推理将棋第92回解答(3)
[2015年8月29日最終更新]
推理将棋第92回出題の92-3の解答、第92回出題の当選者(斧間徳子さん)を発表します。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。
関連情報: 推理将棋第92回出題 推理将棋第92回解答(1) (2) (3)
推理将棋(おもちゃ箱) 推理将棋(隣の将棋) どんな将棋だったの? - 推理将棋入門
92-3 上級 はなさかしろうさん作 はだかの王様と几帳面な王様 18手
「陛下、隣国の王様を捕まえました。18手かかりました」
「捕まえたとき当方も先方も盤上に20人ずついたそうです」
「捕まえたとき中段にいたのは五段目の先方の王様だけでした」
「おぉ、なんと無鉄砲な。よろしい、とりあえずご苦労でした。先方の家臣もさぞかし気を揉んでいることでしょう。隣国の誼を心がけ、くれぐれも丁重にお送りするのですよ。ともあれ、良い訓練になりましたね。今日の出来事を振り返っておきましょう」
「歩の手が4手続いたことがありました」
「11手目は3七歩でした」
「なんと、歩が活躍したようですね。うむ、大儀でありました」さて、どんな将棋だったのだろうか?
(条件)
- 18手で詰んだ
- 詰め上がりで中段※にいる駒は五段目の先手玉のみ
- 詰め上がりで盤上にいる駒は先後共20枚ずつ
- 歩の手が4手続いた☆
- 11手目は3七歩
※ 本問で「中段」は四、五、六段目、つまり先手陣でも後手陣でもない地点を意味します。
☆ 本問で「続いた」は先手後手の通算で数えます。つまり「4手続いた」は"先後先後"あるいは"後先後先"のいずれかの連続着手を意味します。
出題のことば(担当 NAO)
裸の五段玉の位置と捕らえ方を推理しよう。
追加ヒント
2七に龍を動かして玉を追い、先手玉は1五で詰まされる。歩打ちは先後とも2回ずつあり、二歩にならないよう打場所を工夫する。
推理将棋92-3 解答 担当 NAO
▲4八玉 △3四歩 ▲3六歩 △3五歩
▲同 歩 △3二飛 ▲3七玉 △3五飛
▲2六玉 △3八飛成 ▲3七歩 △2七龍
▲1五玉 △3八歩 ▲同 飛 △3二歩
▲2八歩 △3三角 まで18手.
(条件)
・ 詰め上がりで中段にいる駒は五段目の先手玉(15の玉)のみ
・ 詰め上がりで盤上にいる駒は先後共20枚ずつ(双方とも駒取り2回と駒打ち2回)
・ 歩の手が4手続いた(2手目から△34歩 ▲36歩 △35歩 ▲同歩)
・ 11手目は3七歩
詰め上がり最終形の趣向として、"はだかの王様"(中段の駒が五段玉のみ)と"几帳面な王様"(盤上に双方20枚)を課した試みです。本作品は、この条件を満たす最短手数の18手手順の一つを作意としたものです。
"はだか"と"几帳面"を両立させる難しい課題をどう実現していくか、漫然と指してみても直ぐ手数オーバーし、18手の手数はとても短く感じられます。
はだかの王様と几帳面な王様の基本条件を整理してみましょう。
- はだか条件:中段には五段目の先手玉のみ。
玉が五段目に進出するのに8,7,6,5段目に移動し最低4手かかる。
五段玉が詰むとき王手駒は玉と離れている:王手は飛(龍) 角(馬) 桂 香のうちどれか。
五段玉を包囲する駒が必要。玉の腹、尻、斜め後ろを塞ぐ。
最終形では4~6段目に玉以外の駒が残らない。突いた歩は取られるか敵陣まで進むことになる。二歩にならないよう、歩は取られた筋に打つ。 - 几帳面条件:盤上には先後共20枚ずつ。
取った駒は全て打つ。先後ともに取る駒数と打つ駒数が同じ。
本作は「11手目37歩」を手がかりに解図していきます。
- 玉は37経由で5段目に進む。退路が少ない"端玉"に絞り込むと▲48玉~▲37玉~▲26玉~▲15玉と進む。
- 37歩を指すには、"先手3筋の歩を取らせる"、"後手の歩を取る"ことが必要。それには3筋の歩を取り合うのが早い。
- 歩を取り返すには足の速い飛を使う。4手続けて歩の手があるので、後手番から△34歩▲36歩△35歩▲35同歩~△35飛と進める。
- 後手が35飛と出た後は、玉が37に上がりづらい。よって△35飛より前に▲48玉~▲37玉と動く。ここまで「▲48玉~△34歩▲36歩△35歩▲35同歩~△32飛~▲37玉~△35飛~▲26玉~▲15玉」
15玉の詰形を作るには、退路を防ぐ駒と王手駒の配置を考えます。
- 龍で退路を塞ぎ角で仕留めるのがもっとも効率がよく、"27龍"と"33角"を組合わせる。
