推理将棋第98回解答(4)
[2016年3月7日最終更新]
推理将棋第98回出題の98-4の解答、第98回出題の当選者(山下誠さん)を発表します。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。
関連情報: 推理将棋第98回出題 推理将棋第98回解答(1) (2) (3) (4)
推理将棋(おもちゃ箱) 推理将棋(隣の将棋) どんな将棋だったの? - 推理将棋入門
98-4 上級 DD++ 作 新年の無茶振り 28手
「新年あけましておめでとう。早速指し初めしようぜ」
「ふむ、平成28年の1月1日か。では僕は28手目の『11と』で君の先手玉を詰ませたいのでよろしく」
「え?」
「それと僕は、初志貫徹で1枚の駒を着手し続けたい。ああ、でも、27年は終わったし、その駒で27地点に立ち寄りたくはないな」
「は?」
「君も僕もそれぞれ、唯一の成は駒を取らずに指したいね。お互い欲張った一年にはしたくない」
「ねえ、待って」
「その上で、君は歩を初手しか指さないのも成駒を動かさないのも余裕だよね」
「あの、ちょっと意味がわからないんだけど」
「なんだい。君が指し初めをしたいと言ったのだろう。じゃあ始めようか」さて、あなたは注文通りに指して無茶振りに応えることができるだろうか?
(条件)
- 28手目の「11と」で詰みにしたい
- 後手は、27を避けて同じ駒を着手し続けたい
- 先後それぞれ、唯一の成は駒を取らずに指したい
- 先手は、歩の手は初手だけ、成駒の手はなしにしたい
出題のことば(担当 NAO)
後手の"11と"で詰む形を推理しよう。
追加ヒント
先手は15手目▲11飛不成の後、5連続で動いた玉が21地点で詰まされる。
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推理将棋98-4 解答 担当 NAO ▲2六歩 △1四歩 ▲4八玉 △1五歩 |
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(条件)
・28手目の「△11と」で詰み
・後手は、27を避けて同じ駒を着手し続けた(初形13歩、経路14-15-16-17-18-28-18-17-16-15-14-13-12-11)
・先後それぞれ、唯一の成は駒を取らずに指した(10手目△18歩成、27手目▲13香成)
・先手は、歩の手は初手(▲26歩)だけ、成駒の手はなし
年賀詰の最後は、平成28年の年賀に因み、1枚の駒を動かし続けて"11と"で詰む28手、中編の年賀推理です。指し初めに課せられたのは自陣の"と金"で詰ます無茶振りでした。"11と"で詰むように後手は"と金"を作り、先手玉も後手陣に進入しないといけませんが守り駒が待ち構えています。
解図は条件を整理して詰み形に至るまでの手順の骨組みを作っていきます。
- 後手は同じ駒を着手し続けて11まで"と金"を引き戻す。1筋の歩を進めていくが、手順中に"唯一の成で駒を取らない"ので、先手の歩を取るときは不成で取ってから18に空成りしてから引き戻す。仮に後手の着手のみ一直線に進めると「14歩 15歩 16歩 17歩不成 18歩成 17と 16と 15と 14と 13と 12と 11と」と往復に12手かかる。残り2手はどうするのかは一旦保留。また、"11と"と引くためには邪魔な自陣の11香は先手に取ってもらう。
- 先手は"唯一の成で駒を取らない"ので、11香を1段目の不成で取る。すなわち飛を使い11飛不成を目指す。また、先手玉は"11と"で詰められるために玉が後手陣の奥"21地点"まで潜り込む。玉の経路を考えると初手に歩を突いた筋の7段目から中段に進出して、後手駒の効きのない23地点を目指す。11香がいなければ、14~23~12~21の経路で進入が可能。さて、初手はどの筋の歩を突いたらよいか?1筋への飛活用と右辺への玉進出に有効な26歩。玉の移動は一直線に進めると「48玉 38玉 27玉 36玉 25玉 14玉 23玉 12玉 21玉」と9手かかる。
- 双方の指し手を整理すると、
