知っておきたい推理将棋の各駒手筋 第6回 角の手筋
[2010年12月25日最終更新]
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知っておきたい推理将棋の各駒手筋 DD++
第6回 角の手筋
ついに来ました大駒。第6回は角です。角は敵陣まで最も速いのでたいてい攻めの中心になることと、歩を除いて唯一3手目に取れる駒であることから、短手数でもその手筋は豊富です。もちろん馬の手筋も含むので、今回はいつもより少し長めの回になっています。
●玉の隣に生角(基本)
通常、指将棋や詰将棋では、よほどの事情がない限り敵陣に入った駒は成るものですが、推理将棋は角は不成で使うことの方が多いです。それはこの手筋のせい。成って馬になってしまうと敵玉が近づけませんが、角ならば玉がその懐に入っても大丈夫。それはつまり、詰みに近い形が作りやすいということに他なりません。
『2-1 詰キストの将棋(余多老さん作)』 と 『13-1 強欲(橘圭吾さん作)』 (この2作はほぼ同一手順)、 『14-2 玉に取られる駒はない(ミニベロさん作)』 などはいずれも玉腹に生角を置いて、玉頭からトドメをさす詰め上がりです。
さらに、 『1-1 とどめは角成(Normanさん作)』 や 『13-2 縦列駐車(リーグ戦ファンさん作)』 や 『13-3 字数の多い棋譜(魚熊さん作)』 のように生角を玉腹ではなく玉頭に使ったり、 『35-1 角交換の罠(DD++作)』 のように玉尻に使ったり、応用の幅はかなり広い手筋です。しかもこれだけ作例を挙げて全て9手以下作品というのがこの手筋の幅広さを物語っています。推理将棋の全手筋の中で、最も習得が必須な手筋かもしれません。
また、 『30-1 宝船(タラパパさん作)』 のように、最後には成るけど移動途中で余計な王手をかけないように不成で移動しておく、という例もあります。
●筋違い2枚角
作例が多い中、一番見てわかりやすいのが 『8-3 対向射線!?(橘圭伍さん作)』 の終局図でしょうか。筋違いの2枚の角を並べて、合駒なし逃げ場なし。非常に魅力的な詰め上がりなので作例も多く、 『5-1 8手シリーズ(1)(Normanさん作)』 、 『22-1 4筋が急所(まささん作)』 と角の取り方や場所を、手を変え品を変え何度も登場している詰め上がりです。
また、同じ筋違い2枚角でももう1つパターンがあります。それは中段に玉が出てきた場合の手筋で、 『34-1 勇み足(DD++作)』 に見られる角十字の詰め上がり。こちらもあわせて覚えておきたい詰め上がりです。
●同じ筋の2枚角
筋違い2枚角は玉から離して打ったり片方を成ってそれを紐にしたりでしたが、同じ筋の2枚角は必ず互いに紐になるという強みがあり、もっと直接的に攻め込む形でこちらもよく現れます。その攻め方、つまり詰め上がり方は大きく3種類。
1つめは、 『4-2 可愛い8手(ミニベロさん作)』 にあるような、生角2枚の隙をきれいに後手駒が塞ぐ詰め上がり。2つめは、 『14-2 玉に取られる駒はない(ミニベロさん作)』 のように、玉まわりに生角と馬という形にする詰め上がり。3つめはどちらも10手物ですが 『12-2 ミスディレクション(タラパパさん作)』 や 『14-3 玉頭の角(花井秀隆さん作)』 のように、42銀を壁にして反対の玉腹に22角成とする詰め上がり。
2枚角はどんな問題でもよく候補に入ってくるので、筋違い角の手順とあわせてこれらもぜひ覚えておきたい形です。
●41-63連携
馬を使って41と63(もしくは左右逆で61と43)で連携をとって詰ます形は時々出てきます。ただし、不思議なことにどちら側が馬と決まっているわけではなく、
▲7六歩 △6二玉 ▲3三角成 △6四歩
▲4二馬 △9四歩 ▲4一馬 △9五歩
▲6三金
▲7六歩 △6四歩 ▲4四角 △6二飛
▲5三角成 △6三飛 ▲同 馬 △3二金
▲4一飛
と、どちらが馬になる場合もあるから不思議です。実際の作例も41が馬のケースでは 『11-2 油断大敵?(橘圭吾さん作)』 と 『24-2 もぐらたたき(橘圭吾さん作)』 、63が馬のケースでは 『35-3 小金持ちII(タラパパさん作)』 で登場しています。どちらも玉方の形作りがほとんど必要ないため、玉方のやることが多い時に収束としてでてきやすいようです。
また、変形として角を使って 『16-1 3段目への駒打ち(夏休みさん作)』 や筋をずらして 『15-1 横田くん(けいたんさん作)』 でも同じような形が現れています。
●馬の単騎詰(上級)
ひさびさの(上級)マーク、つまり9手以下では存在しないけど10手以上でよく出る手筋の紹介です。作例を見たほうがわかりやすいと思いますので、 『35-2 4枚目の歩(タラパパさん作)』 の終局図をご覧ください。
攻め駒は馬1枚ですが、これに対し逃げ場も合駒もなく、これで詰んでいます。馬単騎の最短は10手。馬(角)が上から単騎詰する場合には、馬がいる側の玉腹には玉方角がいることが必須です。というのは、角以外だと全て合駒できてしまうから。ここテストに出ます。
そういう意味ではこの問題の72という玉位置は変則的で、 『10-3 銀の横の馬(まじーさん作)』 のように22角の隣の12に後手玉が移動する形が最も自然な形です。他にも31角と引けば41玉も馬単騎詰にすることが可能です。龍の単騎詰よりも手数はかかるのですが、
馬単騎の方が問題に使われることは多いようです。
●総括
推理将棋の半分は角でできています、と言っても過言ではないくらい登場機会の多い角。特に不成でヌルヌルと動く感覚は指将棋や詰将棋にはない本当に推理将棋特有の手筋で、これに慣れることができると推理将棋への道が一気に広がります。ぜひマスターしてください。
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