推理将棋第89回解答(3)
[2015年5月31日最終更新]
推理将棋第89回出題の89-3の解答、第89回出題の当選者(NNNさん)を発表します。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。
関連情報: 推理将棋第89回出題 推理将棋第89回解答(1) (2) (3)
推理将棋(おもちゃ箱) 推理将棋(隣の将棋) どんな将棋だったの? - 推理将棋入門
89-3 上級 チャンプさん作 美野樫9兄妹の一局(その6) 19手
健一「さぁて、次はどんなメンバーで行くかな・・・」
八重「ちょっとーっ!私の出番はー!?」
四郎「そういえば・・・八重ってまだ・・・」
健一「あっ・・・ああ、悪い悪い、じゃあ次は八重と・・・」
八重「私ひとりで十分よ!皆は休んでて!」
隆二「いやちょっと待て、いくらなんでもそれは無謀だろ」
七海「わたくしもそう思います、みんなで力を合わせて・・・」
八重「いいから、私に任せなさいっ!!」
一同「はっ・・・はい・・・」圭五「あちゃーこりゃキツイ試合になるぜー」
九美「八重ねぇ、大丈夫かなぁー?」
源三「まぁ負けてもエエやないか好きにさせたろ」・・・対局開始・・・
八重「さてと、私の先手ね、こんな弱そうな相手、恐れるに足りずだわ」
八重「はー?何それ!アンタ最初は歩を動かすって習わなかったの?」
八重「19手で詰みね、成る手が無くて手数は掛かったけど楽勝ね」
八重「最後の桂打ちで弾(持ち駒)は全て使い切ったわ」
八重「そういえば私が85同歩と指したら慌てて玉を初めて動かしてたわね」
八重「一体何に怯えてたのかしら」六実「え~ホントに勝っちゃった!八重ちゃん、すご~い!」
健一「つ・・・つえぇ・・・ていうか八重って怖えぇ・・・」さて、どんな将棋だったのだろうか?
(条件)
- 19手で詰んだ
- 先手は8筋の着手のみ
- 2手目は歩以外の着手
- ▲85同歩という手に対して初めて玉を動かした
- 最終手の桂打ちで先手の持ち駒は無くなった
- 成る手はなかった
出題のことば(担当 NAO)
先手は8筋の着手だけ。8筋の桂打ちで詰む形を推理しよう。
追加ヒント
85同歩で桂を入手。93玉を85桂で仕留める。
推理将棋89-3 解答 担当 NAO
▲8六歩 △9二香 ▲8五歩 △9四歩
▲8四歩 △9三桂 ▲8三歩不成 △同 飛
▲8六歩 △8五桂 ▲同 歩 △6二玉
▲8四歩 △7二玉 ▲8三歩不成 △同 玉
▲8一飛 △9三玉 ▲8五桂 まで19手。
条件
・先手は8筋の着手のみ(86歩、85歩、84歩、83歩不成、86歩、85歩、84歩、83歩不成、81飛、85桂)
・2手目は歩以外の着手(92香)
・▲85同歩という手に対して初めて玉を動かした(12手目62玉)
・最終手の桂打ちで先手の持ち駒は無くなった(19手目85桂)
・成る手はなかった(7手目83歩不成、15手目83歩不成)
- 美野樫兄妹シリーズの6問目は、八重が初登場の19手詰。たった一人、8筋の着手のみで勝ってしまいます。8筋着手条件のため初手が86歩に限られ3手目以降も歩を突いていくしかなく、長手数の割にはとっかかりやすいはずです。しかし、端玉の詰み形と85同歩と取る駒が桂であることが想定しづらく、思考の最後に伏線手2手目92香が明らかになる中編推理問題です。
- 先手は「86歩~83歩不成」を2回繰り返しますが、2回目の86歩~83歩の間、85で桂、83で飛を取ります。後手は12手目以降4手掛けて玉を93に移動し、先手は81飛打の後、85桂で端玉を射止めます。
- 推理の鍵は、85同歩と取る駒種(桂)と詰み形の玉位置(93玉)の二点です。
- ▲85同歩と取る駒は?
初手から先手は86歩~85歩~84歩と進めるしかありません。3手目に85同歩と進めるのは困難なので、2回目の85歩が必要です。すなわち、歩を取って86歩と打ち85の駒を同歩と取ります。取る駒種は桂(解)のほか飛歩も考えられます
が、桂以外は上手くいきません。 - 85で桂を取る
「▲86歩 △A ▲85歩 △B ▲84歩 △C ▲83歩 △同飛 ▲86歩 △85桂 ▲85同歩 △62玉 」ここで△B~△Cは△74歩~△73桂か△94歩~△93桂か。後手のA、B、Cは一旦保留。 - 85で飛車を取る手順は逃れ
「▲86歩 △A ▲85歩 △84歩 ▲同歩 △同飛 ▲86歩 △85飛 ▲85同歩 △62玉」以下、13手目から「▲84飛 △74歩 ▲81飛生 △73玉・・・」玉の6筋への退路を塞ぐことができない。13手目から「▲84飛 △72玉 ▲81飛生・・・」玉の8筋移動ができない。また、13手目から「▲84歩 △72玉 ▲83歩 △同玉 ▲84飛 △92玉 ▲81飛生 以下」手数超過。 - 85で歩を取る手順も逃れ
「▲86歩 △A ▲85歩 △84歩 ▲同歩 △同飛 ▲86歩 △85歩 ▲85同歩 △62玉 ▲84歩」以下は、飛車を取る手順と同様に逃れ。
- 詰み形は?
