推理将棋第21回解答(3)
[2009年4月30日最終更新]
推理将棋第21回出題の21-3の解答、第21回出題の当選者(はてるまさん)を発表します。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。
関連情報: 推理将棋第21回出題 推理将棋第21回解答(1) (2) (3)
推理将棋(隣の将棋) どんな将棋だったの? - 推理将棋入門
21-3 上級 三日京さん作 唯一駒取り 21手
「面白そうな古図式だね。なんて書いてあるの」
「後手は銀2枚を含む9枚を取って21手で詰まされるそうだ」
「しかもそのとき取れる駒は常に1枚だけか。迷わなくて簡単かもね」
「不成り9回、初手は76歩ではない、とあるね」
「先手は連続で同じ駒を使わないのか。これでどうやって詰めるのだろう」
後手は4手目から最後まで、取れる唯一の駒を取り続けました。
どんな手順だったでしょうか。(条件)
- 21手で詰み
- 後手はその局面の唯一取れる駒を取り続け、銀2枚を含む9枚を取った
- 不成9回
- 初手は76歩ではない
- 先手に連続で着手された駒はない
※ 後手が取れる駒は常に一枚しかありませんが、どの駒で取るかは自由です。
作者コメント「条件に沿って駒を取り続けることは簡単ですので、詰形だけを推理していただければ論理的に解けるはずですが」
出題のことば(担当 タラパパ)
意外に易しい長編です。後手玉を一手で詰み易い位置に動かす工夫は?
推理将棋21-3 解答 担当 タラパパ
▲6八銀、▽3四歩、▲7六歩、▽8八角不成、
▲9八香、▽9七角不成、▲7九銀、▽同角不成、
▲7七桂、▽5七角不成、▲5八飛、▽3九角不成、
▲6五桂、▽1七角不成、▲3九金、▽同角不成、
▲9三香不成、▽同角不成、▲5二歩、▽同玉、
▲5三飛成 まで21手で詰み
何手から長編と呼ぶのか、まだコンセンサスがありませんが、自分ではなんとなく16手(中途半端?)くらいかと。
それはともかくとして、推理将棋の長編では必ずある種の特徴的な趣向を持っています。短編の延長では、決して面白いパズルにはなりませんから。
その長編推理将棋の草分けは、「推理将棋」という言葉すらなかった今から15年ほど前、若島正さんが将棋世界誌に連載された「将棋の国のアリス」という読み物でしょうか。分野を問わない面白将棋パズルの宝庫で、推理将棋的なものばかりではなく、「後手は玉を51-52と往復させていただけなのに、40手で後手が勝った(先手玉が詰んだ)。39手目の先手の手は何か?」といった謎解きで、時代を先取りしていました。
閑話休題。本局の骨子は「後手が4手目から駒を取り続けたが、その局面で取れる駒は常に一枚だけ」というもの。あとの条件は手順を完全限定するためだけのオマケ(といってもオマケの中にヒントが一杯詰まってるのですけれどね)。
4手目から唯一取れる駒を取り続けるのですから、取れる駒が複数ある時には先手は他の駒を逃がし、取れる駒がない時には供給してあげなければならない。
先手が後手玉を詰ませるための動きができるのは、放っておいても取れる駒が1枚だけの瞬間のみ。しかも「唯一駒取り」条件から、相手の利きに働かせる訳にはいかない。桂の利きに73飛成や、歩頭に歩を打つことができず、あまり手数もかけられないことになります。
こうした制約の中で考えうるほぼ唯一の詰上がりが、52歩、同玉、53飛成とする手順。そのためには角か桂を53に利かせ、58飛と回らなければならない。
後手の指せる手数は10手。2手目と20手目(52同玉)には不成ができないので、不成9回のうち少なくとも1回は先手の不成。その1回は飛び道具で歩の入手。
これらを総合して手順を組んでいくと、案外絞られてきます。
