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推理将棋第84回解答(3)

[2014年12月30日最終更新]
推理将棋第84回出題の84-3の解答、第84回出題の当選者(隅の老人Bさん)を発表します。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。

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  推理将棋おもちゃ箱)  推理将棋(隣の将棋)  どんな将棋だったの? - 推理将棋入門


84-3 上級 はなさかしろうさん作  伏線とその回収  12手

「今遊びに来てた連中、文芸部だっけ? 腕前はどうだった?」
「どうだかなぁ。先手なんていきなり1筋に指したと思ったら、次は68玉だぞ」
「そのあと結局、後手が最後に3手連続で1筋に指して、12手で詰んだよ」
「ふうん。全局通しで見ると、1,8,10,12手目が1筋で、3手目が68玉というわけか」
「なるほど。伏線をはって、回収したってこと? 棋譜を合作してたのかもね」

さて、どんな将棋だったのだろうか?

(条件)

  • 12手で詰んだ
  • 1,8,10,12手目は1筋の手
  • 3手目は68玉

出題のことば(担当 NAO)

 終盤の1筋着手につながる伏線手を推理しよう。

追加ヒント

 中段玉を1筋の飛車打ちで仕留める手段は。


推理将棋84-3 解答 Suiri843

八飛    △3四歩    ▲6八玉    △4四角
▲5六歩    △3三桂    ▲5七玉    △七角成
▲4六玉    △八馬    ▲3六玉    △六飛 まで12手

条件
・ 1,8,10,12手目は1筋の手(▲18飛~△17角成~△18馬~△16飛)
・ 3手目は68玉

前作83-3「夜の長い季節は端で」と同様、序盤と最後の端の手がテーマの作品です。初手の伏線を最後に回収するスケールの構想ですが、アクロバチックな詰上がりが想定しづらくかなりの難問でした。

3手目に6筋に移動した玉をどうやって1筋の手で詰ますことができるのか?謎を解いていきましょう。

  • 初手1筋:16歩、18香、18飛の3通り。19に空間を空けるには18香、28に空間を空けるか端で飛を取らせるなら18飛だが、どの手が有効か解らないのでとりあえず保留。
  • 8手目以降、後手が3連続で1筋の手を指して詰ます手順のため、後手の前半2, 4, 6手目に何ができるか。当然、足の早い角を使うが、詰み道具に先手大駒を取る手を考えてみる。
    まず、△34歩~△77角成~△88馬で角を奪う手段。角は取れても馬を使う余裕がなく、角1枚と1筋の手だけでは詰まない。
    次に、△34歩~△44角からの1筋攻め。後手は1手余して8手目以降に17角成以下の1筋着手ができる。
    初手▲18飛と1筋に飛を寄り、後手は△34歩~△44角~△xxxx~△17角成~△18馬と飛を取れば、12手目1筋に飛打が可能。18馬がいるので飛打は5段目か6段目に絞り込む。最終形には5段目か6段目の中段玉を推定。
  • 先手3手目68玉以降、玉が中段に進むには歩突きに1手と玉移動が2~3手必要。
    最終5段玉なら56歩の後~57玉~46玉(66玉)~45玉(55, 65, 75玉)、66歩の後~67玉~56玉(76玉)~45玉(55, 65, 75, 85玉)、また、76歩もあるが 後手角の利きがあれば7手目77玉と指せない。11手目45~85まで移動可能だが、△15飛打に対していずれの玉位置でも6段目に逃げる手があり詰む形がない。
    最終6段玉なら56歩の後~57玉~46玉(~36玉)、66歩の後~67玉~56玉(~46玉)、または46歩の後~58玉~47玉~36玉。11手目36~56まで移動可能。6段玉への△16飛打に対しては歩突きの移動合が効きそう。ところが、後手の攻め駒は王手駒の16飛に加え、飛を取った18馬がある。この18馬の利きがあるため36玉形だけは26歩を突けない。すなわち36玉~16飛打の詰形ができる。36玉が47に逃げられないよう歩突きは56歩に決定。
  • 以上の手順を整理します。
    ▲18飛 △34歩 ▲68玉 △44角 ▲56歩 △xxxx ▲57玉 △17角成 ▲46玉 △18馬 ▲36玉 △16飛迄。
    未確定の6手目には、36玉の逃げ道25と45に効かせる△33桂がぴったり。36玉に合い効かずの16飛までが作意手順となる。