最終手の桂打ちで詰む玉位置はどこでしょうか。8筋に桂を打って詰む玉位置は当然7筋か9筋に限られますが、7筋玉は6筋方面への退路を塞ぐのが難しく9筋玉に絞られます。桂の他に飛を奪って8筋の飛桂で詰ます形になります。85で桂を取る手との関連で、先の△B~△Cは△94歩~△93桂と進め、最終玉位置が93に決まります。 - 93玉に85桂打
後手は12手目62玉で初めて玉を動かし、残りの3手で△72玉~△83玉~△93玉と進める。伏線手の2手目△Aは△92香に決定。13手目以降「▲84歩 △72玉 ▲83歩不成 △同玉 ▲81飛 △93玉 ▲85桂まで」 - 94玉に86桂打の形は逃れ
14手目以降の後手は、玉に3手(72-83-94)と他に1手(95歩)以上必要。 - 95玉に87桂打の形も逃れ
14手目以降の後手は、玉に4手(72-83-84-95)必要。
それではみなさんの短評をどうぞ。
作者 「条件を把握すれば先手のみならず後手の指し手もかなり制限されているのが分かるはずです。この状態で2手目△92香を果たして何番目ぐらいに考えられるかが最大の関門だと思います」
■序盤から考えて△92香はまず浮かばない一手でしょう。推理の最後に決定する伏線手。この手が入って狭い制限のなかで考えさせる密室推理将棋となりました。
くるぼん 「85に突っ込む駒を飛車と思って悩む。桂を飛ばせば先手が打った飛車を動かす必要がないのに気付いて解決」
枡彰介 「ヒントが無ければ永遠に8五同歩で飛車を取る手ばかり考えてました」
諏訪冬葉 「桂馬で詰ますためには玉を9筋に誘導して退路を飛車で潰す。まではすぐ浮かんだのですが、桂馬は飛車で取るとばかり思っていました」
■85同歩で飛車を取って飛で桂を取る順は玉が立ち往生します。ここで悩まれる方が多かった。
孔明 「始めは8五で取らせる駒が桂馬だと思っていたんですがその時は▲8二歩不成で飛車を取って最終形を▲8二飛▲8一金型で考えていました。▽8三同飛から最終形▲8一飛型に気付いた時は8五で取らせる駒を飛車で考えていたのでなかなか正解にたどり着けませんでした。考えていたのは4手目▽8四歩▲同歩▽同飛~▽8五飛でこれだと▲8二飛~▲8一飛不成とするので2手目▽9二香だと9三に玉が入れなくて悩んでました。始めの考えの桂跳ねに戻ってようやく解けました」
■鋭い第一感は信じるのが吉。82飛型は手数超過しますね。
占魚亭 「同じ地点での2度の歩不成がいいですね」
斧間徳子 「解答を書いていて、86歩~83歩生が繰り返されていることに気づき感心。それにしても八重ちゃん、強い!」
■86歩~83歩生を繰り返し、飛、桂を打つだけ。八重のやっていることは簡単なんだけど勝っちゃった。
隅の老人B 「最初に想定した詰上がり図が適中。上級?珍しく爺さんには簡単でした。それでも解けて、大喜び」
■この詰み形が想定できるのは素晴らしい解図センスです。
Pontamon 「会話を読み進めた際、八重だけの出番なので飛角サンドイッチと思いきや、トドメは桂とのことなのでこの系統が浮かびました。解いた後で試しに飛角サンドイッチで詰めてみると、とても19手では…」
■2手目34歩と突けたとしても角の登場は遠いですね。
小山邦明 「後手の桂を93から動かすのが、玉の移動場所確保のためのポイントですね」
■玉位置と取り駒種が確定します。
NNN 「面白い問題でした。すっきりした詰め上がりで私は好きです。始めは桂の単騎詰めと考えましたが、後手の手も足りない。飛を使うと気づくと答えが見えました」
■飛桂の連携の攻めでないとなかなか詰み形になりません。
DD++ 「85同歩というのが、3手目の強制85歩は同にできないし、最後まで引っ張ると今度は邪魔駒になるし、非常に憎たらしい条件。19手としては楽な部類ですが、並の15手くらいの難度はあるでしょう。果たして何人正解できるでしょうか」
■追加ヒント前は8名解答でしたが、最後は19名全員正解。同歩で取る桂と詰め形93玉開示のヒントはサービスしすぎでしたか。
飯山修 「飛と桂をとって吊るし桂はすぐ分かったが95だとばかり思って、93玉は1秒も考えてなかった。直前ヒントを見て呆然。指導将棋でプロの上手に感想戦で"この局面でこう指せばよかったですね"と言われた時の感触とよく似ていた」
■95玉型には手数足りませんね。結局、序盤で92香の一手が指せるのが粋な伏線でした。
はなさかしろう 「玉条件と持駒条件がなければ15手の詰み形。手順条件がなかなかうまく捉えられず、的が絞りにくい問題でした」
