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推理将棋第30回解答(2)(3)

[2010年2月28日最終更新]

推理将棋第30回出題の30-2、30-3の解答、第30回出題の当選者(DD++ さん)を発表します。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。

関連情報: 推理将棋第30回出題  推理将棋第30回解答(1)  (2)・(3)
  推理将棋(隣の将棋)  どんな将棋だったの? - 推理将棋入門


中級 渡辺秀行さん作   同一局面詰め入門

A君「お互い10手で同一局面の詰みで勝つとは珍しいねぇ」
B君「しかも最初の3手と最終手も同じだね」
A君「僕は一つの駒しか使わなかったよ。先手は最後の角がマズかったね」
B君「僕の棋譜は『同〇、同△』という手順があったよ」

さて、どんな将棋だったのでしょうか?推理してくださいね。

<共通条件>

  • 10手で詰み
  • 最初の3手、最終手、終局図(盤面&持駒)がいずれも他方と同じ

30-2 中級 渡辺秀行さん作   同一局面詰め入門(1)  10手

(A君のみの条件)

  • 後手の使用駒は1枚
  • 9手目は角

30-3 中級 渡辺秀行さん作   同一局面詰め入門(2)  10手

(B君のみの条件)

  • 「同〇、同△」という手順があった(※)

※n手目とn+1手目が「同」の付く手。


出題のことば (担当 タラパパ)
  30-2: 後手の使ったただ一枚の駒、歩ではなさそうですが・・・。
  30-3: 後手が先手に渡せる駒といえば?

追加ヒント
  30-2: 30-3と違って、「同」の付く手はありません。
  30-3: 先手は後手の打った駒を取りました。


推理将棋第30回中級解説  担当 タラパパ

別個解説は困難なので、この2題は、まとめて解説させていただきます。

推理将棋30-2 解答 Suiri302

7六歩、▽3二飛、▲3三角不成、▽4二
▲7七角不成、▽3二、▲5八金右、▽3七不成、
▲6八、▽3九飛成 まで10手

推理将棋30-3 解答

7六歩、▽3二飛、▲3三角不成、▽同飛、
▲5八金右、▽3六角、▲同歩、▽同飛
▲6八角、▽3九飛成 まで10手

推理将棋で異手順、同一詰上がり趣向を開拓したのは、記憶に誤りがなければ、かずひでさん。ただでさえ検討が大変な推理将棋にあって、創作難度が高く検討力も要求されるため、そんなに多く作られていません。そして現在、この分野は殆ど渡辺さんの独壇場と言えます。

そこで本局なのですが、ハタと膝を打つアイデアが30-2の「後手は1枚の駒しか動かさない」条件。1枚の駒が歩では異条件2手順が作れるわけもなく、玉・金・銀では10手で詰める筋ひとつありません。可能性は唯一、龍による単騎詰。それも59玉に対して39又は79龍の形。創作の難しさのハードルを一挙に下げてしまう発想力。

そこに、30-3では「同○、同×」条件。片や飛車だけが動き、片や後手が打った(又は動いた)駒を直後に取らせるとしたら・・・・?
一方は取れる駒をあえて取らず、他方は取れる駒を取って渡した、と考えるのが自然。その場合、取らない手や駒を打つ手はどちらも冗長的な着手のはず。
10手ぎりぎりで実現できる手順では苦しいはず。そこで浮かぶのが作意手順より2手短く、推理将棋ではたびたび登場する、例の「はてるま手筋」8手の順です。

これを踏まえて30-2。「76歩、??飛、33角不成、42飛、88角不成、32飛、58金右、37飛成、68銀、39龍」といったような、33で角を取らない手順が作れます。
30-3はどうでしょう?「76歩、32飛、33角成、同飛、58金右、36角、同歩、同飛、68角、39飛成」のような順が得られます。
最後にこの2手順を、条件に合うように微調整してやると2問まとめて正解が得られます。

論理的かつ手順限定のためのアイデアに溢れた好作。創作技術の高さを実感しました。


30-2への短評

DD++ 「はてるま手筋は先手角が消えるか、残すと王手の対処が必要だから飛は無理そう。とすると88歩成までくらいしかなさそうだ。そういえばコメントなんだっけ。・・・えっ!?」

■しまった!(笑)

