推理将棋第26回解答(3)
[2009年9月29日最終更新]
推理将棋第26回出題の 26-3の解答、第26回出題の当選者(鈴木康夫さん)を発表します。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。
関連情報: 推理将棋第26回出題 推理将棋第26回解答(1) (2) (3)
推理将棋(隣の将棋) どんな将棋だったの? - 推理将棋入門
26-3 上級 ○術師さん作 毒入り危険 11手
「9手目に突いた端歩は毒まんじゅうでしたか」
「直後に玉でそんなもの取るから、すぐ詰みましたよ、はい11手まで」
「3手目から6手目まで同じ筋だったのはこだわりすぎですかねぇ」(条件)
- 11手で詰んだ
- 9手目に指した端歩を10手目に玉が取った
- 3~6手目は全て同じ筋の指し手だった
出題のことば(担当 タラパパ)
玉が端に行くのに最低4手。しかも端歩を玉で取れる。詰上がり形の予想がすべて。
追加ヒント:
(1) 最終手は先手の香の利きを塞ぐ駒が動く手。空き王手?それとも両王手?
(2) 後手玉が取った端歩は9筋の歩。
推理将棋26-3 解答 担当 タラパパ
▲9六歩、▽6二玉、▲7六歩、▽7四歩、
▲7七桂、▽7三玉、▲9七角、▽8四玉、
▲9五歩、▽同玉、▲7五角 まで11手で詰み
端に行く手数を数えると、76歩、42玉、33角、同玉(これは無理)以外の手順では、玉が端に行くだけで5手かかります。
2段目まで先手が歩を伸ばすことはありえないので、玉の行き先は3段目から5段目まで。
さて先手の着手はどうでしょう。条件から端歩を取らせるには、少なくとも端歩を2回以上突き、最後に香の利きを塞いだ駒で、開き王手又は両王手に仕留める手順しかありません。そんなことのできる駒は角か桂馬。最終25桂で詰む形は作りようがない。こう考えていくと、玉は73から抜けて93~95で詰む筈。
3~6手目の後手方の着手は74歩と73玉。これらを踏まえて先手の着手を数えると、(1)香頭を塞ぎ最後に動く手で2手、(2)7筋の手で2手、(3)端歩を突く手で2手と決定。玉の行き先も95に決まります。
この条件に合致する形は一つしかありませんが、推理将棋独特のサーカス的な詰上がりを簡単に予測できたでしょうか?
明快な条件に、ツボにはまった詰上がりの好局でした。
作者 「推理将棋では自陣の駒がそのまま働くケースは主に飛角、あっても桂歩くらいですので、なんとか香を主役にしてみたくてこのような手順としました。詰め上がりで玉に接触している駒がないのが少し気にいってます。」
■詰上がりは、発表された中では新しい形です。素敵な詰上がりでした。
ミニベロ 「端の香を利用した開き王手詰みは、意外と作図例は多いのですが、本局は一番シンプルに仕上がっています。」
■そうですね。手数+2条件での手順成立は見事だと思います。
まさ 「これも端を取らせて75角(馬)までは第一感(けいたん氏作おもちゃ箱第11-3など)なので、とても易しい問題でした。少ない条件でうまく限定していると思います。以上、久々に解答しました。最近は難問が多く手が出ませんが、このくらいの難度が良いですね。」
■「難問で手が出ない」は、眉に大唾つけて聞いておきます。選題者としても、隔月程度にこれくらいの難度で揃えたいのですが。