先手は、初手▲26歩、玉:▲48玉~▲21玉、飛:~▲11飛不成。
後手は、△14歩~△17歩不成 △18歩成~△11と。
両者を合わせて手順を組み立てる。 - 初手から「▲26歩 △14歩 ▲48玉 △15歩 ▲38玉 △16歩 ▲27玉 △17歩不成 ▲36玉 △18歩成」
- ここで飛が11に進むために"と金"と体を入れ替える手順が必要。11手目から「▲27飛 △28と ▲17飛 △18と ▲11飛不成 △17と 」(11手目から 25玉 17と 18飛 27と 11飛不成 17と と進めるのは条件"27を避けて"を満たさない)
17手目から「▲25玉 △16と ▲14玉 △15と ▲23玉 △14と ▲12玉 △13と ▲21玉 △12と」 - 最後は、11への19香の効きを消して収束する。先手の最終手は"唯一の成"で駒を取らない協力手13香成。27手目から「▲13香成 △11と」まで。
- 条件"先手成駒の手なし"は、「17飛~11飛不成」の代わりに「12香成~11成香」とする筋を消すため。
それでは皆さんの短評をどうぞ。
DD++(作者) 「『28経由で11へ行く』というのをどうにか形にしてみました」
Pontamon 「取った駒を打って13、23や32へ成るには手数が足りず、飛成で引くスペースも無くて困っていたら、▲13香成で全て解決。最終手『△11と』を同香成で取られないように事前に香を取っておかなければいけないという先入観から『△28と』に中々気付きませんでした」
■27を通らずに28を経由するのが無茶振り条件に現れないもう一つの狙い。
渡辺 「できる。(できないことを証明する問題だったら嫌だなぁ)
最初、先手の手数を数え間違えて1手足りないと思い込んでいたのですが、後日、手順を書き出して見ると間に合っていてびっくり。11香は飛で取るしかなく、27で躱すのもすぐに浮ぶかと思いますので、これも数え間違えなければすぐに解けるかと思います。『過去に指された将棋』に対する条件でないのが新鮮」
■無茶振りに応えることができるか?の問いには『できる』が正解!
NNN 「歩だけ動かして1一とで詰みというのが突拍子もなくて面白いですね。簡単そうで難しかったです」
加賀孝志 「と金の大追跡つかれました。2016年幕開けとしては難解でした」
RINTARO 「条件設定がくどいが、理解した時には素晴らしい詰手順が現れた」
はなさかしろう 「規格外の快作(怪作!?)で、凄いの一言です。まず、会話が楽しく、推理将棋と指し初めは相性が良いと改めて思いました。解図では条件をひとつずつ見ていったのですが、最後の『先手成駒の手なし』を早く取り入れるべきでした。後手の28→11のルートを一歩ずつ動かしていく手順と、先手の玉と飛の複雑なルートとが、不思議な条件でまとめ上げられており、長手数の楽しさ満載の一問でした」
たくぼん 「見事に21まで到達する手順に感服しました」
■11が後手方の"と金"が規格外の遠大な構想。先手玉は"と金"の追跡をかわしながら21へトライ。
諏訪冬葉 「そうか、先手の駒は27を通ってもいいのか」
隅の老人B 「二日間も考えて、初手の26歩に気付く。こんなことに二日間、それにしても暇人ですね」
占魚亭 「初手16歩・36歩の筋しか考えていなかったので、26歩は完全に盲点でした」
■後手は"27を避けて"、先手は玉飛が27を通る展開のため初手▲26歩。
孔明 「後手が歩しか動かせない状況で先手が1一の香車を不成で取る手は飛車しかないことはすぐにわかったんですがなかなか上手くいかず、初手に▲2六歩と突く手が見えてようやく飛車で取りに行く手順がわかりました。その後、先手の成る手がわからなかったんですが、12手目に香車を取らなければ成れると気付いて全て解けました」
小木敏弘「成りが駒をとらないというのが面白い条件です」
まさ「詰み形や後手のやることが決まっており、11香を不成で取る方法を考えれば方針は立てやすい。年賀向け好作」
波多野賢太郎 「すごい無茶振りがちょっと面白かったです。3番と手順が似ている上に、詰上がりがすぐ分かったので考え易かったですが、先手の成は飛車で、それをと金に取らせるんだと思ったので、そこは悩みました。1三に香成は盲点でした」
