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不利先打、不利逃避、不利合駒

[2015年8月7日最終更新] 添川公司さんの作品紹介を追加

詰将棋の手筋の中に、不利xxと呼ばれるものがある。不利先打、不利逃避、不利合駒などである。

これらの手筋、もちろん詰将棋の手順の中に現れるのだから、ルール上当然本当は有利なのだ。つまり、不利といっても、「局所的に見ると不利と勘違いしやすい」という意味なので、若干これらの用語には違和感がある。ほとんどの詰キストは一見不利そうでも実は有利な場合があることを知っているし、実際に有利か不利かは両方の手順を読まなければわからず、そして両方読めば不利と誤認することもないわけだから。

これらの手筋が珍しかったときには、プラス要素として用語の意味があったと思うが、今のような不利xxのインフレ時代で、初心者でもなければ知っているようになると、こういう言い方がプラスになるのかマイナスになるのか微妙なところではある。例えば飛不成や歩不成は同じように用語を作れば不利不成となるだろうが、こちらは古くから作品が多数作られてきたこともあってそういう言い方をする人はいない。そもそも詰将棋は不利感を演出することが多いので、こういう用語を作ると、不利捨駒、不利移動、不利限定打、不利打替えとか、いくらでもできそうだ。

Wikipediaには不利先打不利逃避はあるが、なぜか不利合駒の項目はない。不利先打の項目に、応用として「不利先打の玉方応用」の説明はあるが、これは2回合駒するときの順番についての話なので、不利合駒とはちょっと違う? なお、応用には盤面の駒に拡張した「不利先捨」も掲載されている。

借り猫かもによると不利合駒は「歩合で良さそうなところを、飛(金、銀、香)などを合駒して打歩詰に誘導し、延命を図る」手筋とされており「角や桂の合駒は、歩と利きが重複する部分がないので不利合駒とはいわない。」と書かれている。しかし、詰パラなどでの用例をみると、人によっては歩合でなく角合するのも不利合駒だとか。合駒は1回だけでも角先角歩とか。こうなってくると直接的に「打歩詰誘致の限定合」とかいった方が混乱しないような気がする。ただし、打歩詰に関係ない不利合駒もある。例えば歩合を後でするためにとりあえず香合をするようなケース。これは普通に香先香歩と呼べばいいだろう。

Furisenda 不利先打も、香先香歩とか個別に言った方が通りが良さそう。借り猫かも○先○△を見ると龍先龍金とか金先金銀とか、盤駒の話だったり不利有利と関係ない用例もあるようで、ちょっと拡張しすぎの感もある。だいたい、両方成立したら手順前後なので、どちらかに限定させれば必然的に○先○△か△先○△になるような。

飛先飛香が当たり前になった時代には、裏をかいて香先飛香の方が手筋になるのかもしれないなあと思って一つ作ってみた。詰キストは飛打、香打のどちらを不利に感じるだろうか。

本作は打歩詰は無関係だが、○先○△には打歩詰がらみの歩先飛歩の例も載っている。ただ、初手歩打を同×と取らないので、そういうのも歩先飛歩というのか、用語として使うなら条件を明確にする必要があるだろう。もっとも、ややこしい定義は一般的に普及せず、シンプルな(誤った)定義に駆逐されることが多い。それなら最初から表面的に○先○△または△先○△になっているものはすべてそう呼ぶと決めてしまった方がすっきりするかもしれない。


2015年8月7日

谷川幸永さんから、コメント欄で添川公司さんの香先飛香作品(棋譜ファイル)をご紹介いただきました。

4手目、12手目の飛合は(香合の変化はあとで飛合がでてくるわけではないので)飛先飛香と呼ぶか疑問ですが、8手目と12手目玉方の香先飛香で結果的に香を渡さないのを持駒変換で香を入手して詰方の飛先飛香で打歩詰を回避するというおもしろい作品。見かけ上の有利不利を言い出すとかえって混乱しそうですね。

柿木義一さんの Kifu for Flashを使わせていただいています。手順が鑑賞できない場合はFlash Playerをインストールしてください。

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コメント

本論よりも作例の方に「ロックオン」してしまったような。

>>詰キストは飛打、香打のどちらを不利に感じるだろうか。

空を斬るような質問ですね。
あえて(少しカッコつけて)言えば、この作品は「解者に、有利・不利という感覚を超越したナマの数理的思考を要求する」とでもなりましょうか。本記事の主題と比べて、この作例は高尚過ぎるようです。あるいは、有利・不利感というのは「思考節減のための方便」なので、本格的思考を要求するパズル型作品にはなじまない、とでも言っておきましょうか。
という訳で、パズル感覚とは縁遠い作品に、私の「飛香の相対的価値」(ここで言う「有利・不利感」と等価でしょう。)という羅針盤がぐるぐる回り出したように感じた「受方香先飛香」の例があるので、紹介しておきます。(借り猫さんの「〇先〇△」では取り上げられていないので、「不適切な挙例かも」という不安はあるのですが。)――
  添川公司作・29手・めいと1985.3アンデパンダン
  攻方:15銀18金26銀29桂48香55と58金59馬
  受方:14と17桂23歩34歩35金36玉45歩46と
  持駒:香
(つづく)

投稿: 谷川幸永 | 2015.08.07 19:53

(続き)
全体のストーリーは、受方が2回の飛先飛香で打歩詰誘致するのに対し、攻方は、飛⇒香の「不利交換」と飛先飛香で打歩詰回避する、というもの。この展開自体は、ありふれたものらしく、同じ作者の最初期の作品にも見られます(29手・余詰・近将1979.10)。いずれにせよ、「飛車より香が貴重」という状況が作為されているわけです。
そして、主眼手は、その途中に挿入された8手目47香合の「香先飛香」。その意味は、「飛車が品切れにならないように」というもの。解図はできたのですが、鑑賞段階でこの手の価値を考えたとき、私の弱いおツムは、「飛車を節約しているのだから、飛の方が香より貴重?」と訳が分からなくなってしまったのです。
どうやら、「打歩詰ロジック」と「合駒品切ロジック」で、飛と香の相対的価値が1回ずつ反転している、ということのようです。

投稿: 谷川幸永 | 2015.08.07 20:19

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