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推理将棋第63回解答(3)

[2013年2月28日最終更新]
推理将棋第63回出題の63-3の解答、第63回出題の当選者(桝彰介さん) を発表します。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。

関連情報: 推理将棋第63回出題  推理将棋第63回解答(1)  (2)  (3)
  推理将棋おもちゃ箱)  推理将棋(隣の将棋)  どんな将棋だったの? - 推理将棋入門


63-3 上級 渡辺さん作      歩と駒成         10手

「さっきの将棋34歩に対して成る手で応じていたよね」
「うん。3回目の成る手より後にも歩の着手があったよ」
「それで結局どうなったの?」
「10手目25の着手で詰んだよ」

さて、どんな将棋だったのだろうか?

(条件)

  • 10手目25の着手で詰み
  • 34歩に対して駒成で応じた
  • 3回目の駒成の後に歩の着手があった

出題のことば(担当 DD++)
   技巧者渡辺さんの本領発揮。

追加ヒント:
   条件の「34歩」に惑わされないように。後手が33の歩を突いたとは限りませんよ。


推理将棋63-3 解答  担当 DD++ Suiri633

▲7六歩    ▽3二飛    ▲3三角成  ▽同 飛
▲5八玉    ▽3七飛成  ▲3四歩    ▽7七角
▲4六    ▽2五角    まで10手

問題を読んで「ふむふむ3回成るってことは先手も成るんだな」「なるほどその駒成は後手が34歩と突いた直後か」「よしざっくり条件がわかったところで本腰を入れて……」と考えた方は多いのではないでしょうか。そう思われた方は私を含め、この時点ですでに渡辺さんの術中にハマっています。この罠に気づけるかどうかがこの上級問題最大の難所でした。

34歩を一度頭から消して考えてみましょう。この短手数で3回成るということは、それは常識的に先手角と後手飛角でしょう。ならば出だしは▲76歩△32飛▲33角成からが常道。いきなり△34歩が指せなくなりましたが無視して続けます。後手はあと4手指せますが最後は25の手。つまりその内容は△33同角△77(?)角成△37飛成△25角もしくは△33同飛△37飛成△77(?)角成△25角のいずれかなのでしょう。

さて残るは先手3手。まず△25角で王手をかけてもらうために▲58玉と▲46歩は必須ですね。そしてあと1手は……あれ、これで詰み? いえいえ、推理将棋はフェアリーの協力詰と同じく無駄合という概念はありません(※1)。つまり36歩合という抵抗が残っていたらこれでは詰みにならないのです。

これを防ぐには余っている1手で3筋のどこかに歩を打ち捨てればいいですね。さてどこに、と考えた所で最初に頭から消した条件を思い出しましょう。「34歩に対して」と見れば普通は△34歩と突いて先手が成ることを考えますが、しかし条件として「△34歩に対して」とは一言も書いてありません。つまり「この歩捨てで▲34歩と打って直後に後手が駒を成る」という形でも、確かに、間違いなく、与えられた条件を満たすのです!

あとは条件を満たすように順番を試行錯誤すれば終わりですね。一部の方々は最初からどうせ先手34歩だろうと決め打って楽に解いたようですが、この見事な罠にかかって撃沈した方も少なくなかったようです。

※1:というのを出題で補足すべきだったかもしれないとこの原稿を書きながら気づきました、申し訳ありません。どの道34歩は条件から必須なので余詰むわけではないのですが。)

それではみなさんの短評をどうぞ。

渡辺(作者) 「34歩には一応36歩の合駒を出来なくする意味があり、全くの無駄手ではありません。76歩、34歩、33角成、同角、68飛、55角、58玉、37角成、46歩、25角という作意と双子の紛れ筋があり駒成をどうやって一つ増すのかが課題。条件にわざわざ34歩とあれば怪しいのでこれの手番を変えてあげれば68飛--37角成が77角成--37飛成になって巧く駒成が増えるという仕掛でした。」