ミニベロ 「気を引く条件に鮮やかな詰め上がり。21手引っ張られました。神局「ワープドライブ」や名作「巡礼の旅」のように、片方に義務条件を付ける手法は、長手数を解図させる有効なガイドだが、本作の「唯一駒取り」は初めてみる条件です。決して難しくはないのだが、前作同様、この作者の「収束を先に見つけないと初手が分からない」という作風は、困ったものです(汗)。 」
■気を引くアイデアがいいですね。過去に発表された長編作を見ていくと、共通するのがこうしたアイデア。困ったものとは思いませんが(笑)
まさ 「収束形を予想しないとどうにもならず、慣れていないと決して易しくない問題と思います。収束形を決めると次のポイントは先手の歩の入手方法と、そこでの不成の稼ぎ方。ここまで決め打っても手順は確定しませんが、作意の推理はできます。 初手76歩以外と指定しているので、多分3手目は76歩。とすると4手目88角生なので、初手・5手目で99香・97歩・79銀のうち2枚を動かします(98香は詰み手順上必須)。この順番が限定されるとしたら「先手に連続で着手された駒はない」という条件しか理由がなく、必然的に初手と7手目は同じ駒を動かした(もし初手を5手目と入れ換えたら7手目連続移動で条件違反)となります。つまり、96歩、34歩、76歩、88角生、98香、79角生、95歩…、あるいは作意順しかありません。ここまで決め打てれば作意は自然に見えてきます。」
■96歩、34歩、97角、77角不成、58玉、99角不成、66歩、同角不成、67玉、57角不成・・・なんて紛れもあるのですが、この順は限定ができません。
渡辺 「取りを固定させるための銀往復がにくい。難解作潰し(cf. 高坂さんの有名な10手問題、タラパパさんの12手の問題)の93香を作意にしたのもすばらしい。さて、解ですが先手角は取られる運命なので使えません。74歩(打)から53と、63桂までの順では連続着手が避けられないので65桂から53飛成までですが、52歩を打つ用の歩入手のためのn3香生を角生で取ることの出来る順を探せば」
■まささん、渡辺さんの解法は実に参考になります。ところで、高坂さんの有名な10手問題は判るのですが、私の12手問題って・・・・どれでしたっけ? 余詰を乱発しているので特定できない(泣)
○術師 「条件に沿って駒を取り続けること自体が難しく、2週間目一杯考えました。ヒントのおかげで詰み形は見えたのですが、43(63)飛不成で歩を入手すると考えてしまったのでハマりました。解けてみて分かりましたが、手順限定に対する条件付けが巧みでした。」
■なるほど、63飛不成はかなり有力ですね。
リーグ戦ファン 「52同玉53飛成までの筋は早くに思いついたのですが、どうやっても不成が7回にしかならない。そもそも条件を満たしながら先手の初手と5手目の手順前後を限定する手順がひとつも発見できないことが気持ち悪くて、タラパパさんにクレームを送ってやれ、と、限定できないことの証明を書き連ねているうち、自分の論理の穴(初手に動いた駒を7手目に使えば限定できる)に気付き、一考だにしなかった初手と7手目同駒の組み合わせをいろいろ試して見たら・・・不成8回を発見!その後、93香取りの非限定を解決しようと考えたら、最後まで辿り着きました。ある意味論理的に解いたといえば解いたのですが、ズル解きですね、これは。」
■完璧に論理的ですよ。ちなみに、クレームメール歓迎ですから (^^)/~
鈴木康夫 「自分で解けなかったので解答プログラムを作って解かせました。ただ経過を見ずに局面だけ見ているので、手順前後、取られた駒の成生の区別がつきません。そこだけは人力で修正しました。」
■す、凄い!解答プログラムまで作ってしまうとは。すると完全性が保証されたのかな?
