[2012年6月29日最終更新]
推理将棋第56回出題の56-3の解答、第56回出題の当選者(はらたっとさん)
を発表します。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。
関連情報: 推理将棋第56回出題 推理将棋第56回解答(1) (2) (3)
推理将棋(おもちゃ箱) 推理将棋(隣の将棋) どんな将棋だったの? - 推理将棋入門
56-3 上級 橘圭伍さん作 円舞!? 15手
A「この前将棋見てたら、26角成62金同角成迄15手で後手が詰まされてたよ」
B「その将棋なら自分も見たよ。先手も後手も同じ駒を異なる地点へ丁度4連続で動かしてたね」
C「それだけじゃ、分からないから他にもヒントを……」
A「歩の着手と王手が丁度1回ずつあったね」
B「先手が着手した筋は丁度5つだったね」
A「ああ、後、玉の手はなかったね」
C「成程、それで手順が分かったよ!」
さて、どんな将棋だったのだろうか?
(条件)
- ▲26角成△62金▲同角成迄15手で詰んだ
- 先手は同じ駒を異なる地点へ丁度4連続で動かした
- 後手は同じ駒を異なる地点へ丁度4連続で動かした
- 歩の着手と王手は丁度1回ずつ
- 先手は丁度5つの筋に着手した
- 玉の手なし
出題のことば(担当 DD++)
腰を落ち着けて少しずつ解きほぐして、さて何が飛び出すでしょう。
追加ヒント:
先手着手筋は2筋3筋5筋6筋7筋。先手角が22で角を奪った後もう2手で53へ移動するには後手の協力が必要です。
推理将棋56-3 解答 担当 DD++
▲7六歩 ▽4二銀 ▲3三角不成▽7二銀
▲2二角不成▽3三銀 ▲3一角不成▽2二銀
▲5三角不成▽3一銀 ▲7一角打 ▽4二銀
▲2六角成 ▽6二金 ▲同角成 まで15手。
条件の多さに面食らう問題ですが、落ち着いて解いてみると綺麗にほぐれていく問題です。これも理詰め問題なので順に考えてみましょう。
まず考えるべきは最後の角成2回はどこから成ったのかということ。まず26角成は当然71、62、53のどこかからしか成れません。しかし玉の手がないということは62に角を置くことはできず、53からもしくは71からの2択に絞られます。
続いて62角成。14手目に62金を指したということは62は空所か先手の歩香飛のいずれかがあったか。しかし先手は同じ駒を4回動かした上で角打ちもしなければいけないため、そんな駒を用意しておく余裕はありません。つまり62は14手目着手前、さらには遡って13手目着手前には空所。だとすれば最終手で73~95のラインから成ろうとすると12手目は王手放置をしていたことになってしまってNG。つまりこちらも71もしくは53~17のラインのどこかから。これを両方実現するには12手目時点で53と71に角を置く形でしか実現しないのです。
それを踏まえて先手着手を考えてみましょう。初手は角出動のために当然76歩。そうすると歩の手1回の条件から後手は33の歩を突けないので先手が取ってやるしかありません。ここで先手の着手筋に関する条件があったことを思い出しましょう。先手は33の歩をかじり、53と71に角を置いて26と62に角を成るのですから、この5つの筋以外にはもう着手ができません。
となると先手の角の移動経路が決定します。33角不成~22角不成と角を奪った後2手で53か71に移動しなければなりませんが、44角不成は指せないので31角不成~53角不成。これでちょうど4連続着手になります。残った1手は当然取った角を71に打つ手。
では続いて後手を考えましょう。王手が1回だけ、つまり最終手以外は王手ができないのですから2手目に42銀(42飛は最後に62に利いてしまう)は必然です。そして角を打ち場を開けつつ飛の横利きを遮る72銀も必須。あれ、これで後手の必要な着手は全て?