斧間徳子 「このような1題で2手順を問う問題は、通常なら「手順前後が効く」という理由で捨てられる手順も捨てられないこともあり、解くのがちょっと面倒で、個人的にはあまり好きではないです。」

■そうした面はありますね。本局でいえば単独条件なら2手目の32飛が限定するはずがなく、NGとして消せる手順ですものね。

渡辺 「本問も論理的に解けて易しいはずですが、皆様の反応は何如に...。」

■「入門」というほど易しくはないような気もしますが、ツインの中では確かに易しい。

リーグ戦ファン 「多分こっちが本筋であろうA君の筋、チェスのプルーフ問題っぽくて好みです。ところで、条件「9手目は角」は、33で取られるはずの先手の角について、取らせない手とその前に取り返す手の二つの筋、と気付かせてしまうので、ヒントとして大きすぎる気がします。「9手目は表記上は同じだが片方は打つ手」では、みっともないですかね。」

■意図的に強めのヒントを与えたのではないかと思っていますが。果たして?

躑躅 「33角に42飛が見えず、同飛と取られると9手目に角を指せなくなると思い込んでしまって難渋しました。」

■ツインなればこその不思議な手順でした。

S.Kimura 「最初は金を55まで持ってくるのかと思いました。8手目に飛車が成って危うく間違いそうになりました。」

■先手玉は66までしか行けず、金では捕まらないんですよね。

ミニベロ 「渡辺さんお得意のツインですね。こちらはすぐに見えたんですが・・・。」

■あちらで悩みました?(笑)

はてるま 「1枚しか使わない駒が歩でないなら、飛車しかないところ。5手目と7手目非限定では・・・と一瞬思いましたが、なるほど、角を動かさないと飛車が3筋に戻れませんでした。8手目は飛成でもよさそうですが、最終手を「成」でそろえるために生、ということですね?」

■そうして、こうして、不思議なほど全手順が限定してしまいます。

○術師 「出題時のヒントも見ずに歩で考えて苦労しました。68玉、84歩、78玉、85歩、68銀、86歩、79角、87歩不成、88角、88同歩成までとするとあまりにもピタリとしていましたので。ただ、B君の方に全く当てはまる手順がありませんでした。以前、自分で68角と塞ぐ手順を作ったことがあったので、こちらを思いつきました。」

■歩で迷われたということなら、ヒントは大正解でした(^^)。次回はぜひヒントも眺めてくださいね。

はなさかしろう 「考え方を整理していく過程が楽しい趣向ですね。詰み形が浮かばないと難しいと思いますが、龍単騎8手を覚えていたので楽ができました。ところで共通条件を「最初の3手、最後の2手、終局図(盤面&持駒)がいずれも他方と同じ」と変更し、30-2の「9手目は角」を省いたらどうなるのかというのが興味深いところです...難しすぎてわかりませんでした。どなたかからコメントがあるかどうか楽しみです。」

■”棋譜表記上で同じ”として、その条件で成立しそうに思います。たぶん初級用にするため難度を調整した?


30-3への短評

DD++ 「はてるま手筋とすると、あとは1手ずつの無駄手で角を返すだけ、と。3手目と10手目をそろえるという条件で両手順の成生を限定するのは面白い作り方ですね。」

■私には到底作れそうにありません。

斧間徳子 「36角が推理将棋ならではのごつい一手!」

■渡された駒を使わざるをえない単騎詰の特徴を生かしています。

ミニベロ 「歩頭の角が見えにくい。でも確かにこれは入門レベルなんだよね。もっと難しいの一 杯あるから・・・。」

■なんです。

リーグ戦ファン 「飛車単騎8手詰筋の応用ですが、そのままでは37飛の成不成・33角の成不成・68の先手駒が限定できないところを、ツイン問題にして縛ったのが巧みすぎます。しかも、一番悩ましいA君の2手目も「1-3手目が同じ」で限定できているとは!」

■そこに発想の素晴らしさがあります。

はてるま 「9手目68角と、30-2の手順と表記上同じですが、こちらは実質「打」なので許してもらえるかと・・・。同一局面詰め、「入門」ということはまだまだこれから出てきそうですね。楽しみにしています。」

■「入門」の上は、いきなり難問かも。

S.Kimura 「角を打って取らせるのが好手(!?)ですね。」

■更に「角を打たせる」まで好手に入れてください(^^)

