推理将棋第69回解答(3)
[2013年8月30日最終更新]
推理将棋第69回出題の69-3の解答、第69回出題の当選者(チャンプさん)
を発表します。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。
関連情報: 推理将棋第69回出題 推理将棋第69回解答(1) (2) (3)
推理将棋(おもちゃ箱) 推理将棋(隣の将棋) どんな将棋だったの? - 推理将棋入門
69-3 上級 鈴川優希さん作 プライドの代償 11手
「昨日の将棋では、相手が角不成の手を指して挑発してきた。売られた喧嘩は買う、というのが私のやり方。互いに意地を張り続けた結果、計6回も角不成が登場した。しかし、あの三段目の手が敗着で、結局は11手で詰まされてしまった。腹が立つのは途中で奴が指した五段目の手だ。角の手でもないのに駒音高らかに指しやがって」
(条件)
- 11手で詰んだ。
- 角不成が6回あった。
- 後手は三段目に着手した。
- 先手は途中で五段目に角以外を着手した。
出題のことば(担当 DD++)
まずは先後それぞれ何回角不成を指すのか、から。
追加ヒント
打った55飛の利きを使って詰み。後手は99で取った香を有効活用しましょう。
推理将棋69-3 解答 担当 DD++
▲7六歩 ▽4二飛 ▲3三角不成▽5二玉
▲4二角不成▽9九角不成▲5三角不成▽3三角不成
▲5五飛 ▽4二香 ▲4四角不成まで11手。
11手で角不成6回。この手の条件では先後それぞれ何回ずつそれをやるのか、から考えるのが定石です。まず先手6回というのは明らかに不可能。先手5回後手1回というのも先手は3手目以降角不成しか指してないことになるので、指せたところで明らかに詰みにはなりませんね。逆に先手2回後手4回などというのも今度は後手が34歩と角不成だけになるのでダメ。先手4回後手2回か先手3回後手3回というのが回数分担のようです。
さてここで鍵になるのが何気ない雰囲気でつけられている後手の三段目着手の条件。これは果たしていつ何を指した手でしょうか? まず2手目に三段目着手はありえません。4手目は74歩73桂などで指せないこともないですが、先手が3手目に33角不成と指せないので角不成が全く足りなくなります。ならばこれは6手目8手目10手目のいずれかで、88か99から33角不成と戻ってくる手なのだと自然に予想できるでしょう。
ではこれが再度先手陣へ不成で動くことはありえるでしょうか? 結論から言ってしまえばありません。というのは、この条件で先手の五段目着手を詰みに有効な着手とするには線駒を五段目から利かせる以外にないからです。つまり先手はどこかで55飛や55香と打つことになるため、それ以後は33から88や99への角不成が指せなくなるという仕組み。後手の角の動きは6手目に88か99へ行って8手目に33へ戻って、それで終わりなのです。
これで枠が少し見えてきました。先手は76歩33角不成から始め、途中で取った飛か香を9手目に55に打ち、残りは全部角不成の手。後手は6手目に88角不成または99角不成と指して8手目33角不成、他に角不成はなし。
さてここでひっかかるのが一体これでどんな詰みがあるのかです。55飛香は動かせないわけですが、これを紐に53角不成までと考えると52地点が埋められませんし、51角不成までだと金をどかした後の41や61が埋まりません。はて、と考えたところでこの手順一番の山場の最終手に気づけば解けたも同然。44角不成で5筋の後手玉に開き王手をしつつ後手33角の利きを55から外す鮮やかな一手がこの手順の最終手なのです。
残りは後手の42飛52玉、先手の42角不成53角不成は考えるまでもないとして、あとは44角不成の時に空いてしまう42地点のケア。普通は離した王手の詰みを目指すには後手に持ち駒は持たせたくないところですが、この問題の場合は99角不成とあえて香を取り、42を埋める駒を補充するのが正着となります。
なお、当初の条件での余詰順はこちら。
▲7六歩 ▽5二玉 ▲3三角不成▽6二金
▲4二角不成▽8八角不成▲5一角不成▽3三角不成
▲同角不成 ▽4四歩 ▲2五角
これははなさかしろうさんからの指摘順ですが、NAOさんからの指摘もほぼ同一順でした。なるほど必要な回数角不成を着手したら後手角は取ってしまってもいいのですね。