■34歩の意味を3筋からの後手飛出動余詰の阻止と思ってドロ沼にハマったのが私です。

橘圭伍 「これは先月の年賀詰より優しいですね。10手成3回ならこの出だし以外に幾つかしかないはず」

■このやり口をよく知っている方ならすぐ解ける場合も。

チャンプ 「条件を見た瞬間、怪しい(ひっかけだ)と感じました(笑)もし作意が▲76歩△34歩▲33角成で始まるのであれば、そんな回りくどい表現はしないハズなので34歩は先手の着手であろうと決め打ち。あとは一直線でした。」

■この出題順は何かなければありえない順ですものねえ。我ながら怪しさ満点。

NAO 「渡辺さんのお約束(先手に34歩を指させるミスディレクション)が入った難問です。『25着手の詰み』『成り3回』とは、過激すぎる組み合わせのため、逆に詰形が浮かびました。3手目に成らないと成り3回は難しいことに気づけくかどうかが鍵。」

■加えて、その角成で応手条件を満たすことを焦らないこともですね。

斧間徳子 「予期した通り、34歩は先手の着手でした。成不成を限定し手順前後を防止する巧みな条件付けが秀逸。」

■こういう条件付けの小技では渡辺さんの右に出る人はいないのではないかとすら思います。

妙高仙人 「34歩は先手だと決め打ち。この手数で3回成る順となると。それにしても巧みな条件。」

■見事ストレートに正解に迫りました。

はなさかしろう 「遊び手が含まれていそうでいない、奇妙な感触の手順。上級なので34歩のミスディレクションに警戒しつつ、第3条件からすると極めて派手な展開なのだろうし、先手の玉移動は最低一手は必要だろう、とすると、こんな感じ... 隠しテーマは、蛇の道は蛇?」

■やっぱりこの上級は露骨過ぎましたかね。

占魚亭 「25角までと決め打ちしていたので簡単でした。」

■決め打ちが必要なところはもっと別のところにあるような気がしないでもないですが……。

しまぎろう 「全てのタイミングがピッタリで驚きました!」

■針の穴を通すように成立しています。

はらたっと 「34歩が先手の手と分かればすぐなんだけど、ヒントが出るまでなかなか気がつかなかった。」

■それだけ渡辺さんが巧妙ということですね。

隅の老人B 「詰んでから条件を再読。うん、これで大丈夫。」

■ええ、解答前の確認は大事です。

はやし 「34歩が33から突かれたものではない → 先手が置いてみるとあとはすっきりでした。」

■大変お見事でした。

平井康雄 「10手の間に3回成るだけでも相当な難事。76歩、42飛、33角成、44歩、同馬くらいしか考えられないのだが、後5手の間に2回成って、34歩を打って、詰めるなんてとても無理っぽい。先手玉を動かせる余裕はほとんどないのに、それを25の手で詰めるなんて、全く思い至らず。ならばと、76歩、32飛、33角成、同飛、48玉、37飛成、同玉というのも考えたが、後3手ではどうにもならず。結局お手上げです。最終ヒントはもう少し具体的なのが欲しかったです。」

■34歩は先手着手、まで出すかどうか迷ったんですよね。正答者数を見るに、出しておけばよかったようです。失敗しました。

キリギリス 「降参。むずかしいです。」

■25角と離し打って詰み、というのは慣れないと思いつくのは大変。

たくぼん 「34歩の条件が巧すぎる。そして全てが繋がる素晴らしさ」

■ミスディレクションの巧妙さとして屈指だと思います。

やまかん 「34歩の条件がしっくりこないので解後感はあまりよくない。」

■この手の問題はそこで好みが分かれます。

S.Kimura 「ヒントを見て,意味が良く分からないまま,先手が34歩とする方法をあれこれ考えたら,答えが見つかりました.最初は無駄な手なのかと思っていましたが,ちゃんと必要な手になっていて驚いています.」

