大道棋よもやま話 第36回 人間を超えて
[2017年3月26日最終更新]
詰将棋パラダイスで連載中の記事です。詰パラでスペースの関係で掲載できなかった資料全文なども補足していきます。
関連情報: 大道詰将棋よもやま話 ドキドキストリート (おもちゃ箱)
詰将棋パラダイス 2016年6月号掲載
大道棋よもやま話 第36回 人間を超えて 加藤 徹
5月3日から3日間、今年も世界コンピュータ将棋選手権が行われました。大道棋には関係ありませんが、筆者も運営に参加したので少しその話を。
今年は初参加が16ソフトもあり全部で51、一次予選はシードを除く36ソフトでスイス式7回戦で実施されました。
参加が増えたのは、一昨年優勝したAperyなど、強豪ソフトがライブラリーとして公開されたのが大きいですね。
そのこともあって、一次予選から超ハイレベル。9ソフトが二次予選に進出できますが、プロ棋士に全勝しているponanzaと半年前に電王トーナメント優勝を争った強豪ソフト、nozomiが予選落ちしたほど。見ていたプロ棋士も「自分が参加しても突破できない」と。
二次予選でも昨年決勝進出のAWAKE、GPS将棋、激指、YSSが脱落しました。
そのすさまじい一次予選、二次予選を16戦全勝で通過したのが技巧。二次予選でponanzaを破ったときはどよめきが起こりました。技巧は1秒に2億手読むことができるそうです。
決勝はponanzaと技巧が圧倒的な強さで最終戦を残し全勝。最後は直接対決でponanzaが雪辱して優勝、二連覇を果しました。
あまりに高度な将棋に解説のプロ棋士も「えっ」「そうか」を連発、「解説しに来たというより勉強しに来たみたい」と話していました。
四百年の将棋の歴史で培ってきた叡智が定跡ですが、ponanzaは定跡をいれず序盤から独自の手を連発。「定跡に頼るのは弱者の戦略」といいます。
プロの棋譜から学習するよりソフト同士の棋譜から学習する方が強くなったとか、ponanzaがこの半年でレーティングが200あがったとか聞くと、正直羽生さんとソフトとの対局はもう見たくないなと思ってしまうのです。
詰将棋でも逆算や検討でソフトを活用して創作するのが普通になっていますが、ソフトの進化で、いつか人外の詰将棋が作られるのでしょうか。
さて、今回は金問題は一休み。最近登場した新型の大道棋を紹介します。
三方から王手できるおもしろい形。類型も続々作られていて、今回新作を出題したのでお楽しみください。
◇大道棋35 加藤徹 正解
96金、84玉、87香、86飛合、85金、同飛、同香、同玉、A88香、87香合、
86飛、75玉、56飛、86角合、同馬、84玉、62角、73飛合、同銀不成、同桂、
85馬、93玉、B94馬、同玉、95歩、93玉、71角成、84玉、87香、86銀合、
94飛、75玉、53馬、64金合、78香、77香合、同香、同銀成、76歩、同成銀、
74飛、同玉、76飛、75歩合、63銀、同金、75馬(飛)迄47手駒余り
左4筋基本形のままなのに5筋の配置だけでAの香打から56飛に86角合と未知の世界に。そのあとも53に利かせる73飛合や86銀中合など次々妙防が繰り出される。
受け間違いや変別、B71角成の手順前後などで奉納者が続出。詳細、全短評はおもちゃ箱でご覧ください。
前田知弘「56飛と開きたい配置ですが、これが罠とは。最後の中合も見落とすところでした。最後まで油断できない、これぞ大道棋。」
小山邦明「62角打からの局面が従来の金問題と異なるので、見通しが立たない中での手順探しでしたが、前作と同様、合駒のオンパレードとなり驚きました。」
【正解者】 解答16名、正解10名 (省略)
【当選者】 (省略)
◇懸賞詰将棋 大道棋36 金少桂
金少桂さんの新型大道棋。10手台、収束ちょっと乱れあり。解答は6月末までに下記(省略)まで。最終手と手数(と短評)だけでOKです。よければ前頁のドキ展53の短評もお願いします。
正解者から抽選で2名に大道棋類型辞典などを贈呈。
注1)2016年の世界コンピュータ将棋選手権の情報はこちらから。
注2)上記のドキドキ展示室No.53の解説はこちらから。
注3)上記の大道棋35の解説および全短評はこちら。
注4)上記の大道棋36の解答募集は終了しています。解説および全短評はこちら。
| 固定リンク
コメント