「茫々馬」と「百千帰」の解説 (1) 「茫々馬」解答
[2014年2月19日最終更新]
おもちゃ箱で2014年新春特別出題として出題した「茫々馬」と「百千帰」の解答・解説です。「茫々馬」は初めての18×18詰将棋、1万手超えとあって、解いてくださる方がいるか心配していましたが、井上徹也さん、たくぼんさんのお二人から解答が届きました(「百千帰」は12名)。残念ながら1か所早詰があったため、修正図で解説します。なお、解説は作者である糟谷祐介さんにお願いしました。
解説の分量が多いので、何回かに分けて掲載します。1回目は「茫々馬」の解答です。「茫々馬」の手順はこちらで手順の概要を鑑賞することができますので、あわせてごらんください。
注)神無七郎さんのTMLView(詰将棋XMLビューア)(Onsite Fairy Mate)を利用させていただいています。閲覧にはSilverlightのインストールが必要です。
また、手順・変化・紛れの詳細はOnline Appendixをごらんください。
===> Online_Appendix_to_Boubouma.pdf (PDF)
「茫々馬」と「百千帰」の解説(1) (2) (3) (4) (5)
「茫々馬」と「百千帰」の解説 糟谷祐介
(1) 「茫々馬」解答
表記:杏=成香、圭=成桂、全=成銀
【18×18詰将棋】
18×18の盤を使用。王玉以外の駒数は通常の四倍(王玉一枚、飛角八枚、金銀桂香十六枚、歩七十二枚)。陣地は上下三段ずつ。二歩禁止。持駒余り許容。その他、伝統ルール(9×9詰将棋)に準ずる。
【作意手順】
[ 51飛、43玉、54飛成、32玉、34龍、22玉、31龍、13玉、
11龍、12歩合、14歩、同玉、12龍、13歩合、15歩、同と、同と、同玉、13龍 …(歩合、歩打)…、1e龍、2h玉、1h龍、3i玉、
1i龍、2iと、4i金、同玉、2i龍、3i金合、5i金 …(金合、金打)…、ei龍、hh玉、hi龍、ig玉、
ii龍、ih金合、if金 …(金合、金打)…、i4金、同と、同と、同玉、i6龍、h3玉、i3龍、g2玉、h2龍、f1玉、
イh1龍、g1金合、e1金、同玉、g1龍、f1金合、d1金、同と、ロ同と、同玉、f1龍…(金合、金打)…、81龍、52玉 ] (1周目、途中図1は52玉まで)、
[51龍、43玉、54龍、33玉、34龍、22玉、31龍、13玉、11龍…(歩合、歩打)…、1h龍、3i玉、1i龍、2i金合、4i金…(金合、金打)…、i4金、同玉、i6龍、h3玉、i3龍、g2玉、h2龍、f1玉、h1龍、g1金合、e1金、同玉、g1龍、f1金合、ハ96馬、c3圭、d1金…(金合、金打)…、81龍、52玉] (2周目、途中図2は96馬、c3圭まで)、
[51龍…、eb馬、g9と…、52玉] (3周目、途中図3はeb馬、g9とまで)、
[51龍…、ec馬、gaと、i7金、同玉、i9龍、i8金合、dc馬、g9と…、52玉] (4周目)、
[51龍…、dd馬、gaと…、52玉] (5周目)、
[51龍…、de馬、gbと…、ce馬、gaと…、52玉] (6周目)、
[51龍…、cf馬、gbと…、bf馬、gaと…、52玉] (7周目、途中図4はbf馬、gaとまで)、
[51龍…、af馬、38杏…、9f馬、39杏…、8f馬、3a杏…、52玉] (8周目)、
[51龍…、8e馬、39杏…、52玉] (9周目)、
[51龍…、8d馬、38杏…、7d馬、39杏…、6d馬、3a杏…、52玉] (10周目)、
[51龍…、6c馬、39杏…、52玉] (11周目)、
[51龍…、6b馬、38杏…、52玉] (12周目)、
[51龍…、6a馬、37杏…、h1龍、g1金合、ニa4金、d3圭…、52玉] (13周目、途中図5はa4金、d3圭まで)、
[51龍…、ホ6b馬、38杏…、6c馬、39杏…、6d馬、3a杏…、52玉] (14周目)、
[51龍…、7d馬、39杏…、52玉] (15周目)、
