正解者ゼロの詰将棋
[2018年4月16日最終更新] 駒場和男さん「心理試験」を追加
コンピュータ向け超難解詰将棋作品集の候補として、服部さんからいくつかの作品を教えていただいたが、その中に出題時の正解者なしの作品が2題あった。ほかにも私の知らない作品もあると思うので、ここでまとめて見ることにした。なお、1ヵ月程度の解答期間がある将棋・詰将棋専門誌での正解なしを原則とする(第5回詰将棋解答選手権でもチャンピオン戦第9番、第10番の若島正さんの作品が正解者なしだったが、90分限定なので除外)。追加していきたいので、下記以外にご存知の方は、この記事へのコメントやメールでご教示をお願いする。
関連情報: コンピュータ向け超難解詰将棋作品集 田島秀男さんの詰将棋
第5回詰将棋解答選手権
正解者ゼロ詰将棋作品集(手数順)
駒場和男「心理試験」 35手 近代将棋1988年4月 余詰 (2018年4月16日追加)
・ 続・塚田賞作品の魅力(21)(近代将棋平成8年11月号)2 (詰将棋の欠片)桂合で不詰になる63手の偽作意を用意し、54成香が成桂の誤植と誤認させる「心理試験」のトリックが利いたか、正解者ゼロに。
原図は詰パラ1967年3月出題で不完全、7月に修正図が出題されたがこれも不完全。近代将棋発表図はその修正図で塚田賞を受賞したのだが、確認したところ、この図も余詰があった。ゆめもぼろし百番第96番で81桂→71桂、後手92香94歩追加で修正されている。中山初段出題 37手 将棋日本1939年4月
・ 棋譜ファイル 中山初段出題 37手 (おもちゃ箱)利波さん情報。「正解者が殆んどありませんでした。唯だA、B両氏が寄せられたものが正解の筋ですが、二七桂合を見落としてゐられた事は惜しい事でありました。」と解説にあるので、正解者ゼロか。
小沢正広 「オーバーヒート」 47手 詰パラ1990年11月 余詰
・ 棋譜ファイル 小沢正広「オーバーヒート」 47手 (おもちゃ箱)
裸玉風の無仕掛け図式で変化紛れが極めて複雑かつ変化別詰の落とし穴もあり、正解者なしで再出題されたが、それでも正解者は出現しなかった。
コンピュータでもなかなか解けない難解作だが、今回チェックしたところ、残念なことに約2時間で初手44角以下の余詰が検出された。駒場和男 「ルパン二世」 47手 詰パラ1999年8月 余詰
・ 棋譜ファイル 駒場和男「ルパン二世」 47手 (おもちゃ箱)
変化紛れが際どく、かつ難しく、正解者ゼロに。
ゆめまぼろし百番に収録時に、その際どい紛れ(初手82銀)が余詰むことが発見、修正図が第85番に収録された。高木秀次 53手 風ぐるま1955年8月 不詰 (2009年1月6日追加)
・ 棋譜ファイル 高木秀次 53手 (おもちゃ箱)
「本格古典派の闘将高木氏快心の傑作である。本局に就て解答を寄せられた方は一名もなかった、という事実は如何に本局が難解であったかを如実に物語るものであり、・・・」(解説 黒川一郎さん)知恵の輪を解きほぐすような手順で確かに複雑だが、14手目45歩合の不詰順を見つけたため解答しなかった可能性もありそう。
横田進一 63手 詰パラ1963年4月 不詰
・ 棋譜ファイル 横田進一 63手 (おもちゃ箱)
大道詰将棋のコーナー、研究科で「実力者歓迎!」と題して特別出題された。合駒が非常に複雑で、正解者ゼロに。
今回、コンピュータチェックをしたところ、12手目15角中合のところ17歩の中合で不詰と判明した。高木秀次 「千早城」 63手 詰パラ1963年2月
・ 棋譜ファイル 高木秀次「千早城」 63手 (おもちゃ箱)
・ 完本『詰将棋 トライアスロン』その9 (借り猫かも)
三段構えの伏線、玉方金先金歩の合駒に全員討ち死に(誤解11名無解3名)。題名通り難攻不落で、作者の代表作となった。半期賞受賞。
*2010年1月5日、29成香を29香に訂正
(データベースのデータ誤り)田島暁雄 69手 近代将棋1971年11月
・ 棋譜ファイル 田島暁雄 69手 (おもちゃ箱)
難解派田島さんの面目躍如の難解作で正解者なし、塚田賞を受賞した。阿部冷二 73手 詰棋めいと5号1986年10月
・ 七種合使用駒数最少記録作品 (おもちゃ箱)
・ 詰将棋パラダイス2012年3月号結果稿大9 (詰パラ大学解答のブログ)
七種合の使用駒数最少記録作品(10枚)、それも各駒の合が1回限りの純粋な七種合である。初手13香、21玉だと17手目43歩合とされ打歩詰。それを避けるため巧みな手順で13歩、21玉型を作る。記録作というだけでなく、巧妙、難解な手順で正解者なしに。阿部冷二は近代将棋で長く詰将棋欄を担当した森敏宏さんのペンネーム。本作、「金波銀波集」収録の図では初形28馬が37馬に変更されている(EOGさん情報)。今井光 79手 近代将棋1971年8月
・ 棋譜ファイル 今井光 79手 (おもちゃ箱)
・ 今井光作品 (般若一族の叛乱)
・ 詰将棋解析1:今井光作品 (詰将棋解析メモ~h160seの倉庫)
あまりに難解だったため塚田賞を逃した伝説の作品。近代将棋で唯一の正解者は作者のペンネームで実質正解ゼロ。般若一族の叛乱は管理者の首猛夫さん逝去のためまもなく見られなくなると思われるので、上記の解説を読みたい方はお早めに。駒場和男 81手 風ぐるま1955年10月
