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推理将棋第66回解答(3)

[2013年5月29日最終更新]
推理将棋第66回出題の66-3の解答、第66回出題の当選者(斧間徳子さん) を発表します。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。

関連情報: 推理将棋第66回出題  推理将棋第66回解答(1)  (2)  (3)
  推理将棋おもちゃ箱)  推理将棋(隣の将棋)  どんな将棋だったの? - 推理将棋入門


66-3 上級 橘圭伍さん作     逃避行!?        27手

A「41金同飛42金同銀61銀成迄27手で詰んだ将棋はどうだったの?」
先手「一つの駒で3種類計9枚の駒を取って駒得になったから勝ったと思ったね。ただ、5筋で駒を取る事はなかったね。」
後手「1段目に2回だけ着手したよ。」
A「駒は何回打ったの?」
先手「丁度3回だけだね。王手も同じ回数だったよ。」
A「まだ、分からないなぁ。」
後手「一局を通して、金の着手は同じ筋に2回だけだったし、歩の着手も同じ筋に2回だけだったよ。」

(条件)

  • ▲41金△同飛▲42金△同銀▲61銀成 迄27手で詰んだ
  • 先手は一つの駒で3種類計9枚の駒を5筋以外で取った
  • 駒打ち及び王手はそれぞれ3回だけだった
  • 金の着手は同じ筋に2回だけだった
  • 歩の着手は同じ筋に2回だけだった
  • 後手の一段目着手は2回だけだった

出題のことば(担当 DD++)
 条件数が多いのは、裏を返せば手がかり豊富ということでもありますね。

追加ヒント:
 先手馬は最終的に推理将棋の馬の定位置43地点へ。
 71で銀は取りにくいので△72銀と馬の経路上に後手から差し出すのがポイントです。


推理将棋66-3 解答  担当 DD++ Suiri663

7六歩    ▽6二玉    ▲3三角成  ▽7四歩
2三馬    ▽7三玉    ▲4一馬    ▽8四玉
6三馬    ▽9五玉    ▲7四馬    ▽4二飛
8三馬    ▽7二銀    ▲同 馬    ▽8四玉
6一馬    ▽7三玉    ▲4三馬    ▽6二玉
7二銀    ▽5一玉    ▲4一金    ▽同 飛
4二金    ▽同 銀    ▲6一銀成  まで27手

27手の長編、とはいえ最後が5手も明かされています。落ち着いて考えてみましょう。先手の手番は14回あります。うち9手が角(馬)での駒取り、41金と42金は駒打ち、また銀を打ってからの61銀成も必要。初手76歩を加えて、これで先手の全14手です。

取る駒はまず打つために金が2枚。銀も打つ必要がありますが左銀は残さないといけないので銀は右銀を1枚だけ。そして残り1種類で6枚取れるのは歩だけですね。5筋禁止かつ端歩は取りにくいとなれば234678筋で6枚。このうち条件から73歩は74へ移動、残りの歩5枚と金2枚は不動のまま取ることになります。33→23→41→63→74→83→61→43の順で金2歩6を回収し、その途中で71から動いた銀も拾うルートはすぐに見えますね。

さて、それで玉はどこで詰ませてもらえばいいのでしょう? 61銀成で詰むのですから51か62か71ですが、ここは41同飛42同銀の壁作りを信用して51と決め打ちましょう。すると、仮に王手を無視するとして、後手が13手使って指さなければいけない手は、△42飛△41同飛△42同銀と銀を渡す△72銀、そして条件合わせの△74歩、あとは……あれ、これだけですね。なんと8手も余りました。そしてこの8手がこの問題の最大の見所です。

するべきことは全力で王手回避。しかも▲41金▲42金▲61銀成が3連続王手ですから、王手に対処するのではなくそもそもの王手をかけられないための早逃げになります。▲41馬▲63馬▲74馬のあたりでもはや逃げ場がないように見えますが、そこは8手という手数を活かしましょう。8手ということは4マス先との往復が可能。馬が後手陣を蹂躙している間に玉は95へ一度脱出し、何事もなかったかのように51に再度現れれば万事解決。まるで串刺しイリュージョンを見ているようですね。

