覚えておきたい推理将棋の基礎知識 3
[2010年10月16日最終更新]
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覚えておきたい推理将棋の基礎知識 3 ミニベロ
■無駄手・遊び手・待ち手の有効活用
先手・後手の手数をカウントして、どちらも同じ数なら偶数手作品(先手玉を詰める)、先手が1手多ければ9手詰作品のように後手玉を詰めればいいのですが、いつもそう旨く行くとは限らず、例えば「先手は5手だが後手の手が余った」ときはどうしましょう。パスはできないので何か指定して指させるにしても、意味のない手では作品価値が下がります。
推理将棋においてこの「待ち手」は、かなりの厄介者です。
しかし知恵はあるものです。この「待ち手」をメインテーマにした作品が存在するのです。
推理将棋第11回出題の、橘圭吾作「油断大敵? 9手」がそれです。
▲7六歩 △6二玉 ▲3三角成 △6四歩
▲2三馬 △9九角成 ▲4一馬 △1八香
▲6三金 (詰め上り図)
これほどの昇華は、なかなか簡単には出来ないものですが、短編の9手作品で2手もの空白が出来るのはなぜでしょうか。
7手詰の基本形でも後手は3手必要なのに、どうして9手詰で後手は2手も余るのか?
将棋の実戦初形とは不思議なもので、もし後手が何もしないでパスをすれば、どうやっても7手(先手4手)では詰みません。試してみてください。推理将棋とは、後手の巧妙な協力で成り立っているとも言えるのです。
しかし先手に5手あれば、後手の協力が2手で充分な詰み形が存在します。その一つが先ほどの橘圭吾作に出てくる「62玉・64歩」の形ですが、この「64歩」に代えて「72金」も同じです。
先手は41の金を取って打つだけ。「76歩・33角成り・23馬(32馬)・41馬」と動きます。
もう一つ、玉が動かない順があります。例えば以下の順です。
▲7六歩 △3四歩 ▲2二角不成 △7二金
▲5二角 △9四歩(待ち手)▲4一角不成 △9五歩(待ち手)
▲5二金 (詰め上り図)
6手目・8手目は待ち手ですが、玉方の4手目は飛車の利きを消すため、2手目の34歩は3手目で先手に角を取らせるために必要です。61の金を取る場合は、・34歩・72銀・32金の3手が必要になるので、後手の遊び手は1手だけになります。
この「玉の横の金」を狙う順は、比較的に後手の協力が少なくてすむので便利ですが、便利ということは強力な余詰順としても存在しますので、覚えておきたい手筋です。
この詰み形を利用した拙作を見てください。
▲7六歩 △3四歩 ▲2二角不成 △3二金
▲9四角 △8四歩 ▲6一角不成 △8三飛
▲5二金 (詰め上り図)
飛車の横利きを消す手段として、84歩・83飛というとぼけた順を使っています。同じように32飛・33飛とする形もありますが、角の打ち場所を限定したい場合、詰め上り図だと、「端に角を打った」といった条件も使えそうです。
もう一つ、9手詰で玉方が2手で済む詰形があります。「94問題形式」の拙作で、予習問題です。
- 4手目93桂
- 5手目歩頭
- 6手目玉
- 8手目玉
4手目93桂とはふざけた条件で、2手目は94歩に決まってます。つまり「無駄手・遊び手」なのですが、一応の意味はあります。
▲4六歩 △9四歩 ▲4五歩 △9三桂
▲4四歩 △4二玉 ▲4八飛 △3二玉
▲4三歩成 (詰め上り図)
72玉では81に逃げ道があって詰みません。「93桂」は4筋の攻撃を限定する意味があるのですが、この形も玉方は2手で充分です。歩を突いていくだけの単純な攻撃ですが、覚えておくと便利な詰形です。
でもこの作品の本当の狙いは別のところにありました。
最後の条件「8手目は玉」を「8手目は金」とすると、「32玉」に代えて「51金右」で上記順とほぼ同じ詰め上りになりますが、実は余詰が発生して、全く別の詰形が出現します。
▲7六歩 △9四歩 ▲7五歩 △9三桂
▲7四歩 △6二玉 ▲5五角 △5二金左
▲7三角成 (詰め上り)
これを紛れ順として読んでもらおう、というのが作者の罠でした。ほとんど同じような条件でも全く異なる最終形に到達する、推理将棋の不思議な一面です。
この「94問題」は、先手後手の着手がはっきりしているので、先手後手の着手をぼかしたミスディレクション(誤誘導)はほとんど使えません。それでこういった「偽手順」を含みにした作品も一つのやり方です。
ミスディレクションとは、推理小説やマジックなどに使われる手法で、観客を間違った方向へと誘導する巧妙な仕掛けのことです。
ミスディレクションに関しては、いずれやりましょう。但しこの手口はかなり上級テクニックになりますので、講座も難しくなりますよ!
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