そしてもう一つ、最後44角不成を指して55飛で普通に王手して詰ませても条件を満たしてしまったという痛恨の見落としがありました。44角不成が鮮やかすぎるために、鈴川さんも私も見逃し、解答者も締切間際まで誰も気づかないという不思議な非限定でしたが、作品として不完全であったことには何ら変わりはありません。気付かずに採用および1度目の修正の受諾をしてしまったことを深くお詫び申し上げます。
それではみなさんの短評をどうぞ。
チャンプ 「これは良い作品ですね。もはや新人作家とは呼べないほど完璧な仕上がりになっていると思います。こういった作を見るとまた創作に力が入ります(笑)」
■しかし余詰という点に関しては完璧からほど遠かったという。
斧間徳子 「唯一に限定されるような手順を考えたらあっさり解けましたが、正攻法で考えると難問になりそう。条件付けの巧みさに感心しました。」
■飛車の代わりに99香をラリーして使う紛れを考えだすとけっこう大変でした。非限定解消の条件付加でまるごと消えましたが。
隅の老人B 「角生が6回、これはある意味、大きなヒントですね。おかげで、69-2より簡単に解けて、これが上級?です。」
■開き王手は慣れていないと見えにくい、というのもあって少し難し目に見積もりました。
橘圭伍 「角生の回数で手順を縛るのも今や古風な感じですね」
■流行したのは4年前くらいですかね? 人もそこそこ入れ替わっているので当時は見つからなかったものがいろいろ出てくると思います。
EOG 「香を取るのが盲点だった。」
■玉方の駒取りが有効になるって感覚的に出てきませんものね。
ジェシー 「飛か香を取って五段目に打つというのは想像がついたのですが、4筋で取るというのがなぜか盲点になってしまいました。最後は6二香・3一角ではダメというのが、ちょっと大道詰将棋っぽくてキュートですね。」
■加えて33角不成と引き戻さないと最後の同角が消せないというのも面白い点ですね。
NAO 「作意の方の5段目着手は、第一感通り飛車でした。」
■第一感が飛車でありながらあの角を奪う余詰をすんなり見つけるのはすごい。
変寝夢 「2手目42飛4手目52玉5手目42角生と指定して1億局面4時間。PCは最終3手が手順前後の順も解答。着手とは打を含まないということかな?。42香の意味づけがダブルなのが残念。」
■やはり11手だと時間かかりますか。42香については持ち駒消去の意味付けはない(そもそも88角不成でいい)ためダブルというわけでもないような。手順前後に関してはすみませんでした。
たくぼん 「55飛の前に53角生が上手い一手。これで角筋が遮れる。」
■99角成ならまだしも、99角不成だと55への利きを消すためにこれだけ準備しないといけないという。
渡辺 「後手の3段目着手と角生でない先手の5段目着手が微妙な感じで着手を制限しているのが面白い。終形が面白いので余詰は勿体無い。」
■これ、どっちか外れただけでもかなりいろいろあるんですよね。余詰は本当にもったいなかった。
平井康雄 「55飛打のヒントが決定的でした。これさえわかれば、詰上がりも想像できます。」
■ちょっとヒント出しすぎかなあと思いつつ大サービス。
chemical 「先手の角は最後以外、不成が必須なんですね。」
■ですね。推理将棋では52玉の周りを生角がうろちょろするのは手筋です。
鈴川優希 「55飛迄の非限定になぜ気付かなかったのか……。」
■そういう作者ならではの思い込みによる見落としを防ぐために私が追検討してるはずなんですけどねえ。うーん。
占魚亭 「銀を取って香を51に打つと思っていたので、この筋に気付くまで大分時間がかかりました。」
■その場合角を42か62に置けば香打ちは不要だったり。しかしそれでも「76歩、52玉、33角不成、62銀、51角不成、88角不成、62角不成、33角不成、45銀、88角不成、54銀」で五段目に打った銀があと一歩間に合いません。
やまかん 「これは作意は相当面白いですね。ヒントがなかったらわかりませんでした。」
■この面白い狙いがたった11手で実現できるというのだから素敵です。
正解:18名
EOGさん HMさん 斧間徳子さん Chemicalさん ジェシーさん
しまぎろうさん 鈴川優希さん 隅の老人Bさん 占魚亭さん たくぼんさん