・ 棋譜ファイル 駒場和男 81手 (おもちゃ箱)
・ 完本『詰将棋 トライアスロン』その10 (借り猫かも)
ほとんどの解答者が10手目の中合を見落し変化を解答、正解者なしとなった。ゆめまぼろし百番第64番に収録(「浮雲」と命名)されている。駒場和男 81手 風ぐるま1955年12月
・ 棋譜ファイル 駒場和男 81手 (おもちゃ箱)
・ 完本『詰将棋 トライアスロン』その10 (借り猫かも)
1歩不足をどこでカバーするか。その構想を発見できた解答者はいなかった。ゆめまぼろし百番には本作の改良図が「狸御殿」と命名され、第42番に収録されている。小菊花 「虎バサミ」 87手 詰パラ1981年6月
・ 棋譜ファイル 小菊花「虎バサミ」 87手 (おもちゃ箱)
・ 完本『詰将棋 トライアスロン』その9 (借り猫かも)
「般若一族の叛乱」第2弾。
「・・・ 意味不明の馬ノコ。駒の位置関係を最大限に使った本格的な構想作品である。そして真の目的は人間の慣性を利用したトリックを仕掛けることにあった。それにしても正解者ゼロとは!・・・」 (詰パラ結果発表時の解説より)藤本和 301手 詰パラ1985年4月
・ 長手数作品 藤本和 301手 (おもちゃ箱)馬ノコ連取りだが、1サイクルごとに手数延ばしの62歩捨て合が入る。ところが、1回だけ捨て合すると早く詰む恐ろしい罠があり、捨て合と、この罠のダブルトラップに全員ひっかかってしまった。
田島秀男 401手 詰パラ2015年11月
・ 田島秀男作401手の鑑賞 (my cube)
・ No.240 田島秀男 401手 (詰将棋一番星)
・ 今月の詰将棋パラダイス (あーうぃ だにぇっと)「本作は相似と還元の迷宮であり、「乱」の系譜に連なる不規則連取り趣向作である。 ・・・ ほとんど正解にたどり着いている解答が2通あったが、いずれも紛れAで誤解。正解者なしとなった。」
(詰パラ2016年2月号デパート解説より)高橋恭嗣 「木星の旅」 411手 詰パラ2004年4月
・ 長手数作品 「木星の旅」 (おもちゃ箱)
・ 詰め将棋 上級その1 (1)命名 「木星の旅」 (高橋農園)
複雑な馬ノコで、並べても意味を理解するのが難しいほど。コンピュータにも解けなく、正解者ゼロは当然かも。看寿賞受賞。
正解者以前に解答者ゼロは本作だけかも。田島秀男 「乱」 451手 詰パラ1999年10月
・ 長手数作品 「乱」 (おもちゃ箱)
・ 解説No113 田島秀男 『乱』 451手 (全詰連HP)
これまでの詰将棋の常識を覆す飛追いベースの複雑な連取り趣向。最初からどの変化も複雑で、読み筋を絞れない。正解者ゼロで看寿賞に。山本昭一 「メガロポリス」 515手 詰パラ1981年1月 早詰 (2009年1月6日追加)
・ 山本昭一 「メガロポリス」 515手 (おもちゃ箱)
・ 山本昭一「メガロポリス」 515手 (修正図) (おもちゃ箱)
Jupiterさん「山本昭一さんのメガロポリスも正解者ゼロのようです。解答者44名で全員誤解でした。作意が515手で、39名の人が523手の変別解を答えたそうです。」多重連取りのハシリの作品で看寿賞受賞。44名中39名が44手目32香合の変別解、他の5名も誤解で正解者ゼロ。後にコンピュータで51手目35角以下の早詰が発見され、「怒涛」収録時に47歩を48歩に修正した。
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コメント
山本昭一さんのメガロポリスも正解者ゼロのようです。
解答者44名で全員誤解でした。
作意が515手で、39名の人が523手の変別解を答えたそうです。
投稿: Jupiter | 2009.01.06 09:54
Jupiterさん、ご教示ありがとうございます。後ほど登録したいと思います。
投稿: TETSU | 2009.01.06 21:56
正解者ゼロ作品を見つけました。
菅野篤作31手詰、詰パラ1972年9月号大学作品です。
解答総数16名中、無解9、誤解6でした。
投稿: ISO | 2014.11.22 19:00
ISOさん、ご教示ありがとうございます。確認したところ、確かに正解者ゼロでしたが、次号の読者サロンにて不詰のため全員正解と訂正されていました。残念。
投稿: TETSU | 2014.11.22 19:35
あ、すみません。読者サロンではなく、大学の結果稿のページでした。
投稿: TETSU | 2014.11.22 19:39
背尾詰で検索すると上記の詰将棋の内いくつかは恐らく作意のほうが間違ってると思われる結果になりました。信じるか信じないかは知りませんが。
投稿: 詰 | 2018.02.15 23:25
駒場和男氏の「心理試験」も正解者ゼロではないでしょうか。
投稿: 名無し | 2018.04.15 21:42
「心理試験」、1967年3月の詰パラ出題時は余詰、1967年7月の修正図も余詰でしたが、更に修正されて近代将棋1988年4月号で出題されていたんですね。ご教示ありがとうございます。追加したいと思います。
投稿: TETSU | 2018.04.16 02:03