魚熊 「10手目に端歩が取られたのに11手目に詰む以上、最終手で8手目に王がいたところを香筋を遮断していた駒が移動して押さえられないといけない。そのためには遮断駒は角が必須。角の横を埋めるために桂を跳ねる必要があるが、それは「3-6手目の4連続同じ筋」にぴったりだ・・・。というわけで、詰み形は容易に想定できたのですが、当初は1筋側で考えていたために手数不足に。ふと9筋に目が行った瞬間に解決しました。というわけで、上級問題ですが私にとってはこれが最初に解けてしまったのでした。」
■初級よりも先に?げげっ!「最終手で8手目に王がいたところを香筋を遮断していた駒が移動して押さえるのが必須」たしかに。
はてるま 「ふわっと浮く75角の手触りが抜群。美しい詰め上がりです。「3手目~6手目が同じ筋」という条件がなかなか凝っていて、簡素な条件にうまくまとめていると思います。露骨に「玉が4連続動いた」などの条件で妥協しないのがいいですね。」
■「玉が4連続動いた」だと、もう1条件が要るのに対して、「3手目~6手目が同じ筋」ならこれ以上要りませんものね。
リーグ戦ファン 「後手玉が端に来るまで4手、歩で道を作るので手順に余裕なし。3-6手目が7筋が本線で、同時に77桂を85に利かせる詰め上がり図を想像、結局、詰め上がり図から考えたのか手順から考えたかのかが自分でも分からないくらいでした。所要時間2分。ロジカルに解いても形の感覚から解いても易しい問題で、この問題は初級で十分でしょう。」
■合い効かずの独特の詰上がり。推理将棋慣れしていない方には、それを発想すること自体が難しい気がして(汗)。
渡辺 「85の塞ぎ方に思案するが77桂というのが面白い。最初の条件からタラパパさんの75角両王手を思い浮かべますが、次の条件を見て「あれ?」となりました。条件から3~6手目の筋が(鏡像を除いて)決定する。玉が端歩を取るには後手が指せる5手中4手必要。4/6手目が同じ筋だからどちらかは無駄となり、2/4/8/10手目か、2/6/8/10手目で玉は端に向う。となると3~6手目は3筋または7筋だがこの筋を先手が連続で指して詰みに役立つには桂馬を跳ねるしかない。こう考えることが出来れば、17桂が出来ないので9筋に決定し、しかも懸案の85が塞がれているので作意が見える。」
■実は私も投稿作品を見た時に、75角両王手だと思って面食らいました(笑)しかし拙いぞ、解説よりも論理に説得力がある(汗)
斧間徳子 「”3手目から6手目まで同じ筋だった”という条件がうまい。上級とのことですが、中級(26-2)よりも簡単でした。」
■中級と上級、どちらにするか悩んだのですが、長編も決して難しくないことをアピールできるかな?と。
竹野龍騎 「詰み形が見えてすぐに解けました。玉の周りに駒が居ない空中捕獲。」
■玉の周りに駒が居ないことに、今になって気付きました(汗)しかし気分のよい詰上がり。
S.Kimura 「”同じ筋”とは7筋であることが想像できたので、▲77桂から▲75角とするのは割と簡単に分かりました。」
■7筋がぱっと閃いたなら、あとはちょいちょいですな。
はらたっと 「実はこれがイチバン最初に解けました。詰め上がり場所が想像しやすかった。3~6手目同じ筋は手順前後を限定してると考えると7筋しかありえなく一直線でした。」
■はらたっとさんも最初だとすると、こちらが初級でもよかったのかなぁ?
