[2011年8月31日最終更新]
推理将棋第47回出題の47-3の解答、第47回出題の当選者(チャンプさん)
を発表します。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。
関連情報: 推理将棋第47回出題 推理将棋第47回解答(1) (2) (3)
推理将棋(おもちゃ箱) 推理将棋(隣の将棋) どんな将棋だったの? - 推理将棋入門
47-3 上級 KGさん作 五段にならねば五段になれぬ 10手
「昨日のプロ対局は見物だったな」
「先手も後手も五段昇格がかかっていたからね」
「結果は10手で詰ませた後手が五段になったよね」
「俺それ見逃したんだ。どういう将棋だったか教えて」
「後手が五段になったんだ」
「それはさっき聞いた」
「いや、そうじゃなくて。後手が五段目に駒を成る手を指したんだ」
「あ、そういうことか。他に覚えていることは無いか?」
「確か、不成の手が4回もあったよ」
「へえ」
「それから偶数筋への着手は5手目のみだったね」
さて、どんな将棋だったのだろうか?
(条件)
- 10手で詰んだ
- 後手が五段目に駒を成った
- 不成が4回
- 偶数筋への着手は5手目のみ
出題のことば(担当 DD++)
この問題の「真の狙い」の予想解答もお待ちしています。
追加ヒント:
5九金と打って尻金の詰み。そのためには五段目の駒成はいつどこへ何を?
推理将棋47-3 解答 担当 DD++
▲5八玉 ▽3四歩 ▲5九金左 ▽7七角不成
▲4八金直 ▽5九角不成▲1一角不成▽9五角成
▲5五角不成▽5九金 まで10手。
上級は五段目駒成りが主条件。当然五段目に成れる駒は飛角しかありません。一見狭くなりそうなこの条件ですが、実際はきわどい順が多く、ちゃんと解くにはかなりの考察を要します。もっとも、あてずっぽうで動かしてたまたま解を見つけるというのも解き方の1つではあるのですが。という前置きはこれくらいにして解いてみましょう。
まず飛成の場合、奇数筋条件から可能性は3筋攻めのみでしょう。つまり、「76歩、32飛、33角不成、同飛、偶数筋、37飛不成、奇数筋、35飛成、奇数筋、トドメ」。この順では歩以外に駒は取れず、また最終手歩打ちは禁手なので、駒打ちのトドメはできません。すなわち考えられるのははてるま手筋「76歩、32飛、33角不成、同飛、68金、37飛不成、58金上、35飛成、奇数筋、39龍」。しかしこれでは不成が2回しかなく、条件を満たせません。
となれば目指すべきは五段目角成。しかし奇数筋条件により玉がうまく中段へ出れないため、五段馬による直接のトドメはありません。また、馬がもう一度先手陣に戻ってトドメを刺すのも、後手の着手は「34歩~77角不成~95角成~何か~59馬」といったものになり、馬への紐駒が打てません。さらに馬の単騎詰も奇数筋着手ばかりのこの条件ではありえません。
残る可能性は馬が紐駒になる手順。トドメの候補はこの条件では59角成(2枚馬)か59金くらいしか可能性はありません。しかし2枚馬の場合、奇数筋偶数筋を考慮すると「76歩、34歩、77角、同角不成、48玉、95角成、38金、77角、59金、同角成」といった手順になりますが、これも不成の回数が全く足りていません。
ということは取る駒は金。77で取る順と59で取る順がありますが、77で取る順は「78金、34歩、58玉、77角不成、48金、95角成、77金、同馬、奇数筋、59金」やその類似手順となり、不成の回数が全く足りず。つまり最後に残った候補は角が一度寄り道する「58玉、34歩、59金左、77角不成、48金直、59角不成、奇数筋、95角成、奇数筋、59金」。不成の回数は7手目と9手目がともに不成の手であればぎりぎり足ります。この手順で指せる不成2手は11角不成~55角不成のみ。33角不成は余計な王手がかかってしまい、77角不成は後手馬の利きを遮ってしまいます。
