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看寿賞作品の煙詰率

[2015年7月12日最終更新] 煙と他の長編の受賞率を追記

詰将棋の欠片看寿賞受賞回数(総合・短・中・長・特別)という記事を見て、久しぶりに全詰連看寿賞作品別一覧表を眺めてみた。この一覧表、作品を説明する欄が全くないので、もともと受賞作を知っている人でないと見てもさっぱりわからないのが玉に瑕。立体曲詰とかダブル七種合とか再帰連取り趣向とか連続打診中合とか、簡単な分類でもあれば、役に立つ表になるだろう。

少し見ていて気になったのが、長編で煙詰系(小駒煙、都煙などを含む)が目立つこと。数えたら、第1回の「宇宙」から第53回の「枯野行」まで、なんと26作も受賞していた(長編賞、特別賞、奨励賞)。もちろん、優れた作品が受賞するのは全く問題がないのだが、あまたある長編作品の中で受賞作のこの煙詰率はちょっとすごい。看寿以降200年作れなかった煙詰の呪縛が今でも詰棋人の中に残っているんだろうか。

これらの作品の受賞理由を読んでいると、煙詰にしては「新しい追い方、新しい収束、長手数、趣向入り、xx入り」という感じのことばが並んでいる。しかし、煙詰以外の受賞作と比べてみると、手順はかなり見劣りする。それは「煙詰」という制約のもとで創作するわけだから、制約なしで思う存分力を発揮した作品と同じようにはいかないのは当然ともいえる。

この26作のうち、特別賞2作、奨励賞3作を除いた21作はすべて長編賞を受賞しているのだが、煙詰としてはすごい、曲詰としてはすごい、というような作品群は、むしろ特別賞にふさわしいのかもしれない。この26作が仮に煙でなかったら、それでも受賞する作品は何作あるか、と考えたとき、長編賞はやはり条件との複合ではなく手順のすばらしさ、未来を切り開く新しさで選ぶべきではないかと思うのである(あくまで私見)。

ちなみに、煙ということを除いても長編賞をあげたいと私が思う煙は、近藤真一さんの貧乏煙(看寿賞作品の改作、趣向がすさまじい)と橋本孝治さんの全編趣向煙(玉移動49マス、盤面をもっとも活用)ぐらい。両方とも看寿賞にはなっていないけど。

[2015年7月12日追記]
煙詰率という表題にしながら、割合を書いてなかったので追記する。

  • 長編(51手以上)の受賞作:76作
  • 煙詰系の受賞作:26作(34%)
  • その他の受賞作:50作(66%)

詰将棋一番星煙詰全作品によれば、煙詰(都、小駒、貧乏など含む)の数は338作なので、看寿賞の受賞率は7.6%。煙詰系以外の長編作品の数は約6000作(データベースから推定)とすると受賞率は0.8%。

煙詰の受賞作はすべて200手以下なので、200手以下と200手以上で分けてみると、

  • 200手以下: 煙詰系26作、その他21作
  • 200手以上: 煙詰系0作、その他29作

200手以下では過半数が煙詰系だった。一方、詰将棋一番星超長編全作品によれば、200手以上の作品は236作なので、200手以上の作品の看寿賞受賞率は12.3%と、煙の受賞率をもしのぐ。200手以下の煙以外の作品数は、これも大雑把に約6000作とすると、0.35%で、200手以下の煙以外の作品で看寿賞を目指すのはとても厳しいことがわかる。

この数字を見ると、200手以上の超長編部門を設け、また煙詰、曲詰などは特別賞、という運用が適切なのではないかという気がしてくる。


煙詰系の看寿賞受賞作

番号作者題名分類受賞
2 田中鵬看 宇宙 双玉煙 長編賞 S37
5 黒川一郎 嫦娥 小駒煙 長編賞 S38
8 山田修司 織女 歩なし煙 奨励賞 S39
9 山田修司 牽牛 貧乏煙 奨励賞 S39
20 駒場和男 かぐや姫 都煙 長編賞 S42
24 駒場和男 父帰る 還元玉都煙 奨励賞 S45
25 若島正 地獄変 煙詰 長編賞 S46
39 駒場和男 三十六人斬り  無防備煙 長編賞 S53
42 柳田明 稲村ヶ崎 煙詰 長編賞 S54
51 伊藤正 月蝕 小駒煙 長編賞 S56
59 添川公司 妖精 煙詰 長編賞 S58
60 伊藤正 天女 煙詰 長編賞 S58
62 添川公司 帰去来 双玉無防備煙  長編賞 S59
75 赤羽守 妻籠宿 煙詰 長編賞 S63
78 橋本孝治   無防備煙 長編賞 H01
81 馬詰恒司 修羅王 無防備煙 長編賞 H02
85 添川公司 大航海 七種合煙 長編賞 H04
92 浦野真彦 春時雨 煙詰 特別賞 H06
95 堀内真 未知との遭遇 煙詰 長編賞 H07
101 新ヶ江幸弘  伏龍 煙詰 長編賞 H09
117 近藤真一   煙詰 長編賞 H12
121 近藤真一   貧乏煙 長編賞 H13
133 添川公司 早春譜 煙詰 長編賞 H15
146 安武翔太   煙詰 長編賞 H20
159 岡村孝雄 涓滴 石垣煙 特別賞 H24
170 添川公司 枯野行 煙詰 長編賞 H25

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コメント

看寿賞の選考が大きく変わった平成14年度(2002年発表作品)から、一般的な煙詰の受賞は少なくなったように思います。煙詰から一歩踏み出した「奇兵隊」「涓滴」のような作品が将来どれほど出てくるか……

投稿: 匿名 | 2015.07.10 22:58

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