- "35飛"~"27龍"へのルートは、37飛成~27龍、37飛不成~27飛成、38飛成~27龍の3通りあるが、11手目▲37歩と上手く噛み合うのは10手目△38飛成~△27龍の手順のみ。初手から11手目まで「▲48玉 △34歩 ▲36歩 △35歩 ▲35同歩 △32飛 ▲37玉 △35飛 ▲26玉 △38飛成 ▲37歩」ここまで確定。
- 以下、△27龍~▲15玉~△33角の順で詰み形に至る。
はだか条件だけならこの14手で詰みますが、プラス几帳面条件のため、双方とも盤面20枚になるよう手順を尽くします。
- 後手は35と27で取った2枚の歩を打ちたい。ところが歩が切れているのは3筋だけ。先手に一歩を取ってもらえば、その筋に歩を打てる。
- 先手は歩をもう1枚取り返した後、歩の切れた2筋に打ちたい。ただし、歩を中段に打っては几帳面条件を満たさないので、歩を打つスペースを空ける必要がある。そこで28の飛を動かすが、このとき後手が38に歩を打っていれば飛で取り返す手がぴったりとなる。後手は32に、先手は28に各々歩を打つことができる:11手目から「▲37歩 △27龍 ▲15玉 △38歩 ▲38同飛 △32歩 ▲28歩 △33角」まで。
それではみなさんの短評をどうぞ。
はなさかしろう(作者) 「『はだかの王様と几帳面な王様』は、詰め上がり条件主体でどこまで長手数の問題が成立するのか、の実験的なシリーズで、20手以下、詰め上がり2条件は共通(『はだか』条件:中段には五段目の玉方玉のみ/『几帳面』条件:盤上には先後共20枚ずつ)、プラス手順限定2条件、の枠組みを設定しました。本問はシリーズの導入問題なので、11手目条件を『3七歩』と緩めていますが、『七段目』とするともう少し難しくなりそうです。導入問題といいながら本手順を見つけたのはシリーズの検討開始から2ヶ月後。18手の詰みは今のところ最短かつ本問の詰み形以外は見つかっていません」
■作者コメントのとおり『はだかの王様と几帳面な王様』は意欲的なシリーズ作品で、『はだか』と『几帳面』の詰形を両立させる手順を20手以下で実現する構想です。本出題以外にも数作セットで投稿いただきました。20手詰なら数パターンある詰形も、18手で詰むのは出題作の形だけ。シリーズ作品はいずれも長手数かつ難しいのでおもちゃ箱で出題できるか迷いましたが、本作に限れば"11手目37歩"がほどよい解図ヒントになっており比較的易しいので出題することとしました。"11手目7段目"とすると玉位置の予測が加わり、難解な腕試し"本格"推理将棋となっていたでしょう。
斧間徳子 「詰め上がりは容易に予想できるが、盤上双方20枚の条件により、緩みのない濃密な手順に仕上げているのに感服」
S.Kimura 「ヒントを見るまで,詰ます方法が思い浮かばず,苦労しました.14手目でも詰ますことができるわけですが,さらに4手かけても,盤上に双方20枚ずつという条件が大事なのでしょうね」
孔明 「詰み形がわからずとりあえず▲3七歩のために3筋の歩を3三まで進めて歩を打つと玉の移動と合わせて9手かかるので後手に取られた駒を取り返して打つ間がなくてどうしようかと考えていました。3筋の歩を飛車で取らせることを考えると3五だと2手余裕ができ、さらに11手目の▲3七歩の前に玉が六段目に移動できるとわかってからは早かったです。先後共に盤上に20枚というのが解けてみると素晴らしいというのがわかります」
■盤上双方20枚の"几帳面"条件は、最終目標の詰みとは直接関連せず、不思議な付加条件です。18手は"はだか"と"几帳面"を両立できる最短手数で、その手順も引き締まってますね。
飯山修 「最終玉位置は15か95が効率的で37歩を打つ事を考えると15に決まり。27龍配置に気がつけば後は盤面20枚の処理問題」
Pontamon 「27龍まで指してみると、後手は歩2枚の持ち駒で歩を打てる筋はひとつだけ。先手の駒は19枚しかないので何か駒を取って打たなければいけないのに王手が掛かっているので次は15玉。これじゃとても間に合わないと思い、読みを中断。一気に解決する38歩・同飛がなかなか見えませんでした。」
DD++ 「37歩が大ヒントですが、14手目が非常に見えにくい。手応えある難問」
■14手目以下の"△38歩▲同飛"が、"後手が3筋に2回歩を打つ"、"先手が2枚目の歩を取る"、"28に歩打ちの空間をつくる"を一気に実現する一石三鳥の好手順でした。
金少桂 「追加ヒントを見る前に諦めず最後にもう1回だけ挑戦してみた結果、ついにようやく解けた!…が追加ヒント前にはぎりぎり間に合わず。あまりに手広く、このヒント内容に書いてあることを自力で決め打てるまでにいろいろ試行錯誤してものすごく時間がかかった。取ってしまった邪魔な持駒の歩をやりくりする細かい動きが面白く、また一番難しかった」
