推理将棋第97回解答(1)
[2016年1月25日最終更新]
推理将棋第97回出題の97-1の解答です。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。
関連情報: 推理将棋第97回出題 推理将棋第97回解答(1) (2) (3) (4)
推理将棋(おもちゃ箱) 推理将棋(隣の将棋) どんな将棋だったの? - 推理将棋入門
推理将棋第97回解説 担当 NAO
年賀詰特集の前半4題、例年に比べてやや難しめの中級が並びましたが楽しんでいただけましたか。解答者数は22名、年始としてはまずまずです。
97-1 中級 はなさかしろう 作 指し初め*2016*二番 11手(2解)
「あけましておめでとうございます!指し初めしに来たよ」
「謹賀新年!ではさっそく、振り初めを…。一局目は君の先手だね。恒例どおり、元日にちなんで11手で詰みにするとして、今年の味つけはどうする?」
「2016年だから・・・11手だと先手は6手指すので、それぞれの手の着手点の筋と段を示す数を全部掛け合わせたら2016になるように指してみようかな」
「なるほど。棋譜表記が同の手の場合でも、同じ着手点に何回か指した場合でも、一手ごとに着手点の筋と段の数を出して、得られた12個の数の積を2016にすることにしよう」
「うむ…… いざ参る」
「よし来た、アシストは任せてよ」「これで11手目、先手の着手点の筋と段を示す数の積が2016になって詰んだね」
「玉を寄る手に対して成る手で応じていたけれど、結局成る手はその一手だけだったね」
「今度は君の先手だよ」
「うむ…… アシストは頼んだよ」「これで11手目、先手の着手点の筋と段を示す数の積が2016になって詰んだね」
「今度も玉寄りに対して唯一の成で応じたけれど、手順は一番目と違っていたね」
「二番とも狙い通りで、幸先良いね」さて、指し初めの二番とはどんな将棋だったのだろうか?
(条件)
1) 11手で詰んだ
2) 先手の着手点の筋と段を示す数の積が2016 ※
3) 玉寄りに対して唯一の成で応じた
以上の条件を満たす手順が2通り※本問では、棋譜表記が同の手の場合も着手点の筋と段を示す数をカウントしますし、同一地点に複数回着手があってもそれぞれ別個にカウントします。例えば、▲2六歩△4二玉▲2五歩△2四歩▲同歩△3二玉▲2五飛△4二飛▲2三歩成まで9手で詰みの手順の場合、先手の着手点は26~25~24~25~23ですので、着手点の筋と段を示す数の積は2×6×2×5×2×4×2×5×2×3=57600です。
出題のことば(担当 NAO)
3手目迄は必然手。1筋と1段目の上手な使い方を推理しよう。
追加ヒント
初手76歩~3手目22角不成は必然手。2016=(7x6x2x2)x12であるので、先手の残り4手の筋と段の積はわずか12。一局は(11,12,13,21)、もう一局は(11,11,22,31)の組み合わせから手順を推理する。
| A: ▲7六歩 △3四歩 ▲2二角不成△4二玉 ▲1二角 △3二玉 ▲1一角成 △1四歩 ▲1三香 △4二飛 ▲2一角不成まで11手。 (条件) |
|
| B: ▲7六歩 △3四歩 ▲2二角不成△3三桂 ▲1一角不成△2二飛 ▲同角不成 △5二金左 ▲1一飛 △4一玉 ▲3一飛成まで11手。 (条件) |
|
年賀詰の一問目は、"2016"が一桁の素数に因数分解できることに着目し、指し手の筋と段を関連づけた作品。先手着手地点の組み合わせは限られていますが、具体的な詰手順を探り出すには骨のある本格推理問題となっています。
2016を素因数分解すると、2016=(2x2x2x2x2)x(3x3)×7です。これは一見大きい数字のようでも、先手の着手点6手分の筋と段を示す数の積としてはかなり小さい数字です。
- 5を含まないため5段目着手が不可。序盤は、角道を空けて角が飛び込むしかない。初手から「▲76歩 △34歩 ▲22角不成 」までは必然。2016=(7x6x2x2)x12であるので、先手の残り4手の筋と段の積はわずか12。
- 着手点の筋と段の積が12となる4手の組み合わせは、
(11,12,13,21),(11,12,12,13),(11,13,21,21),
