[2013年3月28日最終更新]
推理将棋第64回出題の64-3の解答、第64回出題の当選者(隅の老人Bさん)
を発表します。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。
関連情報: 推理将棋第64回出題 推理将棋第64回解答(1) (2) (3)
推理将棋(おもちゃ箱) 推理将棋(隣の将棋) どんな将棋だったの? - 推理将棋入門
64-3 上級 渡辺秀行さん作 4箇所着手3局 (C) 25手
64-1と同じ会話文
(条件)
- 25手で詰んだ
- 着手地点は4箇所
- 「同」と付く着手が5回あった
- 不成はなかった
- 18、20、22手目の着手駒は順に「角」「金」「角」
※「5回あった」は過不足なく5回です。6回以上あってはいけません。
出題のことば(担当 DD++)
4箇所着手の詰手順のうちこの順以外にはまず存在しない特徴があります。
追加ヒント:
着手する地点のうち3箇所は、32、33、76。しかしあと1箇所は42ではありません。
32と33に「と金」を往復させながら形を作り、▲32龍▲33角で合い効かずの詰み。
この「と金」を作るためには最初の6手は……。
推理将棋64-3 解答 担当 DD++
▲7六歩 ▽3二飛 ▲3三角成 ▽同 飛
▲3六歩 ▽同 飛 ▲3三歩 ▽7六飛
▲3二歩成 ▽3三桂 ▲同 と ▽3六飛
▲3二と ▽3三飛 ▲同 と ▽3二銀
▲同 と ▽3三角 ▲3六飛 ▽3二金
▲3三飛成 ▽7六角 ▲3二龍 ▽3六歩
▲3三角 まで25手。
この問題は前の問題があるが故に難問です。前の2門での思考をそのまま引き継ぐと永久に正解には近づかないのです。詳しく見てみましょう。
ポイントは同の手の回数。前の2問を見ると、64-1では17手で同の手5回、64-2では20手で同の手6回。着手可能地点数が少ないのですから当然ですね。では25手でこの問題は同の手が何回使えるかというと、なんとわずかに5回。これは「初手76歩、2手目以降は3地点」という条件内では困難、というより実は不可能。そこに見切りをつけて前2問で考えた「76にはもう着手しない」という常識を捨てて、初めてこの問題のスタートラインに立つことができるのです。
もちろん75歩なんてできませんから76再着手のためには後手が大駒でこの歩を取りに来るのでしょう。多くの人が最初に思いつくのは「▲76歩▲33角成▲43馬からの△43角△76角」でしょうが、これは後手の2手目4手目が指せません。「▲76歩▲33角成▲32馬からの△44歩△32角△76角」も4手目に王手対処ができないのでダメ。
正解は角ではなく「▲76歩△32飛▲33角成△同飛△36飛△76飛」と飛で取りに行くパターン。これなら序の手詰まりを起こすこともありません。実質32地点と33地点だけで後手玉を詰められるものか怪しく思えますが、21桂22角31銀41金を全て処分してから▲32龍▲33角で、後手に合駒がなければなんとか詰ますことができます。この形を25手で目指してみましょう。
5手目7手目は「▲76歩△32飛▲33角成△同飛▲36歩△同飛▲33歩」とするしかありませんね。ここから先手は駒を取りまくるわけですが、33地点で取るのは飛角桂の3枚で32地点で取るのは金銀2枚。よって33地点で取らせる飛桂、特に飛を取らせることを急ぎましょう。つまり8手目からは「△76飛▲32歩成△33桂▲同と△36飛▲32と△33飛▲同と」。16手目は銀を捨てる最後のチャンスなので「△32銀▲同と」と続きます。
残りは先後各4手なので、先手は「▲36飛▲33飛成▲32龍▲33角」ですね。後手は「△33角△32金」を指して後は持ち駒の角を捨てればいいだけ。△36角と捨てると24手目に指せる手がないので、「△76角」と捨てて24手目は「△36歩」で手パス。これで持ち駒は歩しか残らないので▲33角に対処できる手段は消えて詰みになります。
それではみなさんの短評をどうぞ。