なお、姉妹作の「右往左往!?」(Web Fairy Paradise 第59号にて解説されています)は、ほとんど同じ馬の軌道に対し61や41で馬をやり過ごす手順でした。こういう狙いを表現する問題は長編作家橘さんならではですね。

それではみなさんの短評をどうぞ。

橘圭伍(作者) 「条件を単一で見るのでなく何個も組み合わせて見る楽しさを味わって頂ければ幸いです。」

■確かにそれが多条件の長編ならではの楽しみ方ですよねえ。

NAO 「条件が多いが後半の条件はヒントと受けとれば解きやすい。mixi出題時に再三別手順を解答し、実は条件増やしには貢献していましたね。」

■何回条件修正入りましたっけ。

斧間徳子 「最初は、後手玉が53歩の回り一周するのかなと思ったが、端までの往復散歩がテーマでした。テーマがはっきりしており、論理的に考えやすい条件は(ちょっと冗長のきらいもあるが)好感。」

■53歩を一周は限定するのがかなり大変そうです。それでも橘さんならできるのかな?

はなさかしろう 「まず問題の焦点が見えてくるまでじわっと考えなくてはならないところは長編ならでは。しかし先手の馬の経路はほぼ自明。タイトル通り、後手玉の経路探索に集中できました。斜め一直線の往復が意外で美しいですね。」

■この玉往復が見えた瞬間、一気に高揚しますよね。

鈴木康夫 「三種の駒は金銀歩なのは明らか。初手と最終手と打つ手以外は駒取りなのも明らか。詰上がり51玉43馬型なのもほぼ自明。王手3回は最後の3手なのもやはり自明。後は馬の一筆書きを見つけるだけなのですが2手目42飛の紛れにはまって苦労しました。42飛は後でも良いと解ったらすぐに解けました。タイトルが潜在意識にヒントをくれていたのかも。」

■馬の追っ手は足が速いですから、一も二もなく玉の脱出なのです。

渡辺 「論理的に解けたのでこれが最も楽でした。私もこういう中長編が作れるようになりたい。」

■後半は全くもって同意です。

渡辺 「金の手2回は明かされた以外ないので、2回とも打。自陣銀が61に成るのも無理があるので銀打あり。後手の銀は1つ取られていないから、先手の取った駒は歩6銀金2。先手の手は明かされた3手以外は76歩、銀打、88角で9個の駒取。41と61の金は動かずに馬で取られるから玉は一度玉座を退く必要があり、後手の1段目の着手は明かされた手と51玉のみ。詰上がりは先手43馬61全、後手51玉41飛42銀。あとは明かされた以外に王手がないことに注意して前後から手を埋めて行けば15手目くらいのところで繋がります。」

■渡辺さんは短評とあわせて完璧な論理解をくださいました。お見事。

諏訪冬葉 「3手目から21手目までの10手で駒を9個取って銀を打つ。相当の制約だったのでほぼ一本道で決まりました。」

■手数に尻込みしないかどうかが実は最大の障害。

チャンプ 「最終の10手程は瞬時に解っていたにも関わらず2手目を42飛しか考えていなくて解答が大幅に遅れました(苦笑)後手着手の無意味さが面白いと感じました。」

■ここまで大掛かりな無駄手は他の問題では……探せばあったりするのかな?

たくぼん 「右往左往!?と対を成す手順で楽しめました。一直線で95に逃避行する玉に哀愁を感じます。プルーフゲームのような感覚のする作品でした。」

■逃避行しても戻ってくるお茶目な玉将。

はらたっと 「先手の手は簡単。他の条件は後手の手を限定するためと思いつつ1段目2回で大幅に修正。まさか95までいくとは、、、」

■71玉や41玉で退避できれば楽なんですけどね。

キリギリス 「先手の指手は21手目の銀を打つ場所以外は確定ですが、後手玉の95まで行って帰ってくるというのは思いつきにくかったです。」

■手順のキモはそう簡単には見つけさせてくれません。

隅の老人B 「王と馬とで、逃げたり追いかけたりのラブゲ-ム。最後は古巣でハッピ-エンドの物語。」

■そんな古物語、どこかにありそうですね。

占魚亭 「ギブアップです。後手一段目着手2回という条件をクリアできません。」

■後手陣内でどうにかしようと奮闘されたのでしょうかね。

S.Kimura 「推理将棋はいつも暗算で解くのですが,この問題のように条件が多いと頭に入り切りません.今回も結局解くことができませんでした.もっと長手数の問題に慣れる必要がありそうです.」