S.Kimura 「最初は97角・58飛として詰ませることばかり考えていました。ふと、初手76歩とするとどうなるかを考えたところ、89桂ぐらいしか動かすものがない局面に行き当たり、ようやく77桂・65桂の2段活用に気付きました。」
■まささんのところで書いた順ですね。私もしばらくハマった紛れ(汗)
はなさかしろう 「先手角の活用は手順非限定で断念。そこで53に飛桂を利かせて52歩、同玉、53飛成まで、というのは直ぐに想像がつくのですが、歩一枚の調達に延々悩むことに。63飛不成がどうしても実現できず、香で取れる可能性に気付いたのは最後の最後でした。一直線に詰みに向かわないため焦点が絞れない難問でしたが、並べてみると後手角の暴れっぷりも収束の手順も93香不成の一手のためにあるかのようで、詰め上がりでは勝った先手陣の荒廃ぶりも面白く、物語を感じる作品でした。」
■そうなんです。この紛れ順では手順限定がまったくできないので、すぐに抜けるべきなのですが。
高坂研 「後手が駒取りをしている間に、巧妙に玉を仕留める算段をする先手。見事です。」
■検討もしっかりなされていてこれだけの作品。相当な実力者とお見受けします。次回はどんな作品を見せてくれるのかワクワクします。
正解:10名
S.Kimuraさん 鈴木康夫さん 躑躅さん はてるまさん
はなさかしろうさん まささん ○術師さん ミニベロさん
リーグ戦ファンさん 渡辺さん
総評
ミニベロ 「今回はオール上級の手応えですね。とはいえ、啓蒙作ばかりではなく、これからはこの程度の難度はこなしていかないと。解答者一桁の予想が外れることを祈ります。」
■お陰さまで2桁を確保できましたが、今後この難易度は滅多にない・・・つもりです(笑)
○術師 「解答投稿もまだ3回目ですが、今回の第21回は自分が出題者でもあり、今までとは違った感触で解きました。自分の出題で1問解答確保のつもりが全て解けたので自分でも驚きました。特に21-3は全く解けずに困っていたところ、眠る寸前に盤駒で並べていた手順が何だか奇跡的にうまくいきそうという感触になりました。が、とにかく眠たかった日なので手順だけメモして休みました。起きてから並べなおしてみてどうやら解答できたらしいことが分かり嬉しかったです。」
■いわゆる「閃き」ですね。特に推理将棋には、悩んでいても天啓のような閃きで、一瞬で解けてしまう場合があり、その時は痛快の一語に尽きます。
リーグ戦ファン 「今回の問題は歯ごたえがありすぎです。どの問題もとりかかってから3日以上を費やしました。仕事の妨げになるので、ホドホドの問題に願いたいです・・・」
■リーグ戦ファンさんには適度の難易度でしょう。私が解答者なら迷惑この上なし。易しい問題がなかったというのが真相なのですが。
鈴木康夫 「仰る通り、今回は難問ぞろいでした。」
■「私は嘘は申しません」・・・って、昔々、大嘘つきの政治家が言ってたような。
S.Kimura 「今回は難問ばかりで弱りました。最後に21-3の答えが見つかりましたので、どうにか答えを送ることが出来ます。残りの解答を楽しみにしています。」
■難問揃いの出題にならないよう、易しめの作品の投稿を皆様にお願いします。
はなさかしろう 「今回は物凄く難しく、なんとか〆切ぎりぎりですべり込み提出です。今回は従来の切れ味鋭い短手数作品とはひと味違った趣向の濃い作品揃い。長手数で難しくても面白いジャンルだと思います。」
■今後も少しずつ長手数作品も出題してみようかと。
推理将棋第21回出題全解答者: 13名
S.Kimuraさん 高坂研さん 鈴木康夫さん 竹野龍騎さん
躑躅さん はてるまさん はなさかしろうさん はらたっとさん
まささん ○術師さん ミニベロさん リーグ戦ファンさん
渡辺さん
当選: はてるまさん
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コメント
> タラパパさんの12手
2条件トピックのものです。余詰順が成生の違いはあれ、93香から68金というのが両者とも共通しています。
> 何手から長編と呼ぶのか、...(中略)... なんとなく16手(中途半端?)くらいかと。
とりあえず「中編と長編の区別」はさて置き短編以外は全部長編と考えるとします。およそ13手以下は短編で20手以上は長編で良いと思いますが、その間あたりでは問題の性質が大きく関わると思います。私見では解図時に「長編的思考」( mixiコミュの雑記帳の私の質問に対するまささんの回答が参考になります) を要求するのが長編です。これではトートロジーですし、解図方法は個人差があるので定義になっていませんが。コミュ内に私見では「19手の短編」と「14手の長編」作品があります。
本局では「後手はその局面の唯一取れる駒を取り続け、銀2枚を含む9枚を取った」のような、うまい言葉は思いつきませんが「細長く限定させる」条件の存在が、長編の長編たる1つの(十分)条件になっていると思います。
投稿: 渡辺 | 2009.04.30 23:58
>「細長く限定させる」条件
私はこれを個人的に「ガイド」と表現しています。
推理将棋にも学術的な分類や分析が必要な時期がきています。
作図・解図講座などもやりたいですね。
投稿: ミニベロ | 2009.05.01 19:43
>すると完全性が保証されたのかな?
私のプログラムにバグが無ければ証明されたことになります。
27個の解を出力しましたが「不成9回、同じ駒を連続で動かさない」を満たすものは一つしか有りません。
「」内の条件を満たさなくて良いなら、73桂を74歩73歩成で取って63と53とから63桂までの詰上がりもありました。
投稿: 鈴木康夫 | 2009.05.04 06:06