山崎健さん、3作看寿賞候補に
[2008年7月2日最終更新]
詰将棋パラダイス2008年7月号で、平成19年度看寿賞が発表された。選考経過も詳細に報告されているが、これによると、1次投票で、山崎健さんの「馬×(馬+α)」、「表参道」、「雪月花」が看寿賞候補としてあげられたとのこと。添川公司さんの「阿修羅」が強く、山崎作の受賞はならなかったが、この3作はいずれもネット(おもちゃ箱)で出題された作品であり、ネット作品が看寿賞候補にあげられるのは極めて異例。ネット作品でなくても、一人3作も候補にあげられることも珍しく、快挙といえよう。この3作に対する、看寿賞選考委員の評を紹介する。ぜひ手順を並べて鑑賞されたい。
関連情報: 平成19年度看寿賞 ネット作品は「発表」か
■ 山崎健 「馬×(馬+α)」 331手
おもちゃ箱 2007年3月 記録展示室No.14
詰パラ 2007年9月 「記録に挑戦!」で紹介
・ 「全応手玉移動」の長手数記録作品
福村努委員 「連携した2種の馬鋸に全応手玉移動が組み合わさって趣向の傑作になっている。αの金移動もよいアクセントになっている」
柳田明委員長 「伊藤正作と橋本孝治作の組み合わせというが、それでも充分な新味があるし、希少価値も高く内容も面白い」
■ 山崎健 「表参道」 455手
おもちゃ箱 2007年1月 記録展示室No.10
詰パラ 2007年9月 「記録に挑戦!」で紹介
・ 「盤面成駒なし」の長手数記録作品
福村努委員 「龍追いに香中合入り。17桂を奪って29桂と打つ迄の長いプロセス。作意は明瞭、手順も軽快で解後感よし」
■ 山崎健 「雪月花」 309手
おもちゃ箱 2007年6月 記録展示室No.16
詰パラ 2007年9月 「記録に挑戦!」で紹介
・ 移動合回数の記録作品(31回)
・ 1枚の金の応手回数の記録作品(24回)
柳田明委員長 「前記作と同様に添川作「明日香」と河原作「I'll be back」の組み合わせというが、本作も龍鋸の軌道などを見ると充分に面白い」
選考討議の中での山崎作品の評価
柳田 「・・・ 次にパラ9月号「記録に挑戦」で紹介されたHP「おもちゃ箱」の山崎健氏の3作ですが、出題されてない上に作意の紹介もなく損をしていますね。特に 「馬×(馬+α)」331手詰には感心しました。伊藤正作「馬×馬」と橋本孝治作の金移動入り馬鋸の組み合わせと言ってもそう簡単ではないのです。そもそも「馬×馬」(伊藤正作は右上が舞台)の第2号局というだけでも価値があり、出題されたらかなり好評だったでしょう。ただ、独創性では添川作「阿修羅」に一歩譲ります。全く同様に山崎作「雪月花」309手詰です。上下移動は添川作「明日香」、龍鋸は河原作「I'll be back」と言いますが、「車井戸」や「金知恵の輪」を応用した作だって色々あるし、龍鋸の機構もよく出来ています。ただ、本作も独創性では一歩譲ると言わざるを得ません。 ・・・」
浦野 「・・・ 他に気になった作品は山崎健作「馬×(馬+α)」。シンプルさ、明快さは素晴らしいのですが、収束の呆気なさはちょっと淋しいです」
福村 「長編は山崎氏の2作も推しましたが、添川作「阿修羅」が文句なしという感じですね。 ・・・」
阿部 「・・・ 山崎氏の3作はすごい才能で、特に「馬×(馬+α)」はシンプルな機構で複雑な仕組みをうまく表現していて感心しました。構成上難しいのでしょうが、収束はもっと駒を働かせたかった感じです。私は発想・表現のすばらしさ、及び将来への期待等から(今後は是非パラに投稿してほしい)「特別賞」もありと思います ・・・」
岡村 「・・・ 山崎健氏では「馬×(馬+α)」ですが、全手順玉移動の最長手数を狙ったものと言っても収束に少々不満が残ります。ただ伊藤正作「馬×馬」を180度反転して図化したのには唸りました。3作を観て思うのは、誌上で発表して欲しいというよりも記録第一義でない創作も見せて欲しいという所です」
角 「・・・ また他では山崎氏のネット発表作ですが、やはり記録優先の作図ということが引っかかります。これだけの創作技術があるのですから、内容重視で作ったものをぜひ見せて欲しいと思います」
小林 「・・・ 1次投票には入れませんでしたが山崎健氏の作図力には驚かされました。ハイレベルな超長編を軽々と組み立てていて、相馬康幸氏が出てきた頃を思い出します。次は本当のオリジナルな作品を期待したいですね。」
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