推理将棋第96回解答(3)
[2015年12月29日最終更新]
推理将棋第96回出題の96-3の解答、第96回出題の当選者(テイエムガンバさん)を発表します。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。
関連情報: 推理将棋第96回出題 推理将棋第96回解答(1) (2) (3)
推理将棋(おもちゃ箱) 推理将棋(隣の将棋) どんな将棋だったの? - 推理将棋入門
96-3 上級 はなさかしろう作 一番街の駒取り祭 15手
「どうだった? 最近町が静かすぎるから、リアル将棋祭を企画したんだけど」
「うん、面白かったよ。15手で詰んだみたいだけど、その間に直前の手で成った駒が2回と生駒が3回も取られたからね。しかも駒取りはすべて、目の前の1筋で起きたからラッキーだった。駒を取らない1筋の手はたったの1手だけだったよ」
「そりゃなんたって駒取りが華だから、特別観覧席のある一番街でやる決まりなのさ」
「なるほどそういうことか。実は、なにしろ盤が大きいから、局面がどうなっているのかまではよくわからなかったんだ。先手が歩の手を1回だけ指したのと、その手に対して後手が三段目の手で応じたのが、ちょっと変わってるなぁとは思ったんだけど」
「やっぱり見づらいかぁ。大型スクリーンとかドローンとか、工夫がいるかなぁ」
さて、どんな将棋だったのだろうか?(条件)
- 15手で詰んだ
- 駒取りは1筋のみで、直前の手で成った駒が2回、生駒※が3回取られた
- 駒を取らない1筋の手が1手だけあった
- 先手唯一の歩の手に対して後手は三段目の手で応じた
※生駒というのは成駒ではない駒のことです。
出題のことば(担当 NAO)
1筋の駒取りが5回。効率のよい取り方を推理しよう。
追加ヒント
駒成りは6手目△17角成と13手目▲11香成。両王手で詰み。
修正の経緯
(修正1) 条件「駒を取らない1筋の手が1手だけあった」を追加
(修正2) "成駒"→"直前の手で成った駒"に変更
推理将棋96-3 解答 担当 NAO
▲9八香 △3四歩 ▲9九角 △4四角
▲8八飛 △1七角成 ▲同 香 △4二玉
▲7六歩 △3三玉 ▲1三香不成△2二玉
▲1一香成 △同 玉 ▲1八飛 まで15手。
(条件)
・駒取りは1筋のみで、直前の手で成った駒が2回(△17角成 ▲同香、▲11香成 △同玉)、生駒が3回(△17角成、▲13香不成、▲11香成)取られた
・駒を取らない1筋の手が1手だけあった(15手目▲18飛)
・先手唯一の歩の手に対して後手は三段目の手で応じた(9手目から▲76歩 △33玉)
駒取りを1筋のみで行う一番街の駒取り祭。1筋条件に隠された詰みは11玉を自陣からの両王手で仕留めるという壮大な構想の作品です。難解さも今年の一番で間違いないでしょう。
◆与えられた条件から詰形を想定するのは困難ですので、"1筋の駒取り"と"先手唯一の歩の手"を手掛かりに解図していきます。1筋を破るのに早い駒は、やはり角。使うのは先手、後手どちらの角でしょうか?推理していきましょう。
- 後手角で1筋を破る手順が正解
△34歩~△44角~△17角成と進めれば6手目に17に届く。以下、▲17同香~▲13香と進める。ところが、"唯一の先手の歩の手に対して後手3段目の手で応じる"ことが必要であるので、6手目△17角成に至るまで、初手~5手目に先手は自陣内に3手も着手することになる。自陣内で攻めに有効な手段はあるのか?これが本作品の最大の謎であり解図の鍵になる。 - 11玉への両王手を目指す
1筋の駒取りは、△17角成 ▲17同香~▲13香不成~▲11香成 △同Xと進めれば"直前に成った駒"2回と"生駒"3回を満たす。後手は△34歩~△44角~△17角成の後、残り4手を玉移動に使えば▲11香成を"△同玉"と取ることができ、両王手の筋に入る。
先手は自陣内で▲98香~▲99角~▲88飛と両王手の準備を行う。初手から「▲98香 △34歩 ▲99角 △44角 ▲88飛 △17角成」
先手の歩の手に対しては後手は三段目の玉の手で応じる。7手目から「▲同香 △42玉 ▲76歩 △33玉」
以下、「▲13香不成 △22玉 ▲11香成 △同玉 ▲18飛」まで両王手の詰み。
- 先手角で1筋を破る手順は?