■詰み形だけなら『▲86歩 △92香 ▲85歩 △94歩 ▲84歩 △62玉 ▲83歩不
成△72玉 ▲82歩不成 △同玉 ▲85飛 △93玉 ▲81飛不成 △XXXX ▲85桂まで15手』ですが、玉移動と持ち駒の限定で形も手順も見えなくなりました。
山下誠 「8二ではなく、8三で飛車を取るのが早道とは不思議」
■2回目の83歩不成で取るのがぴったりのタイミング。飛を早く取り早く打ってしまうと玉移動が困難になりますから。
波多野賢太郎 「これはとても面白かったです。玉も歩も動かせない2手目でいきなり悩んでしまいましたが、詰上がりがわかったところで、2手目の謎やその後の手順もスッキリ判明しました。8筋だけの着手だけで詰ますなんてよく考えるなぁと思いました」
■いきなり2手目を推理するのは難しい。推理の末に伏線手が判明するのは味がありますね。
S.Kimura 「ヒントを見るまで,後手玉の位置は一段目か二段目と考えていたため,桂馬で詰ます形が分からず,苦戦していました」
■桂打ちで仕留めるための三段玉。8筋だけの攻めなので一段玉や二段玉では抜けてしまいます。
小木敏弘 「89-1、89-2はノーヒントで解けましたが、89-3はヒントを見て解きました。ヒント前は9筋で詰むという考えがなく、7筋で考えていたので解けませんでした」
■ヒント待ちは必勝定跡です。大いに活用してください。
加賀孝志 「8筋のみの条件はおお助かり、長い作品でも手が出た」
■手数は長くても先後とも選択の幅は狭いですから。
たくぼん 「たまには長いのもいいですね。手数は長いけど考えやすい作品」
■細い手順を上手く繋いでいくのはたくぼんさんお得意のジャンルでした。
正解:19名
飯山修さん S.Kimuraさん NNNさん 小木敏弘さん 斧間徳子さん
加賀孝志さん くるぼんさん 孔明さん 小山邦明さん 隅の老人Bさん
諏訪冬葉さん 占魚亭さん たくぼんさん DD++さん 波多野賢太郎さん
はなさかしろうさん Pontamonさん 枡彰介さん 山下誠さん
総評
チャンプ 「今回は無事全員参加となりました(笑)実は六実と七海が双子だったり、八重は強烈な性格だったりと、このシリーズは情景を思い浮かべながら解いて頂けると幸いです」
たくぼん 「美野樫家登場人物多すぎて何が何だか(笑)」
くるぼん 「この兄妹の活躍を楽しみにしてます」
S.Kimura 「『美野樫9兄妹』シリーズを楽しませて戴きました。次回も期待しています。でも,9兄弟が負ける対局はあるのでしょうか」
■スケールの大きな展開ですが、大河ドラマというより朝の連ドラ(笑)のような親しみやすさでしょう。今後の展開も目を離せませんね。
枡彰介 「89-2が全部男性陣だったので、その流れで89-3は全員女性陣かと思ったら予想の斜め上をいくまさかのソロ!1人で指す将棋と変わらなくなりましたが、満を持して登場した八重は美野樫9兄妹の切り札だったんですね」
波多野賢太郎 「続編を待っていたので、いつも以上に楽しみながら解きました。八重さんの出番があって良かったです(笑)。そして、八重さん一人で勝利した19手の問題がやっぱり印象に残りました」
■八重は九兄妹の最終兵器でした。
DD++ 「不成大好き美野樫家」
■これまでの6局全対局で不成を指し、今回は3局とも不成の手が2回づつ現れましたね。
隅の老人B 「いろいろな事情があって、5月は解答が出来ないかも。別に、一番槍を狙ったわけでもないし、ゴ-ルデン ウイ-クで遊びに行くわけでもない。 で、すこし早い解答ですが、よろしくお願いします」
Pontamon 「『美野樫9兄妹』シリーズ、町の将棋大会を制して全国大会への続きがあるのかな?第89回は一日出遅れてしまいました。毎月、22日くらいから出題チェックをする必要がありそうですね。」
■ご両名には、出題の翌日24日に解答いただきました。気分のいい一番解答目指すなら当日解答でしょうけど、易問特集の90回、91回は激戦が予想されます。皆さまのご健闘を期待しています。
推理将棋第89回出題全解答者: 19名(全員3問正解!)
飯山修さん S.Kimuraさん NNNさん 小木敏弘さん 斧間徳子さん
加賀孝志さん くるぼんさん 孔明さん 小山邦明さん 隅の老人Bさん
諏訪冬葉さん 占魚亭さん たくぼんさん DD++さん 波多野賢太郎さん
はなさかしろうさん Pontamonさん 枡彰介さん 山下誠さん
当選: NNNさん
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