隅の老人B 「先ずは、詰手順をこしらえる。続いて、条件文を作製。どちらが難しいのかな、術師さん、教えて。」
■普通は条件文のほうが厄介です。なにしろ思いもよらない余詰との戦いですから。
鈴木康夫 「空き王手出来るのは角しかないと分かればすぐでした。」
■空き王手で桂馬が捨てられたらスイリストには一瞬なのかも。
たくぼん 「これもヒントを頂いて一撃でした。(ちょっと楽しすぎか?)この詰上りが3条件で成立とは好作です。」
■手数を除くと2条件、これ以上望めない出来でしょう。
諏訪冬葉 「”85に逃がさないために75には馬が必要”と考えて手数不足。桂馬置いておけばよかったのか・・・・」
■なぁるほど!条件を変えると75馬迄の筋でも出来ますね。
正解:18名
魚熊さん S.Kimuraさん 斧間徳子さん superkuppabrosさん
鈴木康夫さん 隅の老人Bさん 諏訪冬葉さん たくぼんさん
竹野龍騎さん 躑躅さん はてるまさん はらたっとさん
ひつじさん まささん ○術師さん ミニベロさん
リーグ戦ファンさん 渡辺さん
総評など
ミニベロ 「おもちゃ箱の飛び先が間違っているようなので、私は裏口から入りました(笑)。」
■はじめリンク先がおかしかったんですよね。あの時は私も裏口から(笑)
リーグ戦ファン 「○術師さん、とにかくロジカル。私の解法とは波長が合います。これだけロジカルなパズルをしっかり作られるのは、すごい才能だと思います。ただし、最初の条件から想像させた本線で決まってしまう「楷書」スタイルなので、ひねくれ者でもう少し苦しみたい私からすると、もう少しクセがある方が実は嬉しいかも。」
■ロジカルな作品で、少ない条件に収めるのは簡単ではありませんから、作者の力は確かです。○術師さんの投稿には「草書」スタイルもあるのですが、今回は解答者に優しい「楷書」を選ばせて貰いました。
躑躅 「先月は時間もなく1題も解けませんでしたが(締切後、解答発表までに25-2だけは解けました)、今回は3題とも一目で解けました。」
■ひと目ですか。もっと長く楽しめるほうがよろしいですか?(笑)
はらたっと 「追加ヒント、今回はすでにでていたんですね。一応、自己申告でしかありませんが、追加ヒントなしで全部わかりました。○術師さんとは相性がいいのかも。(笑)あとから追加ヒントを見て、なるほどむふふ・・・・2度楽しめました。」
■3粒で6度美味しい推理将棋コーナー。
隅の老人B 「年金生活、いつも暇、推理将棋を考えよう。苦手な推理将棋ですが、今月は何となく、早く解けた気がします。いつも締め切りギリギリの解答ですが、今月は私としては、めずらしく早いかな、と思っています。」
■同じ立場のようで(笑)ヒマな割に、することはたくさんあるのが不思議ですが。
superkuppabros 「将棋のサイトを見ていて、面白そうなのでやってみました。今回が初めてですが、解答したいと思います。推理将棋は初めてでしたが、普段の将棋とはまた少し違って面白かったです。初めてでしたので、1番の71角にやや迷いました。3番の桂馬が動くのになかなか気づかなくて苦戦しました。」
■え~、推理将棋をすると棋力が落ちるという噂です。どんどん弱くなってください。それと共に推理将棋が強くなるかと(笑)
鈴木康夫 「追加ヒントを貰う前に解いていたのに、短評を考えている間に投稿しそびれてしまいました。」
■詰パラの通年解答を目指した頃に、全部解いて短評を考えているうち、〆切に間に合わなくなったことがありましたっけ。
ひつじ 「推理将棋、はじめて解いてみました。友人の出題だったのがきっかけです。最初はとっつきづらかったのですが、慣れると面白いですね。」
■いやぁ~、面白い世界ですよぉ。これからも解答をよろしくお願いします。
推理将棋第26回出題全解答者: 18名
魚熊さん S.Kimuraさん 斧間徳子さん superkuppabrosさん
鈴木康夫さん 隅の老人Bさん 諏訪冬葉さん たくぼんさん
竹野龍騎さん 躑躅さん はてるまさん はらたっとさん
ひつじさん まささん ○術師さん ミニベロさん
リーグ戦ファンさん 渡辺さん
当選: 鈴木康夫さん
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コメント
> ■「王手した駒は取られなかった」条件は、ご指摘の47で詰む筋を消すものでした。
誤編集でしょうか?26-2の解説が混入しているようです。
投稿: 渡辺 | 2009.09.29 18:13
いつもながらそそっかしくてすみません。直しました。
ご指摘ありがとうございました。
投稿: TETSU | 2009.09.29 20:49
> 先ずは、詰手順をこしらえる。続いて、条件文を作製。
私は同時です。詰手順と条件を行ったり来たりします。「手順」よりも「条件」と「条件からの絞り方の論理(思考)」に重点を置くからです。他の皆さんはどうなんでしょうか?
