋の深遠に迫る田島秀男作品の世界、あなたも触れてみませんか。
- 1枚の飛の王手回数記録作品 176回 詰パラ1999年10月「乱」
- 銀の王手回数記録作品 118回 詰パラ2013年4月
1枚の銀の王手回数記録作品 118回 詰パラ2013年4月
1枚の角の王手回数記録作品 101回 詰パラ2013年4月 - 七種合の短手数記録作品 詰パラ2013年11月
- 1枚の銀の応手回数記録作品(旧) 25回 詰パラ 2015年11月
田島秀男さんの300手超え長手数作品 (おもちゃ箱 超長編作品リストより)
- 607手(早詰) 詰パラ2014年6月
- 579手 詰パラ2013年4月
- 「まだら」 569手 詰棋めいと29号(2001年5月)
- 519手 詰パラ2015年10月
- 「乱」 451手 詰パラ1999年10月
- 443手(早詰) 詰棋めいと26号(1999年7月)
- 「夫婦馬」 423手 詰棋めいと31号(2002年11月)
- 401手 詰パラ2015年11月
- 373手 詰パラ2017年4月
- 345手 詰棋めいと27号(2000年2月)
田島秀男さんの200手超え長手数作品 (詰将棋一番星 超長編全作品より) *上記以外
田島秀男さんの看寿賞受賞作品 (全詰連HP 看寿賞のページより)
- 1999年度長編賞 解説No113 田島秀男 『乱』 451手
- 2001年度長編賞 解説No122 田島秀男 『まだら』 569手
- 2002年度長編賞 解説No125 田島秀男 『夫婦馬』 423手
- 2005年度長編賞 平成17年度看寿賞 (詰将棋パラダイス)
- 2013年度短編賞、長編賞 平成25年度看寿賞 (詰将棋パラダイス)
- 2015年度長編賞 平成27年度看寿賞受賞作
平成27年度「看寿賞」先行発表 全6作品! (詰将棋パラダイス)
田島作は「知恵の輪」か? (mixi みんなの日記) - 2017年度長編賞 平成29年度看寿賞 (詰将棋メモ)
その他の作品
1. 田島秀男 「乱」 451手
詰パラ1999年10月
1999年度看寿賞長編賞受賞
正解者ゼロの難問。飛追いをしながら7段目の歩を連取りしていくのだが、変化紛れが極めて複雑で、趣向に入ることすら容易ではない。しかも歩が消えるとまた手順が変ってしまう不規則な連取りで、さらに収束も難解とあっては、正解者がいないのも当然とも思えてくる。
全詰連HPに近藤真一さんの詳しい解説があるので、別画面で「乱」の手順を並べながらじっくり読んでいただきたい。
近藤真一さん 「詰将棋はどこまで、複雑化できるのだろうか、それは誰にもわからない。しかし、『乱』はその極限に最も近づいた作品である事は間違いない。 ・・・ 私は、幾度となく本作を並べているが、未だにその全容が理解できないでいる。本作を真に理解するためには、作者と同じ思考空間を共有するしか方法がないのかもしれない。」
2. 田島秀男 「まだら」 569手
詰棋めいと29号(2001年5月)
2001度看寿賞長編賞受賞
馬ノコによる再帰連取り。再帰連取り自体も珍しい趣向でご存知ない方も多いと思う。初めての方は先に今村修さんの「天月舞」を並べてみると原理がつかめるだろう。
並んでいる歩を順に取っていくのだが、ある筋の歩を取ると歩合され、それをまた取らなければならない。そのため、取る歩の位置だけ書くと、56、65、56、74、65、56、83、74、65、56、92、83、74、65、56、という具合になる。
本作の斬新なところは、2枚の馬を連係して歩を取りに行くところ。歩には金が利いているので、その歩に2枚の馬が利いている状態にしないと歩が取れない。そして、馬をその位置に移動させるために2枚の馬を両方馬ノコで移動させるわけである。
「乱」とは違って、この作品は規則的で、並べれば理解しやすい。別画面で「まだら」の手順を並べながら、全詰連HPの近藤真一さんの「まだら」の解説をお読みください。
3. 田島秀男 345手
詰棋めいと27号(2000年2月)
古今の詰将棋で唯一「寿限無」型の再帰手順を実現した奇跡の作品である。再帰連取り(「天月舞」「まだら」「アルカナ」)は、手順(n)の中に手順(n-1)が1回含まれているが、この作品の再帰手順では手順(n)の中に手順(n-1)が2回含まれている。そのため、nが大きくなると手数は2のn乗で指数的に増加していく。
手順を見ただけでは同じような繰り返しでどうなっているのかわかりにくいが、65・56・47・38の斜めの歩の有無に着目すると構造が見えてくる。
まず86手目74玉まで進めて局面を見てほしい。65・56・47・38はいずれも何もない状態である。ここから12手進めると65歩が出現する。更に18手進めると56歩が出現するが、65歩は消えてしまう。そこで先ほどの12手をもう1回行うと再び65歩が出現し、65歩・56歩となる。65・56に歩がある状態で22手進める(150手目)と、47歩が出現し、65、56の歩は消える。
もうお分かりになっただろうか。4枚の歩の有無だけに着目すると、
---- ○--- -○-- ○○-- --○- ○-○- -○○- ○○○-
---○ ○--○ -○-○ ○○-○ --○○ ○-○○ -○○○ ○○○○
と進み、16(2の4乗)回目、324手目に4枚の歩がすべて出現して収束に入る。
あまりに斬新すぎたためか、看寿賞を逃したのは残念であるが、詰将棋の進化の観点で歴史に残る金字塔である。
*2020年10月2日追記
最近、YouTubeの将棋情報局のチャンネルで本作の解説動画がアップされたので、ごらんください。
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