いえいえ、先手角が31から53へ移動するときに42地点を開けておかなくてはいけません。ここに残り4手で4連続着手を費やしましょう。42銀が31へ戻るのは結局角の邪魔になるので最初はまず33銀。4段目に出ると帰りにも33を踏んでしまうので引いて22へ。33は既に使ったので31経由で42へ帰還。先手の着手と合わせて並べてみると、角のエスコートでタイトル通り銀がくるりと回転します。
長編作家らしさのある手順と条件の魅せ方でした。橘さん作はこういう狙いの隠された作品が多いので、今回の作品が気に入った方はmixiのコミュで橘さん作を探してみてはいかがでしょうか。
ところで、平井康雄さんから本問の条件にこんなご意見が。
平井康雄 「『王手が1回』というのがちょっと曖昧なように思います。最終手が王手なのは当然なので、それを除いて1回なのかと思ったりしましたが、それなら2手目と4手目が手順前後になります。(そのかわり銀が5回連続で動くことになる。)これが作意なら、『王手は最終手の1回のみ』とするべきだったのではないでしょうか?」
「王手は1回」が曖昧というのは全く考えもしませんでした。42-1や51-1のように詰みを求めない問題もあるわけですから、推理将棋では「最終手が王手なのは当然」ということはありません。むしろ「今回は詰みの局面を作る問題なんだからたった1回の王手を使うべきところは最終手だ」と考えるところから問題の一部なのです。
ですから私にはこの条件に「最終手」を書き足すことはできません。私が書き足せばそれは問題に勝手に手を加えることになってしまいますし、作者に追加を要請すればそれは完全作投稿に対して条件修正を要求することになってしまうからです。
とはいえ、この部分に関して平井康雄さん以外にも疑問に思われたあるいは勘違いをされた方がいたのも事実ですし、出題中に確認を求めるコメントがあったことも事実です。今後同じような不安のある問題については条件を改変しない範囲で補足できそうならば対応していこうと思いますが、ひとまず今回は最終手と書き加えなかった理由についてこのような背景があることをご理解いただければ幸いです。
それではみなさんの短評をどうぞ。
渡辺 「少し考えれば、先手は、76歩→角4連続移動→角打、後手は42銀→72銀→42銀の4連続移動であることが分かる。」
■いろいろなアプローチで解けますが、いかに最短でそこにたどり着くかですね。
はなさかしろう 「角を後手陣にどう差し込むかが鍵。最終手の6筋を数え忘れて誤答しそうになりましたが先手の筋条件の由来を考えて何とか修正。銀の回転方向が2つあるんですね。」
■44角不成を指せると銀の逆回転どころか何を4連続着手してもいいという。
妙高仙人 「某看寿賞作を思わせる見事な銀の円舞。やや条件が多いか。」
■投稿時にも3条件くらいで収めたかったという作者の嘆きがありました。それが実現可能だったらなおいい作品になったでしょうね。
朱 「後手が4連続で動かす駒はどれか。最初は角と思ったがうまくいかない。2手目△42銀とした後、一旦別の駒の着手を挟むのがミソで見事に銀が回転。実は題名が一番のヒントだったり?」
■橘さんは題名に狙いを表現することが多いのでそこから推測することもできなくもなかったり。
はらたっと 「タイトル『円舞』で後手の手が思い浮かんで解けました。」
■このタイトルなら思い浮かぶのは角か銀ですよね。
NAO 「最初3筋と4筋を使ってしまい6つの筋に着手で失敗。次に玉の手を12手目に指して失敗。できたと思ったら今度は53角が2回でまたまた失敗。条件が多いとの第一印象でしたが納得しました。」
■条件1つ外すだけでいろんな手順が出てくるんですよね。無駄手が多いので少条件でまとめるのは至難。
斧間徳子 「条件数が多いのが気になるが、銀の円舞はお見事。最初、円舞するのは角とばかり思っていたので苦戦した。」
■順番に可能性を狭めていくと一番最後に浮き上がるというのも素晴らしい構成です。
星の平原 「後手が歩を突けない、王手がないという制約が結構厳しくて逆に手が限定されて考えやすかったです。銀の円舞を先導する角の動きが楽しいですね。」
■居玉かつ途中の王手がないというのは意外と手が狭いんです。
鈴川優希 「33銀は面白い手。でも、その後の回転に積極的な意味がないのがちょっと不満かな。」
■推理将棋は初形が決まっているので、積極的な意味を持って回転するとなると短編中編で作るのは超高難度。うまく作れた方はぜひ投稿を。
KG 「2手目に△4二銀と指してるので、この銀は4二の地点にはもう行けないと錯覚してしまいました。タイトルの『円舞!』が角と銀の動きをうまく表していて良いですね。」
■そこは少しミスリード的なのですが補足すると台無しだし、とけっこう迷いました。