[51龍…、8d馬、38杏…、8e馬、39杏…、8f馬、3a杏…、52玉] (16周目)、
[51龍…、9f馬、39杏…、52玉] (17周目)、
[51龍…、af馬、38杏…、52玉] (18周目)、
[51龍…、bf馬、37杏…、cf馬、gbと…、ce馬、gaと…、52玉] (19周目)、
[51龍…、de馬、gbと…、dd馬、gaと…、dc馬、g9と…、52玉] (20周目)、
[51龍…、ec馬、gaと…、eb馬、g9と…、96馬、c3圭…、52玉] (21周目、途中図6は96馬、c3圭まで)、
[51龍…、a6馬、d3圭…、a5馬、c3圭…、52玉] (22周目)、
[51龍…、b5馬、d3圭…、52玉] (23周目)、
[51龍…、d6香、ヘc6歩、トib金…、a5馬、c3圭…、52玉] (24周目、途中図7はd6香、c6歩まで)、
[51龍…、a6馬、d3圭…、52玉] (25周目)、
[51龍…、fb馬、gaと…、eb馬、g9と…、52玉] (26周目)、
[51龍…、ec馬、gaと…、dc馬、g9と…、52玉] (27周目)、
[51龍…、dd馬、gaと…、52玉] (28周目)、
[51龍…、de馬、gbと…、ce馬、gaと…、52玉] (29周目)、
[51龍…、cf馬、gbと…、bf馬、gaと…、52玉] (30周目)、
[51龍…、af馬、38杏…、9f馬、39杏…、8f馬、3a杏…、52玉] (31周目)、
[51龍…、8e馬、39杏…、52玉] (32周目)、
[51龍…、8d馬、38杏…、7d馬、39杏…、6d馬、3a杏…、52玉] (33周目)、
[51龍…、6c馬、39杏…、52玉] (34周目)、
[51龍…、6b馬、38杏…、52玉] (35周目)、
[51龍…、6a馬、37杏…、69馬、c3圭…、52玉] (36周目、途中図8は69馬、c3圭まで)、
[51龍…、79馬、d3圭…、78馬、c3圭…、52玉] (37周目)、
[51龍…、88馬、d3圭…、52玉] (38周目)、
[51龍、43玉、チ98馬、65と、リ54龍、33玉、99馬、66と…、52玉] (39周目)、
[51龍…、a9馬、65と…、aa馬、66と…、52玉] (40周目)、
[51龍…、ba馬、65と…、e7馬、g9と…、52玉] (41周目、途中図9はe7馬、g9とまで)、
[51龍…、d7馬、gaと…、52玉] (42周目)、
[51龍…、aa馬、66と…、52玉] (43周目)、
[51龍…、a9馬、65と…、99馬、66と…、52玉] (44周目)、
[51龍…、98馬、65と…、88馬、66と…、78馬、c3圭…、52玉] (45周目)、
[51龍…、79馬、d3圭…、69馬、c3圭…、52玉] (46周目)、
[51龍…、6a馬、d3圭…、52玉] (47周目)、
[51龍…、6b馬、38杏…、6c馬、39杏…、6d馬、3a杏…、52玉] (48周目)、
[51龍…、7d馬、39杏…、52玉] (49周目)、
[51龍…、8d馬、38杏…、8e馬、39杏…、8f馬、3a杏…、52玉] (50周目)、
[51龍…、9f馬、39杏…、52玉] (51周目)、
[51龍…、af馬、38杏…、52玉] (52周目)、
[51龍…、bf馬、37杏…、cf馬、gbと…、ce馬、gaと…、52玉] (53周目)、
[51龍…、de馬、gbと…、dd馬、gaと…、dc馬、g9と…、52玉] (54周目)、
[51龍…、ec馬、gaと…、eb馬、g9と…、h2龍、f1玉、i1龍、g1金合、e1金、同玉、g1龍、f1金合…、ヌ96馬、c3圭…、52玉] (55周目、途中図10は52玉まで)、
84歩、43玉、52馬、同玉、51龍、43玉、54龍、33玉、34龍、22玉、
31龍、13玉、11龍、12歩合、14歩、同玉、12龍、13歩合、15歩、同玉、
13龍、14歩合、16歩、同玉、14龍、15歩合、25龍、同香、17歩、同玉、