斧間徳子 「76、32、33、36の4箇所はいかにもそれらしいと思っていたが、「同」の付く手を5回に収めるのが難しい。作意順は17手目までに「同」の手を5回使い果たしてしまうので不利感がある。特に後半の手順が巧妙に限定されているのに感心させられる力作。」
■終盤は4箇所使えるので同の手が必要ない、と気づかないと中盤の手順にものすごい抵抗がありますよね。
はなさかしろう 「中間ヒント、何かの間違いではないかと思ったのですが...斧間さん解いてるし...仕切り直して漸く発見。馬を取られても36歩で手が続くとは! そして更に、76飛!! なるほど手数の割に同を減らせるわけですね。飛車の威力、本シリーズの白眉でした。」
■薄氷を踏むが如しの手順の連続性です。本当によく見つけたものだと感心するばかり。
NAO 「4カ所着手としては42を使わなくても詰むのも衝撃でした。必然の初手76歩の後、使い道がなさそうな76をあと2回も使えるんですね。「同」5回と、角金角の手順指定により巧く限定してます。」
■42を使わないどころか玉に隣接するマスがなく、しかも先手陣側2箇所というのはこの上なく奇抜。
チャンプ 「条件に解答手順を合わせるのが大変(面倒)な問題でした。条件のスマートさに欠けるのはやはり気になりますが、手順が手順なだけにこの程度は致し方ないところでしょうか。意見が分かれるところではありますが、この作に関しては作者&担当の余詰め検討の苦労を評価したいと思います。お疲れ様でした。」
■25手でこの条件は充分スマートだと思います。少なくとも、過剰にスマートさにこだわって余詰むよりははるかに良い条件付けでしょう。
橘圭伍 「四カ所使い切る展開が見事。最初7手と後半8手が固定の実質9手何ですが32で「と」を処理する手順を見落として苦戦しました」
■33で処分する方が自然そうに見えますものね。
諏訪冬葉 「「この順以外にはまず存在しない特徴」と聞いて真っ先に「76に歩以外の手を入れる」という構想が浮かびましたが、44歩や43馬から32角で狙うのは無理そうなので一度挫折。3手目の角成は取るしかなさそうなのでその後続けられる手順を考えて36歩にたどり着きました。これで最初の構想の「76歩を取る」も解決。」
■なんとなく仄めかしただけにとどめたのですが、よくぞそこを信じて進んでくださったのものです。
占魚亭 「と金の消し方と飛車の打ち場所に苦戦しました。」
■33とと捨てて32飛、も有力。
S.Kimura 「直前ヒントからすると,32(33)と36の間で龍が行ったり来たりしそうですが,詰む形まではたどり着きませんでした.正解を楽しみにしています.」
■後手飛が36から横へ飛ぶのが正解でした。
鈴木康夫 「後手76飛など誰が予想したでしょうか。」
■私も、76角は考えたことはあったのですが、76飛はこの問題を見るまで想像の埒外でした。
キリギリス 「最初の6手はヒントで分かったのですが、その後の差し手が分かりませんでした。」
■その36同飛がただ「と金」を作るためだけの手なわけがない、と考えると……というわけでした。
妙高仙人 「と金作りはすぐに見えるが、「同5回」が全然クリアできない。ギブアップです。」
■76地点開放で終盤の同の手を回避するのです。ここを明示したら面白くなくなるということであからさまなヒントにはしませんでしたが。
(参考)
鈴木康夫さんが全検を行なって、以下の情報をくださいました。
> 4箇所着手で詰む位置の組み合わせは11通りあります。
> 34 77 68 18 最短20手 例)今回の2の類似
> 34 77 68 28 最短20手 例)今回の2
> 34 77 68 38 最短20手 例)今回の2の類似
> 34 77 68 69 最短18手
> 34 77 68 79 最短16手 例)詰パラ2月号吉田さん作
> 76 33 42 41 最短17手
> 76 33 42 72 最短19手 例)先後逆の類似
> 76 33 42 92 最短19手 例)先後逆の類似
> 76 44 42 53 最短17手 例)今回の1
> 76 33 32 36 最短25手 例)今回の3
(「11通り」は「10通り」のカウントミス?)
