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推理将棋第95回解答(2)

[2015年11月29日最終更新]
推理将棋第95回出題の95-2の解答です。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。

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95-2 中級 渡辺秀行さん作  と金と成駒 11手

「と金を成駒で取ったって?それでどうなったの?」
「うん。11手で詰んでしまったよ」

(条件)

  • 11手で詰んだ
  • と金を成駒で取った

出題のことば(担当 NAO)

 と金を早く作る手順を推理しよう。

追加ヒント

 9手目の31歩成で銀を取る。10手目は同龍。


Suiri952 推理将棋95-2 解答  担当:NAO

▲7六歩  △3二飛  ▲3三角不成△5二玉
▲4二角不成△3七飛成 ▲3二歩  △5四歩
▲3一歩成 △同 龍  ▲5三銀 まで11

(条件)
・と金を成駒で取った(10手目△31同龍)

本作は11手詰を最小1条件で表した傑作です。1条件とはいっても、"と金を成駒で取った"の中にはヒントとなる情報がいくつか詰まっています。歩が成る手、相手の駒が成る手、成駒がと金を取る手を推理していきましょう。

と金を作るには、歩を突き進めて成るか、打った歩を成るか、いずれでしょうか?

  • 歩を突き進めて成るには4手必要。歩が成ってできたと金は、後に取られるので攻めには使えない。ならば後手の歩突き、先手の角成りの手順が有力。たとえば「▲96歩 △94歩 ▲97角 △95歩 ▲53角成 △96歩 ▲31馬 △97歩成 ▲同馬」と後手のと金を先手馬が取るよう進める手順が有力だが、残り2手では足らない。
  • 結局、歩を打ってと金を作る手順が早い。足の速い大駒を活用し、先手角が歩を取り、歩を取った筋の歩を取らせながら後手飛が成り、先手が歩を打つ。有力なのは3筋と4筋。
  • 3筋:先手角が33に飛び込んだ後、後手飛が37に成る手順。「▲76歩 △32飛 ▲33角不成 △XXXX ▲42角不成 △37飛成」と進める。後の歩成で銀を入手できるので4手目は△52玉として、7手詰の基本型の一つ"52玉形+▲42角~▲53銀"で詰みに至る。7手目以降「▲32歩 △54歩 ▲31歩成 △同龍 ▲53銀」まで、これが作意手順。
  • 4筋:先手角が44歩を取り、後手飛が47に成る手順。「▲76歩 △44歩 ▲同角 △XXXX ▲53角成 △47飛成」と進む。後の歩成で金を入手できるが・・・7手目以降「▲42歩 △XXXX ▲41歩成 △同龍」と進み、詰まない。たとえば8手目△72金あるいは△32銀と守りの効きを外しても41龍の効きが強力なため残り1手では詰まない。

解いてみれば、7手詰手順(例 ▲76歩 △52玉 ▲33角不成 △42銀 ▲同角不成 △54歩 ▲53銀迄)に対し、先手は2手(▲32歩~▲31歩成)を足し、後手は1手(△42銀)を省略して別の3手(△32飛~△37飛成~△31同龍)を加えた手順:11手=7+2-1+3でした。詰みに関係のある本手順を見せず、僅か1条件だけで限定できるのが不思議で巧い表現でした。

それではみなさんの短評をどうぞ。

渡辺(作者) 「と金と龍を同時に素早く作るのがポイント。9手目と10手目は詰に全く関係ない条件を満たすだけの手」

たくぼん 「何と言っても1条件が素晴らしい。完全とは・・・」

斧間徳子 「最も基本的な詰み形ですが、銀を42ではなく31で取らせるのが斬新であり、何よりたった1条件で限定しているのが凄い。1条件の11手詰って、めったにできないですよね」

はらたっと 「7手詰の変形ですが、と金を成駒で取るという条件が素晴らしいです」

山下誠 「この素朴な条件で成駒が3一のと金に限定されていることに驚きました」

■42の銀を同角不成の1手で取るの7手詰の基本手順。本作はそれを42に角を空成りしてから打った歩が成って31の銀を取る手に振り替えました。基本手順を隠して、無駄手の部分を1条件にしているのが巧みです。