ここまで、多少の飛躍もあって作意までたどり着きましたが、他に手段はないのでしょうか。

  • 気になるのは端の角。14歩から13角の筋と先手角を奪って14角の筋。
    13角の筋: 先手「56歩~57玉~46玉」後手「44歩~54歩~14歩~13角」で詰み形に近づき、1筋以外に先後とも1手ずつ余るが46玉の退路36を埋める手段がなく詰まない。
    14角の筋: 先手「46歩~58玉~47玉~36玉」後手「34歩~77角成~88馬~14角」で後手があと1手44角成とすれば詰形だが、8手目以降1筋連続着手のため詰まない。
  • 5手目以降の先手着手は4回。単純に玉が1筋に近づくとどうか。
    たとえば、初手18飛から、58玉→48玉→38玉→28玉と2段目を移動する手順。これは後手の8手目以降の1筋攻めと噛み合わない。最終12手目に1筋(17)に飛び込んでも先手の飛桂の利きがあり失敗。10手目以前に後手駒が1筋に飛び込むと今度は先手が28玉と近づけない。
  • 55角~28角の筋: ▲18香 △34歩 ▲68玉 △55角 ▲36歩 △28角生 ▲58玉 △19飛 ▲48玉 △18飛成 ▲38玉 △19角成迄。
    あるいは ▲18香(18飛, 16歩) △34歩 ▲68玉 △55角 ▲36歩 △28角成 ▲58玉 △18馬 ▲48玉 △19馬 ▲38玉 △18飛迄。
    いずれもほぼ詰形に近いが、推理将棋ルールでは28銀の無駄合が有効なため、12手では詰んでいない。

それではみなさんの短評をどうぞ。

はなさかしろう(作者) 「裏側からのピンをテーマに最適位置を探していたらここになり、条件付けもこうなるところ。選択の余地がほとんどなく、不穏な気配を感じる手順です」

■作者は既視感があって先行作があることを気にされていましたが、その指摘はありませんでした。難問でありながら、簡素な伏線条件と想定しづらい最終形のバランスが素晴らしい作品といえるでしょう。

斧間徳子 「洗練された条件と斬新な詰上りで、2か月連続のホームラン」

■端絡みの二題は、難しいだけでなく内容が素晴らしく完成度が高かった。

ミニベロ 「難問である。まず3手しかない初手の意味が分からない。68玉は右へ行くフェイントであろうとは思うが、詰形が見えない。やむを得ず『非限定順はすべて排除』の裏読みを使ってしまった。26の歩が突けないことに気がついたときは力が抜けました。序だけ指定すればあとはオートマチックとは、うまくできています」

■とっかかりと最終形が見えない難問。68玉は右に移動するであろうというヒントに。

孔明 「▲3八玉型だと3九の銀の利きがあって詰まない・・・かといって銀を動かすと3九の地点が空いて詰まない…と無限ループに嵌ってしまいました。正解手順のように玉が上に行くと、6手目に▽1七角成としていたので、退路を封じる手段がないと思っていたのですがこの手は1筋の手なので8手目でも良く、6手目が自由に指せるとわかったのでようやく解けました」

■まず、38玉形は読まされる手順。

小山邦明 「最後に先手が26歩とできない収束形はすばらしい」

■解けて、思わず膝を打つ手順と最終形。

Pontamon 「歩の移動合いができるので駄目だと思って読みから外していた16の飛打ち。抜群の配置になっていたんですね。相性の悪い中段玉だったので時間が掛かりましたが、33桂に気付いてどうにか11月中に解けました」

■33桂で5段目をしっかり塞いでから1筋へ着手。

DD++ 「最終形がすごい。3手目48玉だったら57へ進む手が絶対に見えなかった自信があります。尤もそれだと余裕で余詰みますけど」

■慣れてくれば、3手目68玉が57~46の道筋を暗示することに気がつきますね。

S.Kimura 「中段玉で飛車で詰ますとは思いましたが,先手玉の位置が5段目ではなくて6段目であり,飛車を取るだけだと思った18馬が詰みに効いてくるとは思いもよりませんでした」

■侮れない敵陣の馬の威力。

占魚亭 「最初に解けたのはこの作品。34歩が重要な一手だったとは」

■これが最初に解けるとは・・・凄い。

飯山修 「早い段階の玉の着手指定は上部脱出の通路非限定の解消ものが多いと思う」

■その裏読みは大正解。解答への近道でした。

波多野賢太郎 「この問題もヒントを見てようやく詰形を閃き、解くことができました。3手目限定以外、たったこれだけの条件で手順が決まるのがやっぱりすごいです。こういう問題が論理的に解けるように、また解説を読んで勉強したいと思います」