今回の投稿は「3組とも先後逆形では成立しない位置」ということでの投稿だったのですが、全検の結果によればその条件を満たすのはパラの吉田さん作とこの3組だけ。渡辺さんの手順発見力に脱帽です。
正解:8名
斧間徳子さん 鈴木康夫さん 占魚亭さん 橘圭伍さん チャンプさん
テイエムガンバさん NAOさん はなさかしろうさん
総評
斧間徳子 「4箇所着手問題を堪能しました。興味深いテーマですが、レベルの高い今月の3題でほぼ出尽くし感があり、これに続く作品はあまりなさそうですね。」
■5箇所着手でも面白い手順は多数あり、短手数で出しやすいこともあるので今後はそちらにシフトしていく感じになるでしょうか。
はなさかしろう 「中間ヒント、ナイスです! ヒントなしには一問も解けませんでしたが、ここまでスケールが大きい解が揃うと、さっぱり気持ち良く脱帽です。定番の4地点(76,33,41,42)以外の組み合わせもあるかも...と、おぼろげには思っていたのですが、こんなにバリエーションがあるとは! いやぁ、凄かった。適切な賛辞が見当たりません^^」
■担当は当然ノーヒントで最後まで挑むことになるのでぐったりでした。
NAO 「これまでの最難問集でしたね。しかもいずれも傑作!4箇所着手問題は、十分予備知識があるつもりでしたが、いずれの問題も4カ所の着眼点がずれてました。中間ヒントに大感謝。的が絞れました。」
■逆に予備知識が柔軟な思考を妨げたのかもしれませんね。
チャンプ 「3作とも作意手順に意外性が十分あり、推理将棋慣れしている方でもかなり手を焼いたのではないかと思います。逆に言えば推理将棋を始めたばかりの方には手を出し難いのが楽に想像できたので、繰り返すようですが条件の付け方には工夫が欲しかったです。3作とも解けた後の喜び、楽しさ、感動といった類いが全く無く、疲労感だけが残りましたので推理将棋離れになる方が出ないかと勝手に危惧しております。流れからすると来月辺りはそれなりに簡単な問題が並ぶと思いますので、新人の方にも楽しんで頂ける内容になることを期待しています。」
■「工夫」の方向はいろいろあります。チャンプさんがこだわるポイントだけが工夫の方向性ではない、というのはまた言えるかもしれませんよ。
橘圭伍 「1が個人的には一番好みですが、3番目が面白さでは一番ですね。こういう作品が出るなら思い付きで適当に話題を出してみるのもありですね」
■そういえばmixiでの4箇所着手問題の提起をしたのは橘さんでしたね。
しまぎろう 「今月は難しかったです。でもその分解けたときの感動も大きかったです!」
■そして解けなかった問題の解答を見て唖然とするのもまた推理将棋の楽しみ。
占魚亭 「今月は難問ばかりで大変でした。」
■これで中間ヒントなしだと悲惨なことになっていたでしょうね。
隅の老人B 「推理将棋を解いて思うこと。よくもまあ、こんな手順を見つけて、更にこんな条件を考えるものだなぁ、です。解いている爺さんは全くの暇人だが、創り手の方もかなりの暇人? 失礼、御免。」
■私はふと手が空いた数分を利用して余詰検討をちょっとずつ進めたりもします。他の方はどうなんでしょうね。
S.Kimura 「今回はどう考えて良いのか皆目見当が付かず,直前ヒントまでもらっても,とても難しかったです.4箇所着手と言っても,実質的に3マスしか使えないので,本当に手詰まりになりやすいですね.」
■3に至ってはその考えのままで行くと本当に手詰まりになるという。
妙高仙人 「推理将棋の可能性を広げる素晴らしいテーマだと思う。」
■他に似たような条件は何があるでしょうね。「最低何種類の駒を」は明らかに歩1種だけで、類似手順がすでに出題されていますし。
最後に1つ宣伝です。今年も Fairy TopⅨ の投票が行われる季節になりました。Fairy TopⅨ とは、1年間に web 上で発表されたフェアリー詰将棋・推理将棋の人気投票企画です。本コーナーで出題された作品ももちろん投票対象ですので、2012年出題の作品で気に入ったものがあればぜひ投票をお願いします。詳細は Web Fairy Paradise のサイトへ。不明な点がありましたらたくぼんさんまでどうぞ。
推理将棋第64回出題全解答者: 16名
S.Kimuraさん 斧間徳子さん キリギリスさん しまぎろうさん 鈴木康夫さん
隅の老人Bさん 諏訪冬葉さん 占魚亭さん 橘圭伍さん チャンプさん
テイエムガンバさん NAOさん はなさかしろうさん はやしさん
はらたっとさん 妙高仙人さん
当選: 隅の老人Bさん
おめでとうございます。
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