山下誠 「3八歩から2八歩が絶妙の間合い。歩打ちが3回になるので不安ですが」
■盤上の歩で取られるのが3枚ですね。そのうち1枚は打った後もう一度取られます。結局、歩打ちは先後とも2回ずつの4回でした。
NNN 「最初は最終形が15玉で1、2筋に飛、香を並べる形かと思いました。が、歩をさばく手数が足りません。なるべく初期配置の歩を取らないようにとなると、、、△33角で15玉を仕留める?、、、とすると△27に龍で最終形に、、、なるな!解けてうれしいですね」
■飛香を並べる形は"はだか"と"几帳面"を両立できる形の一つですが最低20手かかり、"37歩"とは全く噛み合いません。
隅の老人B 「詰上がり図は、たぶん、これだと想定できたが、手順がなかなか決まらず」
小山邦明 「10手目の後手の38飛成が素晴らしい手でした」
小木敏弘 「条件、手順、名作と思います。たぶん、15で詰むとは予想しましたが15歩を取らせての角引きの空き王手や、27にと金を作り33桂で25の地点を塞ぐ筋などいろいろ迷い込みました。最終図から考えてはだめだと、先手の37歩が取られる場所、先手がどの歩を取るかをしらみつぶしに検討し、やっと38飛成に気がつきました。まさか、ふたをするまえに入り込むとは・・・、11手目37歩の条件が意外性を高めています。ヒントなしで解けたので良かったです。条件が非常におもしろくて良いです」
■意外性を高める38飛成後の"11手目37歩"ですが、実は大ヒント。15玉の詰形と歩を切る筋が3筋と解ります。仮に"11手目7段目"だと手がかりが少なく途方に暮れたことでしょう。
たくぼん 「15王のヒントがあって何とか解けました。ノーヒントだと無理でしょう」
■11手目37歩の手がかりから15玉は予想できますが、15玉と明示してあるとなお安心でした。
占魚亭 「ギブアップです」
■難問への挑戦お疲れ様でした。無解でのコメントも歓迎します。
正解:13名
飯山修さん S.Kimuraさん NNNさん 小木敏弘さん 斧間徳子さん
金少桂さん 孔明さん 小山邦明さん たくぼんさん DD++さん
はなさかしろうさん Pontamonさん 山下誠さん
総評
Pontamon 「記念すべき初の初級入選なのに、その自作を即座に解けなくて、ちょっと 自信喪失。上級の難問は、今回はヒント待ちをしなくて済みましたが、今後、手応えのある難問が出題されれぱヒント待ちの回も出てきそう」
■Pontamonさんは解図も創作も格段に腕を上げました。が、難問では追加ヒントは大いに活用してください。
はなさかしろう 「採用ありがとうございます。実験的な問題は特に、どのように受け止めていただけるか、楽しみかつ緊張します。92-3は「はだか」条件達成の詰み目前で「几帳面」条件を満たすための手順が始まるので、ふた味になってしまっているのが気がかりです」
■確かな解き応えを求める解答者も少なくありませんので、二段構えの構成でも好評でした。間延びせず手の中身が濃いので大丈夫です。
DD++ 「特集とかでない場合は今回のように難度幅が広いのが理想ですよね。とはいえ、理想通りに投稿が集まらないのが担当の悩みどころですが」
■バランスよく出題したいが、選題もなかなか難しいです。短手数、長手数問いませんので皆さまのご投稿をお待ちしております。
飯山修 「長編は2回に1回くらいあってもいいと思います」
■思わず解きたくなる条件で難易度ほどほどの長編が理想です。
変寝夢 「18手ともなるとそうとう条件が絞られないと難しいですね。3手ごとに絞られていたら100手でもあっという間ですが。そういう意味では1番は相当解きにくいイメージでした」
■自作プログラムでの解答、ありがとうございます。いずれは検討をお願いするかもしれません。
たくぼん 「難問というお触書に諦めかけましたが何とか間に合って良かったです」
小木敏弘 「いろいろ多忙なこともあり、ぎりぎり間に合いほっとしています」
隅の老人B 「92-3で苦戦。20日の早朝6時半にようやく攻略、今朝は雨降り、涼しいのが良かったかな」
■苦戦していても、締切り間際は何故か解図力がアップするんですね。
推理将棋第92回出題全解答者: 18名
飯山修さん S.Kimuraさん NNNさん 小木敏弘さん 斧間徳子さん
加賀孝志さん 金少桂さん 孔明さん 小山邦明さん 隅の老人Bさん
攻めダルマンさん 占魚亭さん たくぼんさん DD++さん はなさかしろうさん
変寝夢さん Pontamonさん 山下誠さん
当選: 斧間徳子さん
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