■11飛不成を軸に手順を組み立てれば、自然に絞り込める構成です。
飯山修 「27手目の謎が判った時の嬉しさは格別ですね。28手で収めるためには26歩しかないのも不思議」
S.Kimura 「玉を21に潜り込ませる手順が分からず,難儀しました。詰みに邪魔になる19の香は取らせなくても,13に成れば良いと気づいたときは,とても感動しました」
斧間徳子 「少し考えると11飛生が必要とわかるが、その飛車を15などに成るのかと思いきや、13香成とは・・・感動しました。『終わった27年を避ける』という条件もすばらしい!」
山下誠 「先手唯一の成が飛車ではなく、香車だと分かってやっと解決しました」
桝彰介 「玉が最終知的の2一に到達した後、最後の先手の手(27手目)をどう限定するかと思ったら、唯一の成が▲1三香成でピッタリ」
小山邦明 「『駒成は駒を取らずに指したい』という条件が、最終手にぴったりでした」
■駒を取らずに13に成る手が11への効きを消して、着地が決まりました。
正解:21名
飯山修さん S.Kimuraさん NNNさん 斧間徳子さん 加賀孝志さん
孔明さん 小木敏弘さん 小山邦明さん 隅の老人Bさん 諏訪冬葉さん
占魚亭さん たくぼんさん DD++さん 波多野賢太郎さん はなさかしろうさん
Pontamonさん まささん 桝彰介さん 山下誠さん RINTAROさん
渡辺さん
総評
波多野賢太郎 「今回の年賀詰特集もとても面白かったです。3番にすごく悩み印象に残りました」
斧間徳子 「98-3と98-4の序盤が似ているのが面白かった。この2局は正月早々の力作ですね」
小木敏弘 「同一駒の条件は、絞込みが出来るので大変助かります」
はなさかしろう 「今回の4問からは、旅の要素とでもいいますか、今までの推理将棋とは一味違う雰囲気を感じました。一方では10手までで実現できる詰形は計算ですべて洗い出しが済んでいる様子。これからの推理将棋の展開を考えると、短編にはコンピュータが入ってきて、長編は過程のおもしろさの追求が進んでいくのかな、と思ったりもしますが、98-4のような問題は果たして次々産み出されるものなのか、楽しみ半分おそろしさ半分といったところです」
■今年の年賀詰は中編の力作が揃いました。中長編の構想は無限です。たまには長いものも出題していきたいですね。
DD++ 「元日解答、残り数分でギリギリセーフ?」
渡辺 「今回は年賀らしい易しい問題で良かったです」
まさ 「新年早々面白い作品・易しい作品が揃い楽しめました」
NNN 「いつも楽しく解いています」
たくぼん 「長めですが楽しめる難易度で解後感良かったです」
■強豪の方々にも楽しんでいただいて何よりです。
RINTARO 「簡素図式が好き。条件が複雑だと自らの間違いに気づくのにも一苦労」
桝彰介 「前回は、難しくて解けず応募しませんでしたが、今回は3つ解けました。手数が28手と長いと、解けても解答を打ち込むのに時間がかかります」
隅の老人B 「今月は3題しか、いいえ、3題?も解けました。解けなかった1題の手順は如何?に、正解発表が待ちどうしいですね」
■1題解答も、短評のみも大歓迎。
占魚亭 「締切り前ヒントに助けられました」
S.Kimura 「今回もぎりぎりまでかかってしまいました。2月は日数が少ないのに,次回は難解作ですか。またもや,厳しい戦いになりそうです。
■2月出題の第99回難解9手詰はヒント待ちでクリアを目指しましょう。
推理将棋第98回出題全解答者: 23名
飯山修さん S.Kimuraさん NNNさん 斧間徳子さん 加賀孝志さん
孔明さん 小木敏弘さん 小山邦明さん 隅の老人Bさん 諏訪冬葉さん
攻めダルマンさん 占魚亭さん たくぼんさん DD++さん 波多野賢太郎さん
はなさかしろうさん 変寝夢さん Pontamonさん まささん 桝彰介さん
山下誠さん RINTAROさん 渡辺さん
当選: 山下誠さん
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