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励棋と脊尾詰

[2014年3月12日注釈追記]
現在は、この記事で紹介している「コンピュータを利用した将棋の世界」はなくなり、励棋や脊尾詰の販売も中止されています。昔のトップページのイメージがアーカイブされていたので、「コンピュータを利用した将棋の世界」のリンクはそちらに切り替えました。中のページは参照できませんのでご注意ください。

[2008年6月20日最終更新]
最近、たくぼんの解図日記OFM出題の話で、銀を50枚使ったOFM136回出題を並べられる将棋ソフトがないか話題になり、詰将棋メモ(2008年6月19日)で 「励棋には駒箱補充という機能があって、何枚でも配置できる(脊尾詰などでその詰将棋を解くこともできる)。FMはできなかったかな。」 とコメントした。昔は詰将棋を解くなら励棋+脊尾詰という時代もあったのだが、柿木将棋が詰将棋ソフトのスタンダードになり、励棋・脊尾詰を知らない人もふえてきたので、ちょっと紹介と思い出話を。


1.脊尾さんの共謀数を使ったアルゴリズムがミクロコスモスを解いた

詰将棋を解くプログラムの開発は、1968年の日立の越智博士による大型計算機上のプログラムに始まる。ハード性能も低く、ソフト技術も未開拓だったため、この頃は短編を解くのがやっとで、人間とコンピュータの早解き競争の企画があったぐらいである。最長1525手の橋本孝治さんの「ミクロコスモス」を解くなどというのは夢のまた夢だった。

1987年にコンピュータ将棋協会(CSA)が設立され、その例会では将棋と共に詰将棋の解図アルゴリズムも話題になり、研究が進んだ。そして、長手数詰将棋への挑戦として、611手の図巧100番「寿」をターゲットに解図アルゴリズムの開発競争が行われ、いくつかのプログラムが「寿」を解くことに成功した。1995年には脊尾昌宏さんが共謀数を応用した詰め将棋プログラムについて研究、ついに「ミクロコスモス」を解くことに成功したのである。 (このあたりの経緯はコンピュータで詰将棋を参照)

2.励棋上で脊尾詰を商品化

脊尾さんの詰将棋解図プログラムは、日本専用電子計算機株式会社の轟さんにより、励棋上で動作する思考として商品化された。励棋は、各種思考プログラムを動作させるプラットフォームとして設計されており、指将棋思考の丹頂などがその上で動いていた。脊尾さんのプログラムは「脊尾詰」という名前で登場したが、その後アルゴリズムの改良により、「脊尾弐」 「脊尾参」 「脊尾四」が商品化されている。励棋自体にも何種類かの商品があるので、現在の製品ラインアップについてはコンピュータを利用した将棋の世界を参照されたい。

3.詰将棋ファンのネット上の桃源郷

当時はまだインターネットは一般的ではなく、パソコン通信が主流だった。その一つ、nifty-serve(現在の@nifty)の将棋フォーラムの中に、励棋や脊尾詰の会議室(掲示板のようなもの)があった。詰将棋作家や解説者は検討が大きな悩みだったので、解図プログラムに興味を持った人も多く、そういった人たちが励棋・脊尾詰をいろいろ試してこの会議室でフィードバックし、開発者に協力して改良していったのである。

その会議室の一つは、製品と関係なく詰将棋の雑談ができる会議室だった。ここには上記の事情から著名な長編作家や解説者なども参加していて、毎日かなり濃い会話が繰り広げられていた。私も調子にのって、この会議室で毎週詰将棋を出題したが、すぐに反応が返ってきて、それにまた応えたり、詰パラで1か月単位のやりとりしかしていなかった私はカルチャーショックを受けたのであった。この当時のやりとりは、すべてTETSU詰将棋作品集おもちゃ箱に収録しているので、当時の熱気を味わいたい方はご覧ください。

4.励棋、脊尾詰と柿木将棋

その後、柿木将棋の詰将棋も同様のアルゴリズムを取り入れて進化し、余詰チェックのような作家・解説者に便利な機能も提供したため、現在では詰将棋ソフトといえば柿木将棋というのが定番になっている。

詰将棋に関する機能は、励棋も柿木将棋もコアな詰キストが協力して開発しているため、他の将棋ソフトにくらべると非常に充実している。全詰連の詰将棋データベースからの取り込みとか、複数詰将棋の連続実行とか、ルールにもよるがフェアリー詰将棋も並べられたり、どちらも5万手弱の「寿限無3」も扱えるし、柿木詰将棋DBの手順検索や励棋の駒箱補充など、かなりマニアックな機能もある。

長編の解図能力で比較すると、柿木将棋VIIIの解図能力は概ね脊尾詰、脊尾弐に匹敵し、脊尾参はそれに比べるとかなり強力である。このあたりは問題によって異なるので比較がしにくいのだが、難しい問題の場合、時間的に数倍の差がでることも多い。例えば第5回詰将棋解答選手権で余詰が見つかった真島隆志作、「柿木は1時間考えても56角を発見できなかった」が、脊尾参で別詰検索をしてみたら6分弱で余詰が検出された。ただ、脊尾参の別詰検索は別な詰め上がりになる余詰を探すので、手順前後や迂回手順は検出できない。そのため、私は柿木将棋と脊尾参を併用している。

解図力に差はあるものの、価格もかなり違うので、一般的な詰将棋検討なら柿木将棋で十分だろう。柿木将棋で解けないような詰将棋を扱う作家や解説者には、脊尾参や脊尾四が役に立つかもしれない(脊尾四は私は持っていないので、解図能力はわからない)。購入方法や保守形態など、一般の市販ソフトと異なる点もあるので、購入を検討される方はコンピュータを利用した将棋の世界でよく確認されたい。

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