▲78銀~▲79角~▲56歩~▲13角成と進めれば7手目に13に届く。以下、△13同香~△17香成~▲同Xと進めることができる。
有力なのは1筋に飛を寄って、玉が1筋に近づく手順「▲78銀 △34歩 ▲79角 △42玉 ▲56歩 △33玉 ▲13角成 △同香 ▲18飛 △17香成 ▲同飛」
ここまで、駒を取らない1筋の手が1手(▲18飛)あり、先手唯一の歩の手▲56歩に対して後手は三段目の手△33玉と応じている。
ところが、1筋の駒取りは直前に成った駒を取る手2回、生駒を取る手が2回だけで1筋の後手駒が残っておらず失敗。
また「▲78銀 △34歩 ▲79角 △42玉 ▲56歩 △33角 ▲13角成 △同香 ▲XXXX
△18角 ▲同飛 △17香成 ▲同飛 △32玉」も一手届かない。
本作、11の玉を自陣からの両王手で仕留める壮大な構想の難解中編で、作者会心の一局のはずでしたが、出題時に余詰めがあり2回の修正が入りました。
(修正前の余詰、ご指摘はDD++さん)
▲78銀 △14歩 ▲56歩 △13角 ▲79角 △42玉
▲13角成△32玉 ▲14馬 △同香 ▲18飛 △17香成
▲同飛 △22玉 ▲12飛不成 まで。
"駒を取らない1筋の手"が4回(△14歩、△13角、▲18飛、▲12飛)
(修正1後の余詰1、ご指摘はDD++さん)
▲38飛 △34歩 ▲28飛 △44角 ▲18飛 △17角成
▲同飛 △42玉 ▲13飛成△32玉 ▲76歩 △13香
▲同香成△42銀 ▲22角成 まで。
(修正1後の余詰2、ご指摘は孔明さん)
▲18飛 △34歩 ▲XXXX △44角 ▲XXXX △17角成
▲同飛 △42玉 ▲13飛成△32玉 ▲76歩 △13桂
▲11角成△42飛 ▲21角 まで。
"直前に成った駒"を3手後で取る手順(▲13飛成~△13香/桂)
それではみなさんの短評をどうぞ。
はなさかしろう(作者) 「改めまして、余詰と修正ミスをお詫びします。たいへんおこがましいのですが、実は本作は高坂研さんの通称『0番』へのオマージュです。そこで、いただいたご指摘を活かすべく、遅まきながら検討をやり直しました。
制作時の検討では、後手の1三への着手で三段目条件を満たす順がなぜかすっぽり抜けていたようです。従って、応急措置では元出題の「三段目の手」を「3三への手」に修正すべきでした。しかし、そもそもの原因は、制作時の余詰対策の際に「玉」隠しにこだわり、1筋条件を強化する方向を選んでしまったことにあります。修正案は以下の通りです。
--------------------------------------
・15手で詰んだ
・1筋で成駒2枚と生駒3枚が取られた
・7六歩に対して3三玉で応じた
--------------------------------------
論理上のミニマムよりも記述を簡素にすることを優先し、紛れも少ない方を選びました。解図の糸口が増えたので、裏推理を使えば難易度も中級まで下がっているかもしれません。
みなさまにはもとより、素材に対しても申し訳ないことでしたが、取り組んでいただき、ご指摘も寄せていただきましてありがとうございました」
■作者の思い入れがある作品だけに、完全作で発表したかった。力至らず申し訳ありませんでした。『7六歩に対して3三玉で応じた』この条件だけで縛れれば素晴らしい。78銀~79角の筋はぎりぎり詰まないですね。
斧間徳子 「出だしは78銀、34歩、56歩、33角、79角、12飛と決め打ちしたため時間を浪費。この手順以外に、先手が歩を突くまでに有効かつ手順前後の効かない順はないかと考えたらアッサリ解けました。スケールの大きな作品だけに余詰・修正が残念」
DD++ 「なるほど、最大規模の両王手でしたか。解けてから見れば『盤が大きいから』とか、狙いを匂わせるヒントがちらほら……」
加賀孝志 「この両王手は秀逸旨い」
たくぼん 「先手の歩の手が1手というのが大きなヒント。実に壮大な構想でした」
■最大規模の両王手。なかなか思い浮かばない詰み形の構想手順です。
