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推理将棋第64回解答(2)

[2013年3月27日最終更新]
推理将棋第64回出題の64-2の解答です。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。

関連情報: 推理将棋第64回出題  推理将棋第64回解答(1)  (2)  (3)
  推理将棋おもちゃ箱)  推理将棋(隣の将棋)  どんな将棋だったの? - 推理将棋入門


64-2 上級 渡辺秀行さん作    4箇所着手3局 (B)   20手

64-1と同じ会話文

(条件)

  • 20手で詰んだ
  • 着手地点は4箇所
  • 終局図で初期配置と比較して先後の向きのみ逆になっている駒があった
  • 先手は後手の成る手を「同」と取り、その駒を打ち、直に後手に「同」と取られ、
    その後その駒は先手が取ることはなかった。
  • 先手は同種の駒を4連続で着手した。

出題のことば(担当 DD++)
 先後ひっくり返しただけで先手玉の詰みに役立ちそうな駒は限られますね。

追加ヒント:
 着手する地点のうち3箇所は、34、77、68。しかしあと1箇所は69ではありません。
 飛車の往復で形を整えながら△68銀までを目指します。
 先手の左銀を取らせることを急ぐと銀の手4連続が指せなくなって失敗。


推理将棋64-2 解答  担当 DD++ Suiri642

▲6八飛    ▽3四歩    ▲2八飛    ▽7七角不成
▲6八飛    ▽同角    ▲     ▽2八飛
▲7七    ▽6八飛不成▲2八    ▽同飛不成
▲6八    ▽同飛不成  ▲2八    ▽飛不成
▲6八金    ▽7七銀    ▲同 金    ▽6八銀  まで20手

本問、問題を見た瞬間面食らった方も多いでしょう。何しろ条件がとても長い! しかしこれは長編(17手くらいから?)の推理将棋にはついて回る宿命なのです。解説の前にその点について少々。

詰将棋と異なり王手義務のない推理将棋では長ければ長いほど手順前後の数が爆発的に増大します。もちろん条件をつければいくらでも制御できるという点は強みではあるのですが、しかしその条件が綺麗に収まることは非常に稀。従って制作者は「簡素だが多数の限定条件をつける」「少数だが長く複雑な限定条件をつける」「紛れも多数消えることをやむなしとして強い条件で一気に縛る」「その狙いでの作問自体を諦める」あたりからうまく落とし所を見つけねばなりません。

しかし、長編の出題数はmixiのコミュニティでさえも少なく、ちゃんと解答募集が行われたものとなれば指折るほどしか前例がありません。長編の困難の落とし所を探るための経験値が推理将棋界全体としてあまりにも不足しているのです。今回もこの条件の長さは気にかかるところがありましたが、解答者の反応が今後の長編推理将棋制作の共有財産になるだろうと考え、本問の採用出題に踏み切りました。

さて前置きはこれくらいにして、問題の解説を。前問とは先後が逆転しました。しかし、大筋は変わりません。「2手目34歩以外は3地点だけ」「最終手は駒打ち」という性質は本問にもついて回ります。

加えて先後逆になった駒という条件がありますが、△79銀+△68龍は明らかにありえず、△68飛+△69金も少し調べるのに手間はかかりますが成立しないことがわかります。よって△28飛+△68金(銀)の形のみが候補ですね。これに34と77を加えた4地点が今回の着手可能地点です。

まず初手と3手目を28と68でどうにか指さなければいけませんので「▲68飛△34歩▲28飛△77角不成▲68何か△同角成▲同何か」という出だしになります。ここで5手目に飛金銀どれを渡すかですが、ひとまず先後交互ということを忘れると、どうやら飛を最初に渡して「▲68飛△34歩▲28飛△77角不成▲68飛△同角成▲同銀△28飛△68飛不成△28飛不成▲68金▲77金△68銀」という流れを目指すのが最も効率がよさそうですね。これをベースにあと7手、手パスを入れましょう。

△28飛の次の9手目ですが、着手地点は77しかありませんね。▲77桂では以後ここに着手できなくなるので▲77銀▲77角▲77角打の三択。10手目△68飛不成を経て11手目は28に着手するしかありません。▲28銀▲28角の二択。12手目△28同飛不成と戻った所で問題発生。77に駒があるので今度はこれを処分しなければなりません。▲68何か(77から)△同飛不成として、もう一度28に戻すため▲28何か(11手目で指さなかった方)△同飛不成、これで16手。先手はあと金の手2回を残すのみなので、同種駒4連続着手は7~13手目で銀の手4連続を作るしかなく、それでここは全て限定されます。

あとは18手目ですが、中盤の手パスで銀は1枚余計に入手したので、これを77に打ち捨てればちょうど手パスになりますね。例の長い条件を確認すると、5手目に成った駒を6手目に同と取るのを最初にそれとなく行なっておきましたが、それを15手目に打って16手目に同と取られ、18手目に打たなかったので先手が取り返すこともなく、条件を満たしていることが確認できました。