橘圭伍さん チャンプさん NAOさん はなさかしろうさん 平井康雄さん
変寝夢さん やまかんさん 渡辺さん
総評
チャンプ 「今月は早々に解答をさせて頂いたので、創作に時間を取りたいと思います(笑)」
■また3題ともチャンプさん作が並ぶ月がきたりするのでしょうかね。
斧間徳子 「今月は夏向きの軽快作特集ですね。」
■94形式と2ヶ月連続で軽めの出題になりますね。
隅の老人B 「7月下旬、今月はヒント前の解答のチャンスとのこと。ならば、挑戦してみるか、DD++さんの言に嘘は無し、ですね。」
■言に嘘はなかったとしても、言外の「出題されるのは完全作」が嘘となってしまった今回。
橘圭伍 「3は解説が出る頃にはもう少し良い修正になっている事を期待したいですね。1の条件付けは氏以外使ってないが作りやすそうです」
■2回目の修正だけで最初の余詰も消えるので、「先手は途中で五段目に着手したが不成ではなかった」でよさそう。
NAO 「今月はチャンプさんの中級に苦戦。解けたと思ったら直前ヒントが出てました。悩んだ分損したのか、楽しんだ分得したのか?」
■決して苦しむために解いてるわけではないのですから、楽しんで得した方でいいと思いますよ。
変寝夢 「実は今推理将棋検討ソフトを試しているところです(ウン年仕事になると思いますが)。今回の解答は全て機械で抽出し、人間の手で選別しております。具合が悪ければ、無解扱いにしていただいて結構ですし、ペンネームを変寝夢Jrにする等でも結構です。短評的には昔高田淳一氏が行っていた方法に近い形にしてるはずですが。」
■同じ方法での解答は鈴木さんが何度かやってらっしゃいますので問題ありません。が、やはりご自分の頭で解図を楽しむのも両方やっていただけるのが理想ですね。
変寝夢 「与えられた条件だけでは相当時間がかかりそうなので、その他のオプションをつけて解答させました(そうでないと16歩、12香から読んでしまうとウン十時間はかかりそうなので)。いやー推理将棋奥深しです。これで安南とか対面とか入ると・・・・。それってありですかね?」
■けっこう大胆に決め打ちしてもなおこれだけかかるのですね。局面数は指数で増えることを考えると王手制約がない推理将棋は問題ごとに効率よく探索する方法を人の手で入れてやらないと11手とかでも現在の家庭用PCのマシンパワーでは全検は無理なんでしょうかね。
たくぼん 「暑いときにはこれ位の難易度が良いですね。」
■第70回はさらに簡単になっています。
しまぎろう 「94問題楽しみです!!」
■しまぎろうさんの初登場、好評だといいですね。
渡辺 「推理将棋の解答です。今月もぎりぎりの解答提出です。先月よりは解き易くなっていると思います。」
■さらに簡単な第70回を経て、第71回の反動が怖いですね。
渡辺 「おまけの問題:「96歩、52金右、97角、32銀、以下9手で詰み」で限定。」
■2手目はさすがに52金左の誤記だと思いますので、正解とします。後手は先に金銀を上がればよく、そのために先手は33でなく53に角を成るようにすればいいわけですね。
chemical 「今回は全て解けました。次も頑張りたいです。でも、余詰めと非限定まではわかりません…。」
■とか言いながら既に作品投稿までしてくださっているchemicalさん。将来有望です。
鈴川優希 「練習問題の解答は、76歩、32銀、44角、52金左ですか? 解答者に推理将棋を作らせつつ余詰検討させる、斬新な問題でした。次の投稿はもっと徹底的に検討してみます……。それでは失礼します。」
■はい、角は97でなく44の方でも正解ですね。
占魚亭 「今月は中級が一番難しかったです。」
■同様の意見が多数あって驚いています。
推理将棋第69回出題全解答者: 21名
EOGさん HMさん 斧間徳子さん キリギリスさん Chemicalさん
ジェシーさん しまぎろうさん 鈴川優希さん 隅の老人Bさん 諏訪冬葉さん
占魚亭さん たくぼんさん 橘圭伍さん チャンプさん NAOさん
はなさかしろうさん はらたっとさん 平井康雄さん 変寝夢さん やまかんさん
渡辺さん
当選: チャンプさん
おめでとうございます。
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