かくして全手順が判明したわけですが、実はこの問題の真の狙いはここから先にありました。この問題の会話は「五段になった後手が実は五段に成る手を指していた」という会話だったわけですが、解いてから先手の着手をよく見ると「五段にならなかった先手が実は五段に不成の手を指していた」というオチがついているのです。ほとんどの推理将棋では会話文は問題の条件をちりばめて面白く表現するためのものですが、その話の真のオチが問題を解いてはじめて浮かび上がるという構造は非常に珍しく、とても面白い表現手法でした。
それではみなさんの短評をどうぞ。
KG(作者) 「この手順は無駄手が2手も発生します。それを逆手にとってこのような問題にしてみました。先手の五段不成をあえて隠したのはちょっとした遊び心(笑)です」
■無駄手1回の9手でもできますが、あえて無駄手2回の10手にして組み込んだ遊び心はお見事でした。無駄手が面白みを持つ問題は、理解されれば得てして好評価につながるものです。
鈴川優希 「もう、先手は五段にならない手なんて指すから、五段になれなかったんだよ。」
■全くだよ、何やってんだか。
NAO 「てっきり3手目不成と思い込み、2手目32飛に惑わされました。飛車を使う余裕はありませんね。先手角の行き先がきっちり限定されているのが巧みです。」
■条件のクリアを急いで間違った筋にハマるのはよくある話。不成条件がなければ飛車を使っても詰むんですけどね。
はなさかしろう 「3手目33角不成、両王手がらみ...という第一感があっさり大ハズレで腰を据えました。解周辺は10手の余詰の森のような場所なのに、偶数筋"5手目"で限定なのですね。さて、真の狙い予想ですが・・・『五段目の駒成2回』『偶数筋5手目のみ』の2条件でも行けそうな手順ですが、ぴったり自然限定されている先手の遊び手2手を隠す方を選ばれたのかな、と。第1条件は"は"ではなく、後手"が"で、してみると先手の不成は"ナレズ"。タイトル、会話や条件文に伏線が張ってあって、将棋版推理小説、ですね。」
■その2条件の方が条件&手順としては面白いですが、会話文まで含めるとこっちの方が前例のない試みで面白かったでしょう?
斧間徳子 「真の狙いは『先手は55角生と五段目に成らなかったから五段になれなかった』ですね。座布団1枚。」
■座布団10枚集めるともれなく担当者が交代できます。
渡辺 「11角生から55角生の無駄手が「奇数筋」+「不成」で決定するのが面白い。一手だけ偶数が入るのと奇数筋だと角が動かせるので広そうですが、不成4回成1回のために角を取るのが難しく、角打がないとすると角の位置は実は35などには来ないことが分かります(「段+筋」を4で割ると余り2)。よって5段目の角成は15/55/95のどれかで、それぞれの場合を考えると絞りやすいかと思います。」
■角打がなくても14歩~13角~57角不成~35/75角成があったりしますが、不成回数が足りませんね。
宮谷保可楽 「テキトーにやってたら、いつの間にか解けていた(メクラ鉄砲のなせる技…)。それにしても、どうしてこんなに手順調整がうまくいくのだろうか。」
■手順調整はこの問題の場合「そもそも後手に手順前後のない手順を選んだ」のに加えて「先手の無駄手に7手目以降でしか指せない2手を選んだ」ことで48金のタイミングさえ指定すれば全て解消するようにしたのが勝因ですね。しかもそれを1つの条件にするのではなく、「奇数筋着手条件にうまいこと混ぜた」のでより自然に見えるようになっている、と。
タラパパ 「95角不成~55角成だったら、どちらが昇段できたのでしょう?」
■1手詰を見落として先手が逆転勝ちで昇段、ではないでしょうか。
テイエムガンバ 「先手の角が動いて後手の角の筋を通すのでは、と思いましたが、5手目を限定できず断念。後手の角が先手の角の筋を通すという考え方をしたら一気に解けました。」