渡辺 「雪隠両王手詰最短手順でしょうか。これは超難問。この条件付け(最初はさらに少なかった)で余詰なしと読み切る論理が浮びません。考えあぐねている途中でたまたま発見したものの、条件を元にどうやって手順を絞り込んだらいいのか見当も付きません。『歩を突かず、手順前後の発生しない、後に1筋に効く事前工作』と考えれば先手の最初の3手は浮びますが、こういう考えは検討には使えません」
■中編の構想作、かつ、意図的に狙いを隠す条件付けとなると、作意を見つけることも余詰めを見つけることも難しいですね。ロジカルな検討手法があればいいんですけど。
孔明 「ヒントの1一香成と両王手のおかげで詰み形がわかりようやく解けました。ただ6手目▽1七角成のヒントは混乱を招きました(笑)
ヒント前には▲7八銀~▲7九角も考えていたんですが▲9八香~▲9九角は盲点でした」
飯山修 「1回しか歩が使えないのは物凄いストレス。3回手待ちの代表手順が作意でしたか。79角の順から抜け出せませんでしたが直前ヒントが甘めで助かりました」
■"両王手"を明示しないと難しく、正解者数も減ったことでしょうね。別案ヒントで"5手目88飛"もあったかもしれません。
Pontamon 「ヒント待ちを決め込んでいたのに、ヒントが出てもヒントの条件をクリアしている後手の三段目着手がない両王手の手順『▲98香、△34歩、▲99角、△44角、▲88飛、△17角成、▲同香、△42玉、▲13香不成、△32玉、▲76歩、△22玉、▲11香成、△同玉、▲18飛』から伸展せず。総評とギブアップの短評を書いていて、△33玉にようやく気付きました。(お恥ずかしい)
▲76歩と▲13香不成の手順前後がある詰み手順なのは気付いていたのに、解図途中で紛れ筋を読んだときに『6手目△33玉はない』と結論していたのが尾を引いて、△33玉はないと思い込んでました。別の両王手で詰む紛れ手順もあり、ヒントの出し方も素晴らしい作品でした。(解答のあつまり具合によっては『駒成りは6手目の17地点と13手目の11地点。両王手で詰み』も候補にあったのかな?)」
■修正1前後の余詰解もいただき、3つの解答をいただきました。追加ヒントは2手を明かすことは決めていましたが、"両王手"をヒントに加えるかどうかは迷いました。
NNN 「ヒント無しでは全く分かりませんでした。角を引いて敢えて空き王手の筋を作るとは・・・。2問目の余詰みも王手ではなくとも角道を飛車で塞ぐ点で同じような筋だったのてすが・・・」
諏訪冬葉 「最終手段『ヒント待ち』で詰み型を予想できたものの序の3手が浮かばず苦戦しました。」
波多野賢太郎 「今回はこの問題ばかりずっと考えて悩んでいました。結局ノーヒントでは解けず、ヒントを見てようやく解決しました。私にとってはこの手順は驚愕の結末という感じでした。歩は序盤に突かないと仕方ないとばかり思っていましたし、そうなると角か桂馬をなるべく早く進撃させるしかないと思っていました」
隅の老人B 「初手に10日間の苦労。5手目までが難しい」
■初手から▲98香~▲99角~▲88飛は、1筋条件に引き寄せられるとなかなか指しがたい手順です。
小木敏弘 「この開き王手にず~~~と、気が付きませんでした。78銀、79角、56歩か、18飛、36歩のどちらかなのにと悩みまくりました。まさか、先手の歩がこんなに遅く出来るとは・・・。終わりの形が見えたら瞬殺でしたが、見えなかった」
S.Kimura 「引き角であることは予想していましたが,79ではなく,99に引くとは思いませんでした」
攻めダルマン 「考えてるうちに不可能かと思いましたが穴角戦法とは」
■まず、79の引角に手が動くのが普通の感覚ですね。将棋倶楽部24で穴角戦法を観戦したことがあります。高段の方が、88飛-99角を上手く捌いて圧勝してました。
山下誠(無解) 「6手目1七角成のヒントで、先手の1・3・5手目がますます分らなくなり、白旗です」
小山邦明(無解)「『先手唯一の歩の手に対して後手は三段目の手で応じた』の着手が全く推理できませんでした」
占魚亭(無解) 「駒取りが上手くいきません。降参です」
■今回追加ヒントは、"やや甘め"としました。それでも超難解作でありますので白旗も気にしないで結構です。
正解:16名 (双方解:DD++さん、孔明さん、Pontamonさん)
飯山修さん S.Kimuraさん NNNさん 小木敏弘さん 斧間徳子さん