それではみなさんの短評をどうぞ。

斧間徳子 「逆向きの駒としてまず28飛を考えるので、今月の3題の中では一番易しかった。条件文に作者の苦心が感じられます。」

■私なら条件数が増えても細切れにするのですが、はてさてどちらがいいのやら。

はなさかしろう 「なるほど、逆向きと来ましたか。余詰を防ぎつつヒントになる好条件。山ほどある手順前後を仕切る付帯条件付けも相変わらず精妙で溜め息。。」

■余詰防ぎというか、向きだけ逆という駒が残る手順は実はこれしかないんですよね、意外にも。

NAO 「逆向きの駒は最初69金を想定してしまい、苦戦。中間ヒントで28飛とわかってからも同種駒条件が結構難しい。」

■私も69金は少し考えさせられました。最後が「△68飛(駒打ち)▲77の手△69金」になるんですが、これだと可能な16~17手目は「△77の手▲69桂」のみ、ではその前は、と逆算していくと破綻します。

チャンプ 「大変申し訳ないのですが、これもかなりの酷評になります。まず、条件の文章が長すぎます。解答者に対して条件を理解してもらおうという工夫がまるで感じられません。手順を限定させるためとはいえ、ここまで長文化せざるを得ないのであれば投稿自体を控えるべきだと思います。初投稿の新人作家ならまだしも、ベテラン作家であれば尚の事です。それなりに作意手順が面白かっただけに残念に思います。」

■この長文条件の是非はすぐに結論が出るものではないのでひとまず脇に置き、この場で確実に言えることを1つだけ。難がある作品でも投稿を控える必要はありません。それが出題に値するかを判断するのは担当の仕事です。多少の難があってもちゃんと面白さがある作品はぜひ拝見させていただきたく。あるいは「投稿を目指しているのですがアドバイスください」という形でも構いませんし。

橘圭伍 「自由度が高そうなので創作は一番大変そうです。」

■4箇所着手の中では一番非限定数は多いですね。

諏訪冬葉 「逆向きの駒は銀だと思ったが意外に手が続かないので飛車を使ったらできた。」

■その4地点だと△77銀▲79玉△68金の形にしかならず失敗です、おしい。

占魚亭 「先手が銀は取れることに気付くまで1週間。金も取るものだとばかり思っていました。」

■確かに飛車が2往復しますが、金銀を取らせると77に角が残って困るんですよ。

隅の老人B 「4手目の角生を条件付けるのに作者は苦労した?」

■9手目▲77角で13手目▲68角とする順、18手目△77角とする順、などもありますし、苦労したでしょう。

はやし 「これも直前ヒントに助けられました。飛車の往復は言われないと気付けない。」

■どの手順も攻め方が駒を往復しながら守備駒を消すしかないのです。77と68の往復が望めないのでこの問題ではここしかないのですね。

S.Kimura 「同じ駒を4回連続と勘違いして行き詰っていました.金を68で取って詰ませるのかと思っていましたが,77まで動かせばよかったのですね.」

■同種駒(同じ種類であれば別の駒でもよい)と同じ駒(物理的に同じ1枚の駒)は思い込みによる勘違いが一番発生しやすい条件かもしれません。

キリギリス 「前半は先手の駒として、後半は後手の駒として、同じ区間を往復するのが不思議な感じです。」

■これは本当に4箇所着手ならではの感覚だと思います。

妙高仙人 「素晴らしい手順だが、条件がやや煩雑。精査していないが、19手でシンプルに表現できそうだが。」

■渡辺さんは72か92を使えば19手でも可能なことを知っていてあえて20手にしたそうです。ちなみに19手の場合は……

妙高仙人「あえて20手にしないのなら、同じ狙いで、これで限定できている気もするが。」
・19手で詰んだ
・着手地点は4箇所
●成る手なし
●先手の打った駒は2種類だけ
・後手は同種の駒を4連続で着手した。

■同種駒4連続が厳しいので、これでいけてそうです。21手だと玉を4連続で着手する順がありますが、19手だと他には不可能そう。いずれにせよ渡辺さんの狙いからは外れますけどね。


正解:15名

  S.Kimuraさん  斧間徳子さん  キリギリスさん  しまぎろうさん  鈴木康夫さん
  隅の老人Bさん  諏訪冬葉さん  占魚亭さん  橘圭伍さん  チャンプさん
  テイエムガンバさん  NAOさん  はなさかしろうさん  はやしさん  妙高仙人さん

(当選者は全題の解答発表後に発表)

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コメント

最初にざっと見て攻方69金-68飛の詰め上がりが第一感で、次はレトロ解析を...と思いつつも64-1を優先、こちらで飛車の筋を使おうと四苦八苦するうちにヒントが出て...という流れでした。逆向き駒条件を精査すれば飛車の往復の筋が導ける(はず...笑)ということで、解法の指針を条件に織り込んでおられるのですね...私の力では読み解けませんでしたが(^^ヾ

投稿: はなさかしろう | 2013.03.27 23:19

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