■論理的に解を導くには難しい問題故、解き方解説も難しい。

渡辺 「参りました。ヒントを見て詰位置がほぼ確定した後も一日以上考えました。一石三鳥の18馬。1.飛を取る 2.先手香の利きを防ぐ、3.先手27歩をピンする」

■飛取りだけでは済ませない強力な馬は、斬新で想定し難い詰め上がりを演出しました。

加賀孝志 「協力詰を見ているよう、意外な詰め上がり」

■王手義務のない協力詰を見ているのです。

隅の老人B(無解) 「今年の最後の問題が解けません、ヒントは中段王で詰むとか、残念。 苦し紛れの誤答を一つ。ふつうの将棋のル-ルなら、これも正解?
18飛、34歩、68玉、55角、36歩、28角成、58玉、18馬、48玉、19馬、38玉、18飛打、迄12手」

■残念。推理将棋のルールでは28銀と応じて未だ詰んでません。

諏訪冬葉 「6段目の玉に16飛は△○6歩で簡単に逃れだと思っていたので補足コメントをみるまで全く読みませんでした」

■6段玉への16飛打は、初めは捨ててかかる手順。

たくぼん 「最初は開き王手ばかり読んでました。27地点を埋めるのに頭をひねっていたら18馬がありました。初手の意味が明確になりさすがの作品」

■初手の謎が最後に解るスケールの大きなミステリー作品でした。


正解:15名

  飯山修さん  S.Kimuraさん  斧間徳子さん  加賀孝志さん  孔明さん
  小山邦明さん  諏訪冬葉さん  占魚亭さん  たくぼんさん  DD++さん
  波多野賢太郎さん  はなさかしろうさん  Pontamonさん  ミニベロさん
  渡辺さん


総評

ミニベロ 「上級は久々に考えさせられた。私の解図力が落ちたのか。11手~13手あたりは、まだまだ怪作が潜んでいるようだ」

孔明 「初めてヒント前に全て解けました」

Pontamon 「1月に推理将棋に出会い、あ っという間に過ぎてしまった2014年。来年は完成率を上げるためにも解図ソフト作りに挑戦してみようかな。(投稿数の割りには余詰み作だらけなので)では、みなさん、良いお年を」

DD++ 「無駄手や迂回が隠しテーマでしょうか。条件の多寡は両極端ですが」

S.Kimura 「今回は幸いにしてヒントなしで解くことができました。年賀推理将棋特集もやさしめであることを祈ります。初夢が推理将棋でうなされることになりませんように・・・解答時では少し早いですが,良いお年をお迎えください」

波多野賢太郎 「今月もどうにか全部解答できて良かったです。今年は推理将棋の楽しさを知ることができました。ありがとうございました」

渡辺 「はなさかさんの問題は前回も今回もどちらも超難問でした」

はなさかしろう 「9手なのに見たことのない手順の問題が次々に出てきますね。攻め方5手で玉方に遊びが1~2手入るのなら多少は慣れてきたつもりでしたが、先手後手1手ずつとは!」

隅の老人B 「今年もいよいよ終ります。B爺さんの今年の推理将棋の正解率は?数えたわけではないけれど、6割くらいは解けたかな。さて、来年は如何なりますやら、来年も"宜しく"です」

たくぼん 「WFPの編集が遅れて今回は苦戦しました」

■年の瀬が迫ってきました。9月に担当交代しましたが、皆様のおかげでなんとか無事に年越しできそうです。来年も推理将棋を盛り上げていきましょう。では、よいお歳をお迎えください。


推理将棋第84回出題全解答者: 17名

  飯山修さん  S.Kimuraさん  斧間徳子さん  加賀孝志さん  孔明さん
  小山邦明さん  鈴木康夫さん  隅の老人Bさん  諏訪冬葉さん  占魚亭さん
  たくぼんさん  DD++さん  波多野賢太郎さん  はなさかしろうさん
  Pontamonさん  ミニベロさん  渡辺さん

当選: 隅の老人Bさん

おめでとうございます。
賞品をお送りしますので、賞品リスト から選んだご希望の賞品と送付先をメールでお知らせください。

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コメント

解答締切には間に合いませんでしたが、プログラムに解かせました。
所要時間536902秒で解答。唯一解です。
序盤にヒントの少ない問題はやはり時間が掛かります。

投稿: 鈴木康夫 | 2014.12.30 10:48

ありがとうございます! 1週間近くかかりましたか。たいへん恐縮です。
3手目68玉は確かにあざといフェイントですが、△34歩~77角成~33馬~14歩~1**~15馬で▲36歩~26玉を詰ます筋が強力なので、3手目6筋や3手目58玉では駄目なのでした。

投稿: はなさかしろう | 2015.01.03 21:34

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