加賀孝志さん 孔明さん 隅の老人Bさん 諏訪冬葉さん 攻めダルマンさん
たくぼんさん DD++さん 波多野賢太郎さん はなさかしろうさん
Pontamonさん 渡辺さん
総評
はなさかしろう 「高坂研さんの『0番』は私が推理将棋に熱中するきっかけになった2つの手順のうちのひとつです。もうひとつの『6手合い利かず』に対しては46-3『馬術競技』を作っていたので、今回『一番街の駒取り祭』を採用していただけてとても嬉しく、これで作者としての煩悩が解消されるはずだったのですが、やんぬるかな」
■『0番』とは、次の条件(原案とは表現を変更、作意略)です。
(条件)・10手で詰んだ、・不成4回、・終図で後手持駒が角歩
予備知識のある今なら、すぐわかりますが、当時は驚きの手順だったことでしょう。
Pontamon 「2015年を締め括るのに相応しい、中級・上級の難問2題でした。はなさかしろうさんの上級はギブアップ寸前でした。
2014年の第74回で推理将棋に出会い、初挑戦の推理将棋ということもあってか解けなかった問題があった記憶。どんな作品だったか見てみると、解けなかった74-3の作者は奇しくもはなさかさん。はなさかさんに2年連続で全問正解を阻まれたかと思いましたが、今年はどうにか全問正解でした。来年は全問正解+ノーヒントを目指します。それでは、皆さん良いお年を」
■2016年も作品投稿と解答をよろしく。解答ではノーヒント全問正解を期待しております。
占魚亭 「締切日に手つかずだったことに気付き、急いで解きましたが全問制覇ならず。すみません」
■惜しい。〆切日は棋力倍増しますが、難問出題のときは早めに解図をした方がよさそうです。
小木敏弘 「今回は大変苦しみました」
■余詰がなければ難解作で締まったんですけど・・・
斧間徳子 「15手くらいの中編になると、余詰のリスクが格段に増えますね」
DD++ 「NAOさんにとっては胃の痛む回だったこととお察しします。お疲れ様でした」
たくぼん 「今回は難易度が高くかなり焦りながらの解図でした。解けて良かった。余詰は出るものです。お気になさりません様に」
■お心遣いありがとうございます。15手以上の中編で一見緩い条件になると、検討が難しいです。解いてみて作意が先に見えるものは、特に余詰探しが困難になります。
渡辺 「今回は最後が難問。だめ元の手が詰むと急に脱力しますね。推理将棋を始めたころ以来の久し振りの体験でした。96-3のような問題は訂正できない詰パラだと検討に自信がなくとても出題できません。訂正可能なウェブ媒体ならではの出題だと思います」
■訂正前提で出題するつもりは毛頭ありませんが、結果的にウェブ媒体の柔軟性に甘えて、助かってます。割り切って、今後も思い切った選題をやっていきたいと考えます。
変寝夢 「もう早いもんで年末ですか。来年もよろしくお願いします」
波多野賢太郎 「今回は何と言っても3番が強く印象に残りました。悩みに悩んだおかげで、解決したときはちょっと衝撃でした。できればノーヒントで解きたかったですが…。1年の最後にふさわしい作品だったと思います。ありがとうございました。2016年もよろしくお願いいたします」
隅の老人B 「3番で苦労、ヒントを読んでも、初手が判らない。16日の早朝、98香に気づく。これで、気分良く、新しい年が迎えられる、そんな思いあり。『単純な爺さん、ここに在り』です。来年も宜しくお願いします。良いお年をお迎えください」
■2016年も推理将棋をよろしくお願いします。
推理将棋第96回出題全解答者: 23名
飯山修さん S.Kimuraさん NNNさん 小木敏弘さん 斧間徳子さん
加賀孝志さん 金少桂さん 孔明さん 小山邦明さん 隅の老人Bさん
諏訪冬葉さん 攻めダルマンさん 占魚亭さん たくぼんさん
DD++さん テイエムガンバさん 波多野賢太郎さん はなさかしろうさん
変寝夢さん Pontamonさん 桝彰介さん 山下誠さん 渡辺さん
当選: テイエムガンバさん
おめでとうございます。
賞品をお送りしますので、賞品リスト
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