知っておきたい推理将棋の各駒手筋 第8回 玉の手筋
[2011年1月15日最終更新]
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知っておきたい推理将棋の各駒手筋 DD++
第8回 玉の手筋
いよいよこのシリーズの最終回、玉の手筋です。推理将棋のほとんどは解くのも作るのも詰ませる手順探しなので、玉の詰まされ方を知らずに推理将棋が解けようか作れようか、という非常に大事な回です。
●2段目から動けない玉(基本)
初形から後手玉の動ける範囲を確認してみましょう。51を除けば2段目の5箇所だけで、残りの駒、特に金銀は動かさなくても壁として大いに役立ってくれています。単純に2段玉にする場合の詰め方は大きく2通り。
1つめは 『32-2 両隣の将棋(1)(DD++作)』 のように、玉を51へ戻れないようにして3段目から詰ませる形。1段目の金銀が仇になり、1段目へ引けません。51は後手駒で塞ぐパターンと、先手の角などを効かせるパターンとあります。
2つめは 『16-1 3段目への駒打ち(夏休みさん作)』 のように、3筋か7筋へ移動して、やはり3段目からトドメをさす形。32や72はそもそも51へ移動できませんから、51を塞ぐ必要がありません。ただし、33や73は守りが厚いため、頭金ではなく63から斜めになど変則的に詰ませる形になることが多いです。
●単独突撃の4段玉
上では金銀を下の壁に使いましたが、下の壁に歩の列を使うこともできます。すなわち後手玉が4段目まで上がるような形。これについては 『推理将棋の基礎知識 第2回』 で既に詳しくやっていますので、そちらをご参照ください。
●壁がなければ作れ(基本)
上2つの例以外にも、攻める反対側に玉方駒を並べるのは基本中の基本です。特に攻め駒が馬などの場合、横向きでも詰ませることができるのでこんな順も。
▲7六歩 △3四歩 ▲2二角成 △4二玉
▲1二馬 △3二玉 ▲8八角 △4二銀
▲2二馬
8手目が単に22の守りをはずしているだけでなく、41金~42銀~43歩の壁を作っていることに注目してください。
このようなまっすぐな壁でなく 『36-2 ゴテゴテした推理将棋(DD++作)』 のように囲うような形だったりもしますが、先手駒だけでカバーしきれないところを玉方駒ががんばってフォローするのは、ほぼ全作品で必要になる技術です。最も極端なのは以下の例。後手の涙ぐましい壁作りにご注目ください。
▲7六歩 △4二銀 ▲3三角成 △5二飛
▲4三馬 △3三桂 ▲同 馬 △6二銀
▲4三桂
●攻め方角の隣に玉(基本)
角のところでも「玉の隣に生角」として紹介しましたが、大事なことなのでもう一度。この形は非常に詰みに近づきやすい形で、超頻出です。特に多いのは以下の3つ。
まず最も多いのが、42角に対し52玉と腹に入るタイプ。 『2-1 詰キストの将棋(余多老さん作)』 のように、53からトドメをさすことを狙っています。角が51をうまく塞いでいるので、上の「2段目から動けない玉」の形にもなっています。
2つめに多いのは52玉とあがって51角と尻へ入ってもらうタイプ。 『35-1 角交換の罠(DD++作)』 のように腹金での詰みを狙う形です。5筋でやるなら後手が51金[右/左]と動かしてここで金を渡しますが、上記問題のように不動金をとって42玉や62玉の形になることも多いです。
最後は42角に対し41玉と頭に入るタイプ。 『1-1 とどめは角成(Normanさん作)』 のように31からトドメをさすタイプですが、角への紐が必要なので、トドメの駒は基本的に馬か龍になります。この形は意外と見落としがちなので要注意です。
●なんだかんだで居玉
これまで、玉をどこに動かしたらよいかの手筋でしたが、「居玉はさけよ」の格言どおり居玉もそれなりに手早く詰みやすいですので、当コーナーの締めくくりに紹介します。
居玉の場合の詰め方は限られています。条件から居玉が必須になる問題は基本的に以下の3パターンを考えればまず大丈夫です。
まずは金に働く手順。つまり、金をどいてもらうか取ってしまって、丸裸の居玉にして詰ませる順。一例としては以下のような順です。
▲7六歩 △4二飛 ▲3三角成 △3二金
▲同 馬 △8二飛 ▲3一馬 △6二銀
▲4二金
続いて吊るし桂。42、52、62、の3箇所を塞いで、43か63に桂をポンと打てばそれで詰みです。3箇所の塞ぎ方は、先手が53に馬などおいてまとめて塞いだり、後手駒を3枚置いたりさまざまです。以下の手順例では、6手目までが3箇所を塞ぐ手順、残る3手が桂打ち。飛の弱点も利用しています。
▲7六歩 △3四歩 ▲2二角成 △5四歩
▲5三角 △5二飛 ▲2一馬 △6四歩
▲6三桂
最後は両王手。居玉両王手は10手以上でしか出てきませんが、複数のパターンがあります。以下はその一例。
▲7六歩 △3二飛 ▲3三角成 △同 角
▲4六歩 △1五角 ▲9六歩 △3七飛成
▲9五歩 △5七龍
●総括
推理将棋のほとんどは玉の詰ませ方を探すパズルですから、当然玉は主役です。
そういう意味では、歩から始まり8回にわたって連載してきた全ての手筋が玉のための手筋と言っても過言ではありません。
そして、これまでの手筋をちゃんと学んできた方は、
「なんでもいいから9手で玉を詰ませてください」と言えば、
玉の回以外で学んだ手筋も使って、いろいろな詰ませ方が思い浮かぶようになっているはずです。
例えばそのうちの面白い手順1つを取って、その手順の特徴を書き出して見ましょう。そうすれば、ほら、もう9手詰めの推理将棋が1問作れました。その条件で他の手順でうまくいってしまわないかという検討は必要ですが、自分の中で大丈夫そうだと思ったら、ぜひおもちゃ箱に投稿してみましょう。余詰の見落としは心配かもしれませんが、そこは担当者がちゃんと重ねてチェックしてくれるはずですから、きっと大丈夫。
いつの日か、おもちゃ箱が「今回もまた新人特集です」というほど賑わうことを楽しみにしています。
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コメント
DD++さん、お疲れ様でした。
「各駒手筋」という切り口で推理将棋を眺めてみると、
また新しい発見がありましたね。
連載ありがとうございました。
ところでこの先ですが、私はノープランですので、またなにかやってほしいですね。
投稿: ミニベロ | 2011.01.16 19:11