○術師 「角を取って58に打つのかと思ったら、手が足りませんでした。こちらの手順を見ないと、A君の方の37飛不成が確定しないんですね。」

■そこがツインならではの作りでした。

はなさかしろう 「久しぶりに解いた問題がどれもやさしい作りで助かりました。解くのはもちろん作るほうもまた参加したいと思います。」

■作るほう、ぜひお願いします。


30-2、30-3 正解:10名

  S.Kimuraさん  斧間徳子さん  躑躅さん  DD++さん  はてるまさん
  はなさかしろうさん  ○術師さん  ミニベロさん  リーグ戦ファンさん  渡辺さん


総評

DD++ 「今回の3問の手順を見て思ったこと。76歩、32の手、33角不成、という出だしは汎用性高すぎですね。これが成でなくみんなそろって不成なのが推理将棋らしい。」

■恐らく推理将棋で一番頻繁に出てくる手順かと。

リーグ戦ファン 「今回は、飛行機出張のお供に、と、プリントアウトしておいたのですが、両問ともに秒殺で終わってしまいました…。条件数を絞った綺麗な問題は、「よくもまぁこんな条件を思いつくものだなぁ、完成度が高いなぁ」と、鑑賞するには楽しいのですが、袋小路に入り込む苦しみを味わいたい趣味からすると、ちと残念でした。」

■次回飛行機出張はいつでしょう?超難問をご用意します(笑)

隅の老人B 「頑張りましたが、1題しか解けず、情けないこと。解答を見るのが、楽しみです。」

■易しくても、ハマると全く見えないのが推理将棋。私も最近一ヶ月ぶりに、(難しくない)10手問題が解けましたが、とある9手が解けません(泣)

○術師 「30-1でも書きましたが、解く方にとっては簡単ではありませんでした。が、解答1題常連?と化している私が全部解けたのですから、簡単だったのでしょうか...(苦笑)ギリギリ感のある30-1の手順が私にとっては好みです。」

■作品の質は、ツインが数段優りますが。

ミニベロ「一発で作意が見えなくなりました。いよいよ隠居か。」

■私より先に隠居は早いでしょ。


推理将棋第30回出題全解答者: 13名

  S.Kimuraさん  斧間徳子さん  鈴木康夫さん  隅の老人Bさん
  竹野龍騎さん  躑躅さん  DD++さん  はてるまさん  はなさかしろうさん
  ○術師さん  ミニベロさん  リーグ戦ファンさん  渡辺さん

当選: DD++さん

おめでとうございます。
賞品をお送りしますので、賞品リスト から選んだご希望の賞品と送付先をメールでお知 らせください。

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コメント

本問は推理将棋を方程式に喩えるなら連立方程式、すなわち「連立推理将棋」になります。
この出題形式の元祖はかずひでさんの「鬼殺しvsゴキゲン中飛車」-「鬼殺しvs三間飛車」
ですが、片側は沢山手が明かされており、先手は手順前後、後手は相手の手の異なる位置に
飛車を動かして取らせる、という仕組になっています。

本問のように、同じ駒の発生事由が移動/打った駒で異なる本格的な「連立」の最初は、
魚熊さんの「奇遇」で、私の「連立」研究の契機となりました。

・「9手目は角」条件について
お二方からご指摘を頂いておりますが「入門編」とし、論理で押し切れるようにするために
意図的に大きなヒントを入れました。

(共通条件)
・9手で詰み
・1、2、3、9、10手目の棋譜表記と終局図が他方と同じ
(A君のみの条件)
・後手の使用駒は1枚
(B君のみの条件)
・「同〇、同△」という手順があった

で作意成立するはずです。ただし相当難しくなると思います。


> 袋小路に入り込む苦しみを味わいたい趣味からすると、ちと残念でした。
そういうときは是非「作意の成立するぎりぎりの条件」について検討してみることを
お勧めします。無限に時間が取られること請け合いです。


> 「手順前後が効く」という理由で捨てられる手順も捨てられない
その考え方はどうしても解けない難問を解くときの最終手段で、本問のレベルでは
不必要なはずです。また、この種の問題は「必要な手は何か」を整頓してカウントし、
最後に手順を構成するという解法を取ります。

投稿: 渡辺 | 2010.02.28 21:39

間違えました。
誤 ・9手で詰み
正 ・10手で詰み

投稿: 渡辺 | 2010.02.28 22:34

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