S.Kimura 「条件が多かったので敬遠していたのですが,11手目の時点で先手の角が53と71にいなくてはならないことから,考えてみると,中級よりも解きやすかったです.後手4連続の手で,銀が1周するのが面白かったです.」
■担当はどうしたらこの一見重そうな問題に手を出してもらえるかに苦心しました。
宮谷保可楽 「追加ヒントが出たとたんに解けてしまった。たぶん、4連続で動かした駒は、それ以外に動いていない(…とはどこにも書いていない)と思いこんでいたからだろう。」
■推理将棋の一番の敵は「思い込み」。
たくぼん 「見事な角と銀の回転趣向。推理将棋では貴重でしょう。」
■です。しかも15手で収まってますからね。
諏訪冬葉 「角の後を追う銀の動きが楽しかった。」
■くるくる推理将棋と言うにはちょっと難しすぎますか、残念。
平井康雄 「先手が4筋を使わないのなら、必然的に先手方8手は決まってしまう。後手方も42銀と72銀が決まりで、後は4回連続で動く駒は何か?という問題が残るだけ。結局左銀しかないとなると、上記の手順となります。3回目と4回目はもと居た場所に戻るだけですが、条件には合っているのかな?『円舞』というのは角と銀の動きのことですね。」
■4連続着手が全て異なる地点というだけなのでそれとは別に着手する手と場所が重複するのは問題ありません。
ron 「たくさん条件があるので、すぐに手順を限定できそうですが少し悩みました。銀の回転する様が面白いですね。」
■手順の本質部分はちゃんと考えないと出てこない作りになっていますからねえ。
占魚亭 「自信ありません。おそらく間違っていますね。」
■いえいえ、合ってますよ。解答が正解かどうか自分でわかるのも推理将棋の良さの1つなのですけれど。
隅の老人B 「残念、先手の王への王手が分らない、解答が楽しみです。」
■これも王手条件絡みの誤解でしょうか。仮に平井さんと同じ勘違いでも先手玉への王手というのがどこから出てきたのか……。
正解:17名
S.Kimuraさん 斧間徳子さん KGさん 朱さん 鈴川優希さん
諏訪冬葉さん 占魚亭さん たくぼんさん NAOさん はなさかしろうさん
はらたっとさん 平井康雄さん 星の平原さん 宮谷保可楽さん 妙高仙人さん
ronさん 渡辺さん
総評
渡辺 「今回は解答者に優しい問題でした。」
■上級は人によっては厳しいかな、という感じもありましたが。
はなさかしろう 「易しくて解き心地の良い短編を作るのはなかなか難しいと思うのですが、さすがの初級問題。練習問題もいつも楽しみなのですが、時々うっかり答を見てしまって後悔したりしています。中級は条件、上級はモチーフと、今回は見どころのバラエティを楽しみました。」
■そうそう、練習問題の投稿もお待ちしています。
はらたっと 「珍しく早くも回答します。3問目は手数は長いですが条件を当てはめたら、あっという間でした。」
■私も解答者履歴を見ていて、「あ、はらたっとさんが今回早い!」と思っていました(笑)
NAO 「作品ストック少ないようですので投稿したいとも思いますが、気の利いた短編はなかなか作るのが難しいですね。どうしても条件盛り盛りになってしまって・・・」
■私もNAOさん作は使ってみたいのですがいかんせんNAOさん作は高度すぎて……。
星の平原 「はじめての完答です。今回中級は追加ヒントに頼りましたので、次は追加ヒントなしでの完答を目指します。」
■おめでとうございます。次もぜひがんばってください。
鈴川優希 「今回も時間がなく、結局ヒント待ちとなりました。次回こそは……って、これを言うのは何度目か。(笑)」
■このところ少し難しい問題が続いていますからねえ。簡単な問題の在庫が……。
宮谷保可楽 「DD++さんの追加ヒントにいつも助けられています。感謝。」
■どういたしまして。
たくぼん 「ベテラン陣の活躍に期待ですね」
■ベテラン解答者たくぼんさんの活躍にも期待。
ron 「今回はどの問題も簡単に感じました。私もそろそろ解答ビギナーを卒業できたのかなーなんて、調子づいています。」
■これを簡単だと思えたのならビギナーなどとっくに卒業でしょう。
かめぞう「これから解答して行きたいと思います。」
■ぜひともお待ちしております。
推理将棋第56回出題全解答者: 22名
S.Kimuraさん 斧間徳子さん かめぞうさん KGさん けんけんさん
朱さん 鈴川優希さん 鈴木康夫さん 隅の老人Bさん 諏訪冬葉さん
占魚亭さん たくぼんさん NAOさん はなさかしろうさん はらたっとさん
平井康雄さん 変寝夢さん 星の平原さん 宮谷保可楽さん 妙高仙人さん
ronさん 渡辺さん
当選: はらたっとさん
おめでとうございます。
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