(11,12,21,31),(11,12,12,31),(11,21,21,31),
(11,11,13,22),(11,11,22,31),(11,11,13,14),(11,11,13,41),(11,11,14,31),(11,11,31,41),(11,11,12,23),(11,11,12,32),(11,11,21,23),(11,11,21,32),
(11,11,12,16),(11,11,12,61),(11,11,16,21),(11,11,21,61)等。11地点の着手数は1回か2回。
- 11地点を1回だけ使う場合、12地点を2回使う順や21地点を2回使う順は手が繋がらず失敗。12と21を1回づつ使えば、先手12角~21角+後手42玉~32玉の筋がある。11角成は玉寄りの後に入れると、4手目以降「△42玉 ▲12角 △32玉 ▲11角成」以下、21角 42飛で詰む形。余した残り"3"を使うため13地点に遊び手の香打を入れる。8手目以降「△14歩 ▲13香 △42飛 ▲21角不成」まで。これが一つ目=A局の手順。
- 11地点を2回だけ使う場合、14,16,23,41,61を使う順は11地点との連係が悪く手が繋がらない。二つ目の手順は後手が協力して22地点で飛を渡す手順:先手11角~22角~11飛~31飛+後手22飛~41玉の筋で進めるが、22飛の前、詰形の準備で後手桂を跳ねておく。4手目以降「△33桂 ▲11角不成 △22飛 ▲同角不成 △52金左 ▲11飛 △41玉 ▲31飛成」まで。=B局の手順。
- 他のきわどい筋:"玉寄り"と"唯一の成"の条件がなければ、33玉型に11馬で詰ます手順(76歩 34歩 22角不成 32銀 13角不成 42玉 12角 33玉 21角成 42飛 11馬)や居玉を31飛成で詰ます手順(76歩 34歩 22角不成 33桂 11角成 12飛 同馬 52金左 21飛 62金上 31飛成)がある。
それではみなさんの短評をどうぞ。
はなさかしろう(作者) 「今年は掛け算を使う千載一遇のチャンス。しかし、まず「後手は足して28」には届かず。完全2解(どちらの手順に対しても、もう一方の解手順を除けば条件が必要十分になっている)も惜しくも成立せず(31飛成までの順は「玉を寄った/成1回」が必要十分ですが、21角不成までの順は「玉寄りに対して唯一の成で応じた」が必要)。というわけで、フロンティアを残しつつ、本年もよろしくお願い申し上げます」
■今年も気の利いた構想作のご投稿をよろしくお願いします。
たくぼん 「積が2016なんて条件で創ろうと思う発想が素晴らしい。飛を取る方の手順の方が時間がかかりました」
小山邦明 「2016を着手点としてうまく分解して面白い手順ができていると思いました」
金少桂 「2016が5で割り切れないので歩、桂の出動が不可、飛も難しそうなので角が出動するんだろうなぁというところまで一目。初手76歩とすると2016÷(7×6)で残り48。ほぼ右上だけでのやりとりがわかるので、21角生までの方は比較的すぐ見つけたが、2つ目の解答が見つからない。飛を奪って使う方は追加ヒントを見てようやく見つけました。11に2回も着手するとは。にしても、2016の素因数が全て1桁で、よく割り切れるからこその問題。次にこのネタを使えるのはいったい何年後だろう」
■2016が7以下の素数の積で表せることに気づいて作品化した目の付け所が素晴らしい。少なくとも西暦では当分の間使えないネタです。
DD++ 「13香が出てこずに結構悩みました。76歩に抵抗がかなりありますが、他はまずないので安心して掘り下げられますね」
■5段目の手が指せないので16歩はダメ。抵抗があっても76歩しかありません。
Pontamon 「何十年かぶりに素因数分解して、2016=2^5×3^2×7 を算出し、1筋と1段目も含めて着手可能な地点の組み合わせを全て洗い出してから、出題のことばに気付く。確かに3手目までは必然で、残りは2が2個と3が1個。あと4手指さなければいけないのだから1段目か1筋の手を絡めるしかなく、ひとつ目(A局)の手順は瞬殺。本当に今回の最難問なのかと思ったら、ふたつ目(B局)が判らない。確かに難問でした」
NNN 「2つ目(B局)は実力がはっきり表れそう。私はヒントなしで分からなかったですね」