■なるほど、角道を通すのに1手ずつかけるのは損だ、というところから解いたのですね。これは思いつきませんでした。
チャンプ 「感想戦の会話を少しだけ。」
先手四段「最後こちらも五段に成れば五段になれましたかね?」
後手四段「それでも詰みで負けてしまうので五段にはなれなかったかと」
先手四段「そうか、七段に成れば七段になれたかもしれませんね」
後手四段「となると私も九段に成るチャンスを逃したのは問題でしたね」
先手四段「しかし、それはどちらもまた別の将棋になりますね」
後手四段「それもそうですね」
新聞記者「・・・」
■先手四段「初段~三段に降段したくない私はかなり不利なのでは……」
リーグ戦ファン 「後手だけでは不成回数が足らないので、不成を先手に協力してもらうために後手が77をまず空けてから▽95角成はまぁほぼ必然。すぐ解けました。先手角不成は、詰め筋からすると無駄手処理なのですが、不成条件が詰め筋を限定する条件になり、かつ、行き所がたくさんありすぎてもう一回奇数筋で限定しなくてはならないところが面白いです。」
■中級もそうですが、無駄手の絡ませ方がうまいですよね。
井上順一 「詰め上がりが想定できなかった。真の狙いとやらも全くわからず。」
■この形は比較的よく出る詰め上がりですので知っておいて損はないかと思います。
平井康雄 「生5回にした方がスッキリするように思いましたが、それだと8手目の限定にもう一条件必要なんですね。この辺もセンスの問題ですね。」
■やるとしたら「五段目の成2回」でしょうね。もっとも、それでは真の狙いが実現しなくなってしまいますが。
中村雅哉 「尻金までとはこの条件からは予想外。」
■おや、予想外とは予想外。私としてははてるま手筋と並んで本命候補だと思うのですが、中村さんは何を予想されたのやら。
隅の老人B 「不成が4回。『これは双方の角でだろう』は良かったが、初手76歩or96歩?これで約15日間の空回り。ヒントを見たら15秒でした、嫌になっちゃう。」
■推理将棋はきっかけをつかめると一気に解図が進みますから、そういうこともよくある話。
たくぼん 「作品も素晴らしいのですが、五段にならねば五段になれぬの言葉遊びの問題文が秀逸です。真の狙いは無解です。」
■着眼点はバッチリ、実はそのすぐ先に真の狙いがありました。
はてるま 「先手の角が11→55に限定されるのが気持ちいいですね。実質遊び手ではあるのですが、条件がうまくはまって、意外なところで味が出ました。」
■中級はてるまさん作の48飛に通じる味です。
占魚亭 「手順はすぐに分かりましたが、真の狙いが全く分かりません……。」
■すぐ解けると会話文を読み返したりしない分、逆に気づきにくいのでしょうかね。
はらたっと 「5手目偶数筋での限定がよいですね。」
■先手の角不成や真の狙いがあるので陰に隠れがちですが、ここもまたうまくできています。
鈴木康夫 「無駄手の9手目が限定されているのがすごい。」
■このド真ん中への不成をこうも自然に限定したのが作者の腕なのでしょうね。
正解:20名
井上順一さん 斧間徳子さん KGさん 鈴川優希さん 鈴木康夫さん
隅の老人Bさん 占魚亭さん たくぼんさん タラパパさん チャンプさん
テイエムガンバさん NAOさん 中村雅哉さん はてるまさん はなさかしろうさん
はらたっとさん 平井康雄さん 宮谷保可楽さん リーグ戦ファンさん 渡辺さん
総評
KG 「今回は上級が自作問題だったですが次回こそはヒントなしで上級を解けたらいいな」
■次回はKGさん作は外しておくのでがんばってください。といっても次回の上級も易しめ選題ですけどね。
鈴川優希 「今回は2番と3番が、無駄手をテーマにした作品で面白かったです。どこでもいいような感じがするけど、ここしかない、という謎解きが楽しめました。」
■無駄手を楽しめるのも推理将棋の醍醐味の1つ。