攻めダルマン 「うまい条件ですねやっぱり」

加賀孝志 「簡単明瞭なヒント条件がうまい」

小木敏弘 「角でなく歩で銀を取る味。こういうヒントは難しい、あれこれと試行錯誤しました」

■本作のような簡素条件は、解図ヒントが少ない分、手応えのある推理を楽しめます。

波多野賢太郎 「まずなにより、これだけの条件で手順が決まるのか、というのが驚きでした。歩を打ってと金を作るには、その筋の歩を取ってもらわないといけないので、そこから飛車の活用が思い浮かびました」

小山邦明 「後手の成駒は飛が手数的に最短と考えて取り組みました。簡素な1条件で見事に限定できていてすばらしいと思いました」

孔明 「とっかかりがなく悩みましたが足の速い駒が先手は角、後手は飛車なのでそれぞれ歩を取らせてと金を作るとあっさり解けました」

■すんなり3筋の飛を指せれば、早く解けますね。7手詰と8手詰の基本手順を組み合わせた感触です。

飯山修 「先手・後手のどちらが話しているのか全くわからない文章が実にうまい。後手のと金を最初考えたがすぐほぼ不可能と判明。素直に考えれば早い」

■後手のと金の筋は、先手か後手か1手足りませんでした。

金少桂 「11手をたった1条件、それもごちゃごちゃした条件じゃなく簡潔な条件で限定できているのが何より素晴らしいと思う。解く側としては、あまりのヒントの少なさにどこから手をつけたものかわからず、正直に言ってものすごく苦戦した。間違いなく、次の上級問題より難しいと思う」

■1条件問題は、鍵に気づかないと思わぬ難問になります。もっとも本問は7手詰の変型なので、難度は普通の中級程度で間違いないでしょう。

Pontamon 「52玉を生角+53銀で詰める形の最短は7手。この問題は11手詰なので後手は2手余分に指せるが、飛を振って、成って、戻ってでは3手かかるので、この詰み上がりは無いと最初に除外してしまったのが大失敗でした」

■7手、9手と基本型を覚えると手数計算ができますね。本問では無駄手の足し算だけでなく、引き算(△42銀が不要:マイナス1手)も必要でした。

はなさかしろう 「11手でここまで簡潔な1条件が成立するということに感服。切れの良い条件に最敬礼すべく裏推理を封印したところ、第一感の△57歩成▲同馬からの両王手狙いが一手足りず、暗礁に乗り上げかけましたが、後手飛の活用がぴったり噛み合ってすっきり解決しました」

■両王手狙いとは「▲76歩 △54歩 ▲66角 △55歩 ▲93角成 △56歩 ▲58飛 △57歩成 ▲同馬 △74歩 ▲84馬」の手順でしょうか。惜しくも42退路塞ぎが足りず、詰みませね。

DD++ 「41歩成同龍は守りが強すぎるのと53馬の位置が悪くて詰まないんですが、際どいのでこっちに深入りした人も多そう」

はせ次郎 「条件が少ない、ヒントが少ない問題は考えていて楽しいです。そう言う意味でとても楽しい問題です。『と』が先後どちらか解らない、どの筋かも解らない、ただ歩を普通に伸ばしていくのは間に合いそうにないのでお互いに歩を取り合う必要がある。直ぐにひらめくのは76歩 44歩 同角 42飛 53角成 47飛成 42歩 ××× 41歩成 同竜 ・・・ あと1手ではどうしても詰まない。じゃあ3筋なら、で見事に解けました」

まさ 「32飛か42飛の2択。最初は42飛~41龍の筋を読まされた」

占魚亭 「最初4筋にと金を作るのかと思いましたが、3筋が普通ですよね」

諏訪冬葉 「▲44角▲53角成の方が早いかと思ったら、竜が強くて詰まなかった」

■一目、53馬が残るので4筋でも詰みそうな感じだが、龍の効きが強かった。早く解けるかどうかは指運ですが、4筋から考えた方は2局分楽しめました。

桝 彰介(無解) 「ヒント後に解けたら再解答します。普通に自陣の歩を進めて成るには4手かかるのをどうするか、ですね」

■角と飛で歩を取り合う順の発見が解図の第一歩。追加ヒントが足りませんでしたか?