■2解は、全く異なる形なのでどちらか一方に気づいてももう一方の解は連想しづらいんです。どちらが難しいか?B局の方を難しく感じられた方が多数派でした。
諏訪冬葉 「(A局)まさか無駄手が入るとは。(B局)11に2回指す順は絶対最終手▲11角だと思っていました」
山下誠 「A局は1四歩、B局は3三桂が味わい深い。2016は不思議な数だと改めて思いました」
■無駄手の13香を指させる後手の14歩がいい味でした。
小木敏弘 「(B局)33桂の味が好きです。(A局)今回一番考えました。31ではなく、13でしたか。」
隅の老人B 「(A局)無駄手?の13香打を見落として9手で終わり。奇妙?で長考。 (B局)こちらは意外と簡単に攻略。33桂跳びが鍵でした」
■22飛の経路を残しながらの有効な協力手が33桂跳ね。
波多野賢太郎 「いきなり難問でかなり悩みました。先に分かったのは角打の方でしたが、1三香がなかなか浮かびませんでした。もう一つの解は、なんとなく飛車を取るんだろうとは思いましたが、2二で取って1一飛打とはなるほどなあと思いました。面白い条件で、しかも全く異なる二通りの手順が現れて、年賀作としてもぴったりの素晴らしい作品だと思いました」
飯山修 「(B局)直前ヒントをみても全然わからず。11->31と指せる手がないとダメと判ってやっと飛に手がのびました。2016年にふさわしい良問。11手は奥が深い」
攻めダルマン 「(A局)ヒントみてなんとか。将棋数学パズルですね。この手順は比較的早くいけた。(B局)11に飛車を打つと気づくまでに時間がかかりその手順も思いつきづらかった」
S.Kimura 「詰み形が見えず,最後に解けたのがこの問題でした.13香と,11飛から31飛成が,なかなか浮かびませんでした」
占魚亭 「(A局)21馬までと決め打ちして苦戦しました。(B局)飛車を取ることに気付くまで、かなり時間がかかりました」
■33桂の後に11飛~31飛の組合わせが妙に浮かびづらい形です。
斧間徳子 「4手目33桂が見えず、久々の直前ヒント待ちになってしまいました。2016を因数分解する突飛なアイデアも感心しましたが、『2解』という出題法は余詰対策を放棄したとも取られかねず、好きになれません」
■2解求める問題は好みもありますが、本問は、異なる手順で2局分楽しんでいただきたい。
渡辺 「これは少し骨です。最初の3手が76歩、34歩、22角生で決まっていて、先手の残り4手が「11,11,22,13(or31)」「11,12(or21),12(or21),13(or31)」(または一応「11,11,12(or21),23(or32)」)で詰む形になる手順を順に調べれば良いのですが…。私がこのアイデアを持っていたらもっと易しく9手にして76歩、34歩、22角生、12香、11角打、42玉、31角生、32玉、22角右成で作るかと思います。2016は既に入っているし11を主張したければ11角打もあるので…」
孔明 「素因数分解して1つ目の手順はすぐにわかったのですが2つ目の手順(B局)に手こずりました。1一への着手を2回もするのが難しく、▽2二飛と飛車を取らせる手が見えるまで全くわかりませんでした。
※余談 9手で積が2016の手順を発見して思考の邪魔をしました(笑)。
手順:▲7六歩▽3四歩▲2二角不成▽1二香▲1一角打▽4二玉▲3一角不成▽3二玉▲2二角右成まで。これはこれでなかなか面白い手順です」
■味を付けて11手詰にするのがはなさか流。渡辺さん、孔明さんのご両名からは9手詰のご提案。確かに2016と11が入るすっきりした年賀詰です。9手詰1解を求める問題なら「玉寄りに対して唯一の成で応じた」は余詰があり、代わりの条件をどうしましょうか。
正解:21名
飯山修さん S.Kimuraさん NNNさん 小木敏弘さん 斧間徳子さん
金少桂さん 孔明さん 小山邦明さん 隅の老人Bさん 諏訪冬葉さん
攻めダルマンさん 占魚亭さん たくぼんさん DD++さん テイエムガンバさん
波多野賢太郎さん はなさかしろうさん Pontamonさん 山下誠さん
RINTAROさん 渡辺さん
(当選者は全題の解答発表後に発表)
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