■最後が36角だったらただの無駄手なのに、不思議な感触です。

テイエムガンバ 「推理将棋において7手目の▲3四歩、のようなミスディレクションはよくある、とわかっているはずなのに見事に引っかかってしまいました。」

■私も同じく……。

諏訪冬葉 「▲76歩△34歩▲33角成△同角▲58玉△15角▲68金△37角成▲46歩△25角という手順が思い浮かびましたが、成りは2回です」

■渡辺さんが挙げた双子の紛れ筋そのものですね。ある意味作者の狙いを正確に読み取ったと言えるのかも。


正解:16名

  S.Kimuraさん  斧間徳子さん  しまぎろうさん  隅の老人Bさん  占魚亭さん
  たくぼんさん  橘圭伍さん  チャンプさん  テイエムガンバさん  NAOさん
  はなさかしろうさん  はやしさん  はらたっとさん  妙高仙人さん  やまかんさん
  渡辺さん

  やまかんさん  渡辺さん


総評

橘圭伍 「今月は非常に楽でした。単純な展開程難しい!?」

■手数の長さを苦にしない+ミスディレクションを見抜ける人には今月はボーナスステージ。

チャンプ 「年賀推理将棋第2弾は3作とも歩がテーマでしたね。また来月も楽しみにしております。」

■私はなぜか無意識に歩絡みの問題を3つ並べることが多いようです……。

NAO 「年賀詰の後半戦は、手数の割には解きやすい問題でした。昨年後半は手が見えなくなり苦戦続きでしたが、これをきっかけに復調としたいと思います。」

■問題投稿の方もぜひよろしくお願いします。

はなさかしろう 「Happy New Year(旧暦)! 先月は寝正月で送信しそびれたので、今月こそ、と。来年は...14手で馬がテーマ!? 難問が並びそうで、早くも恐ろしいです(笑)」

■14馬まで、26馬まで、馬で26手(!?)、いろいろありますね。さて簡単なのはどれでしょう。

しまぎろう 「初解答させて頂きます。しまぎろうと申します。推理将棋はとても面白いので来月も解答します。これからよろしくお願い致します。」

■来月はかなり難しい出題になりますが、解答お待ちしています。

はらたっと 「ほとんど一本道の問題が、2問共に脇道に反れました。一筋縄にはいかないですね。」

■プラスに考えれば、その問題を紛れまで楽しみ尽くしたということで。

隅の老人B 「2月末、我が家の庭の紅梅が開花宣言。それを窓越しに眺めながら推理将棋を考える。風流? いいえ寒さに負けて外出しないだけ。はやく暖かくならないかなぁ、です。」

■暖かくなるとさらに外出したくなくなる、花粉症持ちな担当です。

はやし 「最近は本誌が難しく、おもちゃ箱の直前ヒントがないと解けない!」

■おもちゃ箱はヒントで難度調整できるので選題者としてもありがたいですね。

桝彰介 「難易度と逆に、上級の方が条件だけで年賀詰めと分かりやすいのが面白いです。初級と中級は会話文がないと、どこが年賀詰めか分かりません。」

■一方で、会話があってこその推理将棋という考え方もあります。実際にパラなどでは会話文だけですしね。


推理将棋第63回出題全解答者: 21名

  S.Kimuraさん  斧間徳子さん  キリギリスさん  しまぎろうさん  水狂さん
  隅の老人Bさん  諏訪冬葉さん  占魚亭さん  たくぼんさん  橘圭伍さん
  チャンプさん  テイエムガンバさん  NAOさん  はなさかしろうさん  はやしさん
  はらたっとさん  平井康雄さん  桝彰介さん  妙高仙人さん  やまかんさん
  渡辺さん

当選: 桝彰介さん

おめでとうございます。
賞品をお送りしますので、賞品リスト から選んだご希望の賞品と送付先をメールでお知 らせください。

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