投稿: 渡辺 | 2009.10.01 00:08
>他の皆さんはどうなんでしょうか?
当然両方です。
ある縛り(変わった条件)をかけて、その中で手順を実現させる、逆に巧妙な詰み上りを見つけて、それに条件を付ける。
さらに、先後逆で手数短縮できないか、他の駒で代わりは出来ないかなど、一応推敲はします。
短編の基本詰み形はほとんど出尽くしているので、
これからは条件縛り(詰み形に既視感はあるが、珍しい条件)が主流になると思われます。
投稿: ミニベロ | 2009.10.01 20:26
> 他の皆さんはどうなんでしょうか?
私の場合、重点は条件と検討ですが、それでも見落としが多くていけません。
> これからは条件縛り(詰み形に既視感はあるが、珍しい条件)が主流になると思われます
おっしゃる通り。既視感のある詰上がりも、条件を少し変えられただけで、目新しい新作になる不思議。最近で印象に残るのはMIXIの渡辺さん作9手(歩頭の問題)。
途方に暮れましたっけ。
投稿: タラパパ | 2009.10.03 00:50
まず、26-3について。
端の香車を使った問題というのは多くあるのですか。私は推理将棋自体を知ってからまだ1年足らずで、作品はほぼおもちゃ箱しか見ていませんので、よく知りませんでした。
7五に馬を置く問題も同手数で実現できますね。行ったり来たりで手順としては私は好きですが、条件を付けるのが大変そう...と思いました。
突いた端歩を取った途端に詰む、となると詰み形の大半は決まるはずなので、あとは味付けの部分がうまく行けばという感じでした。▲7七桂が入ったので、それなりに味は付いたかなと思っています。
次に、全体について。
楷書と草書というのは面白い考え方ですね。私は解くのがとにかく苦手なので、出題されるのは楷書だと本当にありがたいです(苦笑)が、作るとどうしても草書方向に走りたくなるというか...その辺りをこらえて?選題いただいたのが、今回採用いただいた問題でした。
問題の作り方ですが、私は他の問題を知らないせいもあるのでしょうか、ほとんどが手順から作ります。何となく面白くなりそうだなぁ、という手順を考え、その時は手順前後やどっちが動いても良い駒選択なども放置しています。手順前後や駒選択は条件付けの時に排除する感じでしょうか。
と書きつつも、最近は条件から考えることも。1つメインの条件を考えてそこから手順を作り、最終的に他の条件も整えるというのも、よくやるやり方になっています。今回で言えば、26-2は「打歩の形になるが他の手で詰み」で考えている内に「王手の連続」条件を入れると結構分かりやすくなるのでは?という進め方でした。
26-1は条件にもなっていますが「大駒4枚取る手順を考えよう」から、「盤上に置く」とすればかなり手順が絞れる、飛車は詰みに使うとして、角はどこで有効に使わせようか?という思考をたどりました。
26-3はとにかく持駒ではなく最初から盤上にいる香車を使う手順から考える、というやり方でした。後は角の空き王手やら桂の空き王手やら思考錯誤し、桂だと手数が長くなるので角を採用。玉を端に来させるために端歩をすぐ取る条件を追加、あとは玉の周りのマス目を駒の利きでどのように埋めるかでした。この問題は確実に手順が先、条件が後ですが、最後の方では条件に見合った手順という考え方をしているかもしれません。
冒頭にも書きましたが私は解くのが苦手なので、条件を作っても抜けまくって余詰マシーンとなってしまいますので、条件を作る方がいささか大変と感じています。
長くなりましたが、TETSUさん・タラパパさんをはじめ、ありがとうございました。
投稿: ○術師 | 2009.10.03 01:23