18歩、同玉…(歩打、同玉)…、1g歩、同玉、1h金、1f玉、1g香、2e玉、
3e金、同玉、3d飛、4f玉、3f飛、5e玉、5f飛、同と、6d角迄11929手。
【手数計算】
龍の追い廻しは一周51龍(飛)~52玉迄212手。馬の王手は収束部分(56周目84歩以下)を除いて合計101回。収束部分61手。一周目はと金を剥がすのに余計6手。6+212x55+2x101+61=11929。
【変化・紛れ】
☆詳細はonline appendix (PDF) を参照のこと。
イ i1龍は、以降i筋で歩合いができるため、龍の追い廻しができず、持ち駒の歩が不足したまま収束に突入し詰まない。
ロ 96馬はd2と以下逃れ。96馬は2周目に指さなければならない。
ハ 2周目の96馬を省略してeb馬?6a馬と3周目以降に倣って進めると、逃れ図1の局面(あるいはここから69馬、c3圭と進めた局面)で馬が立ち往生する。その結果、歩を補充できず詰まない。
ニ b4金及びa5金は後の96馬(21周目)が王手にならず、また動かした金を再度動かすこともできないため不詰。c5金は作意手順通り進んでb1金、同玉、d1龍、c1歩合で逃れ。
ホ 69馬から、作意手順後半(36周目?41周目)と同様に馬を運用すると(逃れ図2)、d7香が退路を塞いでいるため、馬を96まで戻すことができない。その結果、歩が不足し詰まない。尚、i7玉に対してg9馬と歩を補充すると、同龍、i6金、同玉、i8龍、i7角合、i5金、同玉、i7龍、i6金合で逃れ。
ヘ gaとは馬をa4~96~eb~6aまで戻して、6a馬、37杏…、i3龍、g2玉、h2龍迄(変化図)。
ト 同馬はgaとで詰まない。即ち、i8玉に対してga馬と歩を補充すると、同龍、i7金、同玉、i9龍、i8角合、i6金、同玉、i8龍、i7金合で逃れ。馬はga以外には動かせないため、歩が足りず詰まない。
チ 54龍、33玉、66馬は同角、34龍、22玉、31龍、13玉、11龍、同角で逃れ。歩を66で補充することはできない。
リ 同馬は同銀、54龍、同銀で逃れ。歩を65で補充することはできない。
ヌ 馬がebにいる時に52玉、84歩と進めるとa7金、同馬、同飛で詰まない(攻方王の唯一の存在意義)。
【手順解説】
持ち駒をどうやって補充するかという問題。途中図1(金歩七)を経て、結論から言うと歩が後三枚欲しい。i1歩は周辺巡りの途中で取れる。残り二枚はどうしよう。
歩、と金、成香、成桂が其処彼処に散らばっている。その中から、馬鋸らしき異様な往来運動でe7と金と84と金を回収するのが正解。他の駒に手を出したら最後、金輪際詰まないようにできている(変化・紛れの詳細はonline appendix (PDF) を参照のこと)。
a7馬→e7馬→96馬と運用したいが、味方の駒が邪魔でコースが容易に確保できない。逃れ図1からわかるように、b5金があると、6a馬→e7馬と進めない。そこで二周目に「96馬、c3圭」を挿み(途中図2)、6a馬の時にa4金とする(途中図5)。これでb5金がいなくなり、6a馬→e7馬のルートが開くという算段。
しかしb5金の直後に流れに乗ってe7と金を取ると、e7馬が立ち往生する(逃れ図2)。そこで馬を一旦逆流させて6a馬→96馬→b5馬からのd6香(開き王手)が深謀遠慮の手順(途中図7)。d7に空いたスペースを使ってb5馬→e7馬→d7馬→96馬と往復させて(途中図10)、84歩(開き王手、84と金を回収)から収束に入る。
【問題意識と考え方】
ここからは手順に仮託した問題意識と考え方(これらの方が「作意」と名状するにふさわしい)を説明したい。
作意のコンポーネンツは四つ:(1)回転趣向の開発、(2)馬鋸の進化、(3)趣向ドッキング方式の発展、(4)諸作品観の変革
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