■条件数が多い場合、重要そうな条件だけ覚えて暗算でいくつか実現しそうな筋を探しておいて、その後条件を再確認して合致するものを選択する、という形を私はとっています。

テイエムガンバ 「先手馬の動きは問題を見て直感で読めましたが、その馬を動かすための後手玉の動かし方を考えるのに苦労しました。」

■この玉の動きまで直感で当てた人がいたら本当にすごいと思います。


正解:13名

  斧間徳子さん  キリギリスさん  鈴木康夫さん  隅の老人Bさん  諏訪冬葉さん
  たくぼんさん  橘圭伍さん  チャンプさん  テイエムガンバさん  NAOさん
  はなさかしろうさん  はらたっとさん  渡辺さん


総評

NAO 「初級の在庫不足とか。力になりたいが、短手数モノはほとんど作ってません。手数長くてもいいですか。」

■パッと見で手が出しやすくて実際に簡単なら長手数でもかまいませんよ。

橘圭伍 「今回は2作品だったので楽でした。初級製作は困難です。なかなかに」

■と言いながらも1つ投稿してくださいました。感謝。

はなさかしろう 「長編は見た目がいかつくてとっつきにくいのですが、とりあえずかじってみたところで見通しが良くなると俄然面白くなりますね。」

■これが長編を作る上で一番大事なことなのかもしれません。

鈴木康夫 「今月はどれもちょうど良い難易度で楽しめました。」

■今後の難易度調整の参考にします。

渡辺 「今回は上級、初級、中級の順に解けました。」

■短編に強い渡辺さんが、珍しいこともあったものです。

チャンプ 「初級問題は違う意味で難しいんですよね(笑)今回が今年最後の初級問題にならないように頑張って創作してみたいと思います。」

■客寄せはどうしても必要なので、どうしてもとなれば毎月担当作になっても初級出題は継続します。

しまぎろう 「今月は余り時間が取れませんでした。解答期間延長をお願い申し上げます。」

■17日間では短いですかね。毎月20日の締め切り直後に次回分を出題してほしいという声が多ければTETSUさんと相談してみます。賛成意見、反対意見、ございましたらコメントお願いします。

はらたっと 「今月は王様がよく動きました。」

■実は3題とも中段玉。上級はそこから戻りましたけど。

隅の老人B 「4月20日、名古屋は快晴、風も爽やか初夏来る。思い出した、今日は「おもちゃ箱」の推理将棋の解答締切日。ヒントを頼りに考える、それでも66-3で大苦戦。解けたような解けないような、そんな思いの解答です。」

■こちら豊橋も爽やかな初夏を迎えています。同じ県内ですから当然といえば当然ですか。


推理将棋第66回出題全解答者: 18名

  S.Kimuraさん  斧間徳子さん  キリギリスさん  しまぎろうさん  鈴木康夫さん
  隅の老人Bさん  諏訪冬葉さん  占魚亭さん  たくぼんさん  橘圭伍さん
  チャンプさん  テイエムガンバさん  NAOさん  はなさかしろうさん
  はらたっとさん  ひろぽんさん  やまかんさん  渡辺さん

当選: 斧間徳子さん

おめでとうございます。
賞品をお送りしますので、賞品リスト から選んだご希望の賞品と送付先をメールでお知 らせください。

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コメント

本問の場合は、途中まで論理が進んだ段階で、後の4つの条件は「今分っている以外****の手はなかった」に置き換えられるのです。なので条件の多さは気になりませんでした。

投稿: 渡辺 | 2013.05.29 20:27

5年ほど前に,出題日を早めることを打診したのは私です.
(推理将棋9-3解答 ( http://toybox.tea-nifty.com/memo/2008/03/post_cd3e.html )
 の「総評など」の項をご覧ください)
でも,皆さんは解かれるのが早いようで,当時は賛同が得られませんでした.

投稿: S.Kimura | 2013.06.01 21:08

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