はなさかしろう 「段条件はそうでもないのに筋条件は苦手感がありました...が、今回は楽しく解けました。どの問題でも単なるルートの特定ではなく手順の特徴や余詰消しに使われていたので、意味が深い分推理に役立てやすかったんじゃないかと思っています。」
■私は逆に筋条件より段条件の方が苦手なんですが、どちらが多いんでしょうかね。
宮谷保可楽 「 たしかに今月の解図はアッという間でした。感想を考えるほうが時間かかってます(それでいて駄文…)。私の解答が届くころには、もう100通ぐらい到着していることを期待して、ではまた。」
■駄文とおっしゃらず、今後も素直な感想をいただければと思います。しかし100通も来たら結果稿を書くのが大変でうれしい悲鳴。
タラパパ 「すべて嬉しい新題でしたわーい(嬉しい顔)」
■全て担当交代後におもちゃ箱用に制作投稿されたものなので、旧担当のタラパパさんにとっては嬉しい選題だったでしょう。
テイエムガンバ 「初めて締め切り前ヒントが出る前に解けました。この調子で次回も早いうちに解けますように。ところで、47-3の『真の狙い』についてですが、タイトルの『五段にならねば五段になれぬ』が、『後手が五段目に成った角を活用して五段になった』と『先手が五段目に角成らずの手を指したために五段になれなかった』、という二つの意味を持つ、ということでしょうか?」
■ノーヒント全解答おめでとうございます。今後もがんばってください。真の狙いはその通りですね。
変寝夢 「効率的な手より、訳の分からない手の方が面白いですね」
■今回はそれがよく感じられる作品が偶然中上級に揃いましたね。無駄手のうまさで魅せる推理将棋はほどほどにあるので、今後も何度かお目にかかるかと。
リーグ戦ファン 「今回の出題構成の趣向(筋の偶奇限定)は面白かったです。これはDD++さんの狙いでないかもしれませんが、はてるまさん出題が2問続いた後なので、『後手が五段に成る』と読んだ途端に『▽35飛成』が浮かんだ人は私以外にも少なくないのでは?」
■その点には問題を3つ選んで最終確認している時に気がつきました。そこで遊び心で練習問題をはてるま手筋の問題に差し替えてみたり。
井上順一 「先月よりも難しかったような。」
■え、本当ですか。問題の傾向による得手不得手はありますから、そう感じる方もいらっしゃるんでしょうかね。解答の集まる早さを見る限り、難度評価は先月より下で間違ってなかったようですが。
平井康雄 「推理将棋初心者には問題文だけでは考え方すらわかりませんが、最終ヒントをもたったらさすがにわかりました。」
■上級になると経験則が必要になったりしますが、それをヒントありでも解ける次点で少なくとも中級者を名乗ってよいかと思います。
隅の老人B 「残暑お見舞い申し上げます。早朝、隣家の老桜の油蝉の鳴き声で目が覚める。今日も暑くなりそうだ。さて、何をしようかな?そうだ、涼しいうちに推理将棋の解答を書こう、です。」
■何日か涼しくなったと思ったら、また暑くなったり。秋が待ち遠しいです。
はらたっと 「夏休みを一週間もらい、やっとじっくり解けるなあと思ったら追加ヒントが。DD++のヒントのツボがハマってすぐわかりました。締め切り間に合いました。」
■ヒントはかなり正解に近づけるものを出しているつもりですが、こんな感じの内容でいいでしょうかね。ちなみにヒント投下のタイミングは基本的に毎月16日の予定ですので、ヒント投下前に解答したい方やヒント待ちをする方はご参考に。
推理将棋第47回出題全解答者: 21名
井上順一さん 斧間徳子さん KGさん 鈴川優希さん 鈴木康夫さん
隅の老人Bさん 占魚亭さん たくぼんさん タラパパさん チャンプさん
テイエムガンバさん NAOさん 中村雅哉さん はてるまさん はなさかしろうさん
はらたっとさん 平井康雄さん 変寝夢さん 宮谷保可楽さん リーグ戦ファンさん
渡辺さん
当選: チャンプさん
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