知っておきたい推理将棋の各駒手筋 第3回 桂の手筋
[2010年12月4日最終更新]
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知っておきたい推理将棋の各駒手筋 DD++
第3回 桂の手筋
第3回は桂馬の手筋です。推理将棋において桂には面白い特徴があります。例えば最短で金を取るなら、先手は5手目、後手は6手目。角なら、先手は3手目、後手なら4手目。このように、駒を取るのは後手のほうが1手遅れるのが普通です。ところが桂馬だけは例外で、先手は5手目にやっと取れるのに対し、後手は「76歩、34歩、77桂、同角」で先手より早い4手目で取ることができるのです。桂を使う最速の詰みも 『1-2 とどめは桂(ミニベロさん作)』 の8手と、後手勝ちの方が速い不思議な駒です。
●自陣からの角桂連携(基本)
自陣の桂は出動するのに1,3,7,9筋どこかの歩を突かなければいけませんが、7筋(後手なら3筋)は角の出口にもなるため、歩を1枚突くだけで2枚の駒が出動できます。また、敵陣に届く場所もうまく一致するため、同じ場所から角桂を出動して詰ます順は基本とされています。以下の2手順をご覧ください。1手順目の8手目は待ち手です。
▲7六歩 △5二玉 ▲7七桂 △4二銀
▲6五桂 △5一銀 ▲4四角 △9四歩
▲5三桂成
▲7六歩 △5二飛 ▲7七桂 △6二玉
▲6五桂 △9四歩 ▲5五角 △9三桂
▲7三角成
どちらも基本的な9手詰手順ではあるのですが、どちらも非限定が多いので作品化しづらい作家泣かせの手順です。10手以上になると端から2枚が出て行くような順も成立し、 『17-2 仮説棄却1(魚熊さん作)』 などの作例があります。
●金付き居玉に吊るし桂(基本)
初形から玉方の玉も金も動かせない場合、非常に詰ませにくそうに思います。が、そこは桂の出番。 『25-1 端に打った駒(看護)(ミニベロさん作)』 『34-2 中央決戦(DD++作)』 『37-1 "3"の魔術師(DD++作)』 のように、敵陣2段目を封鎖して桂打ちまでで、簡単に詰ますことができます。条件で玉も金も動かせない場合はまず吊るし桂を疑ってみてください。それくらい基本の手筋です。参考までに、対金付き居玉のもう1つの王道手筋は両王手です。
●角でピンして吊るし桂、敵角頭から吊るし桂
吊るし桂つながりでもう1つ。これは指将棋や詰将棋でもよく現れるのではないでしょうか。以下の手順をご覧ください。
▲7六歩 △3四歩 ▲2二角不成 △3三桂
▲同角不成 △5二玉 ▲7四角 △6二飛
▲6四桂
同歩ととられそうですが、74角が睨んでいるのでこの歩は動けず、これで詰みです。作例は12手物ですが 『7-3 一度だけの出来事(ミニベロさん作)』 など。
また、上では桂が取られないようにピンしましたが、桂頭への逃げ道を塞いでいる駒が角や桂なら、そもそもピンする必要もありません。こちらの作例は、ともに11手物ですが 『17-3 駒の活用(魚熊さん作)』 や 『31-3 交通規制(はなさかしろうさん作)』 。
●逃げ道塞ぎと紐の両立
桂の利きは、あるマスとその2つ隣のマス。この2つ隣というのが面白く、片方を紐に使いもう片方で逃げ道塞ぎをするという手順が可能です。 『5-2 推理将棋杯シリーズその3(はてるまさん作)』 や 『易しい推理将棋 第2回』 の他、10手物では 『27-3 8手目の桂打ち(B君)(渡辺秀行さん作)』 で用いられていますね。推理将棋になるととたんに見えなくなる手筋の1つです。
●総括
今回は9手以内で出てくる順のみ書きましたが、11手以上になると使い方の幅が広がること広がること。中には 『32-1 三捨利警部の推理 主犯は誰だ(ミニベロさん作)』 のような使い方も平然と成立し、香と同じく長めの作品で作意に組み込むと難解作になりやすい駒です。
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コメント
9手の詰み手順で、桂(圭)が王手するのでもなく、王手の支えでもないパターンとして、1.桂で逃げ道を塞ぐ、2.桂で攻め駒を取る、のパターンがあります。具体的な手順は書くまでもなく、見つけて頂ければ良いと思いますが…。
投稿: 渡辺 | 2010.12.05 16:09
毎度補足ありがとうございます。
私も当然ながら推理将棋の全部を知っているわけではなく、
私が「9手でよく見るよな」と思うものについて書いているだけですので、
記載内容には抜けも多々あると思います。
あんまり見ないからと意図的に省略したものもありますが、
他にもこういうのがあるよ、というのがあればぜひぜひ積極的に補足いただければと思います。
投稿: DD++ | 2010.12.06 01:45