変寝夢 「プラス条件で"初手76歩"、"2手目32飛"、"3手目33への着手"、"6手目37飛成"、"9手目31歩成"、"10手目同龍"を指定して、2分281万局面でした。7手の詰め上がりを用いて作る場合は、無駄手をどう面白くするかが大変な作業かと思います」

■3筋の手を全部指定してしまうとは・・・初期条件多すぎませんか?4筋とか他の筋の検討はどうでしょうか。

のくせに 「と金で成駒を取る順をしばらく考えて手が足りず悩む」

S.Kimura 「と金で成駒を取る、と勘違いをしたため難儀しました」

隅の老人B 「条件はたったの二つ、これで手順が決まるとは! 条件の3文字目、『を』を『で』と読み間違えて大苦戦。ハイ、老眼鏡の買い替えですね」

■短い1条件問題でも、同じ読み違いをされた方が約3名。

くるぼん 「序盤が95-1に似すぎているのは偶然?」

NNN 「ヒントを見るまで全く条件を満たす手に気付きませんでした。なんとも見事に一条件になっているものですね。後で気付きましたが、1問目と先手の手が途中まで一緒だし、詰み上がりも似ていますね」

■手順は2手目が異なっており、52玉型の詰形も種々あります。似て非なる手順と形を味わってご鑑賞ください。


正解:27名

  飯山修さん  S.Kimuraさん  NNNさん  加賀孝志さん  くるぼんさん
  小木敏弘さん  斧間徳子さん  金少桂さん  孔明さん  小山邦明さん
  隅の老人Bさん  諏訪冬葉さん  攻めダルマンさん  占魚亭さん  たくぼんさん
  DD++さん  のくせにさん  はせ次郎さん  波多野賢太郎さん  はなさかしろうさん
  はらたっとさん  変寝夢さん  Pontamonさん  まささん  山下誠さん
  RINTAROさん  渡辺さん

(当選者は全題の解答発表後に発表)

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コメント

私のコメントは間違いで9手目は銀を取っていますね。本問では42角で銀を取っていないのをうっかりしていました。

投稿: 渡辺 | 2015.11.30 00:14

読み間違いの件について。
「成駒で、と金を取った」の方がよかったでしょうか?語順に関係なく『「と金」が取られる方とは思わなかった』のならどうしようもないですが。


変寝夢さんの機械検討について。
確かに、変寝夢さんの追加条件は、もう解けてしまっている感じですね。

しかし、実際11手を完全に機械検討するのはかなり骨だと思います。私の試算では11手で詰む手順(同一局面でも手順が異なれば別とカウント)は数十億から100億通りくらいではないかと予想しています。もちろん詰まない順はその100倍とか1000倍とかではきかない程(例えば7手で詰む順は11局面29通りですが、詰まない順を含めると億を越える局面数になったはずです)ある訳ですので全検は不可能に近いです。

となれば、手数を遡って短い手数で判定することを考えないといけません。<11手目までに>と金を成駒で取った→<10手目までに>と金と成駒ができた→<9手目までに>成れる位置の歩と成駒があった→ここからはと金の元の歩を打ったかどうかで場合分けし、打った場合は→<8手目までに>成れる位置に歩を打った→<7手目までに>歩を取り合った、など。
これだけで現実的な時間で計算できる程になるかどうかは難しいので、「多分こうだろう」で6手目に龍が出来るとかを入れることになるかもしれません。こういうのを入れると「多分」でないところに潜む余詰を検討する力にはならない訳ですが...。

投稿: 渡辺 | 2015.11.30 01:13

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