歩一色図式と豆腐図式
[2017年4月20日最終更新]
詰棋人は手筋や構想、趣向など、なんでも分類したり名前を付けるのが好きである。ある作品が出現したとき、この作品はxxだというように名前を付けることが多いので、定義がはっきりしなかったり、人によって使い方が違って論争になったりする。体系化してみると名前を変えたいものも多いが、それも混乱を呼ぶ可能性があるので、難しいところ。
前置きが長くなったが、おもちゃ箱の記録に挑戦!で、これまで「盤面玉と歩18枚(歩一色図式)」としていた項目を、「盤面玉と歩18枚(盤面豆腐全駒図式)」と変更した。新たに「盤面玉と歩18枚、と金なし(歩一色図式)」の項目を立てたためだが、この名称変更について補足しておきたい。
1.一色図式の定義
一色図式自体は古くからあるが、「一色図式」の名前が初めて使われたのは、詰将棋パラダイス1976年10月号の「一色図式」という出題ページで、新田道雄さんの提供。1977年2月号の結果発表にその定義が書かれている。
「命名者は金成憲雄氏、条件は盤面玉以外駒一式すべて配置です。但し、小駒 (金、銀、桂、香、歩)の部はすべて生駒ばかりに限ります。成駒の有るものは一色図式と認めません。大駒(飛角)の場合は成駒(龍馬)で有っても構いません。」
大駒小駒で成駒の扱いが異なるなど不統一な面があったせいか、その後発行された「古今趣向詰将棋名作選」では、次のようになっている。
「一色図式=玉以外の置駒が1種類で通常は全駒。金成憲雄氏の命名。
★準一色図式=成駒の混じる場合。」
同書では「龍一色図式」の用語も使われている(金成氏の定義では飛一色図式)。
2.豆腐図式の定義
「古今趣向詰将棋名作選」によると、1968年に藤村和憲氏が命名したとのことで、同書では駒種類趣向の小駒図式の特殊ケースとして次のように定義している。
「☆豆腐図式=玉と歩だけ。藤村和憲の定義では置駒趣向だった。」
体系化のために定義を変えるのはよいのだが、元々の「盤面玉と歩だけ、持駒は任意」という図は何と呼べばよいか示していない。
3.おもちゃ箱、記録に挑戦!での扱い。
盤面の条件として、一色図式は成生を区別して駒一式配置、持駒は任意。歩、と、香、桂、銀、金、角、馬、飛、龍、10種類の一色図式の長手数記録の項目を立てる(豆腐図式など使用駒条件の項目は別に立てている)。
成生混在の場合は準一色図式とし、特に項目は立てないが、歩・と混在18枚配置(持駒は任意)については、盤面豆腐全駒図式の長手数記録として項目を立てる。この項目はこれまで歩一色図式と呼んでいたが、と金なし歩18枚配置(持駒は任意)の記録を歩一色図式として登録したので、名称を変更した。この名称は、豆腐図式が駒種類趣向のため、対応する置駒趣向を盤面豆腐図式と呼び、その18枚全駒配置を盤面豆腐全駒図式と呼んだものである。
飛角図式との比較で、用語の体系を示す。
- 駒種類趣向(盤面・持駒合わせた使用駒の趣向)
- 大駒図式: 使用駒玉と大駒のみ
- 大駒全駒図式: 使用駒玉と大駒4枚
- 大駒図式: 使用駒玉と大駒のみ
- 置駒趣向(盤面の配置駒の趣向、持駒は任意)
- 盤面大駒図式: 盤面玉と大駒のみ
- 飛角図式: 盤面玉と大駒4枚
- 純飛角図式: 盤面玉と生の大駒4枚
- 龍馬図式: 盤面玉と成った大駒4枚
- 飛角図式: 盤面玉と大駒4枚
- 盤面大駒図式: 盤面玉と大駒のみ
- 持駒趣向(持駒の趣向、盤面は任意)
- 大駒持駒: 持駒大駒のみ
- 飛角持駒: 持駒大駒4枚
- 大駒持駒: 持駒大駒のみ
これに対応する歩一色の用語は次のようになる。
- 駒種類趣向(盤面・持駒合わせた使用駒の趣向)
- 豆腐図式: 使用駒玉と歩のみ
- 豆腐全駒図式: 使用駒玉と歩18枚
- 豆腐図式: 使用駒玉と歩のみ
- 置駒趣向(盤面の配置駒の趣向、持駒は任意)
- 盤面豆腐図式: 盤面玉と歩のみ(と金可)
- 盤面豆腐全駒図式: 盤面玉と歩18枚(と金可)
- 歩一色図式: 盤面玉と生の歩18枚
- と一色図式: 盤面玉とと金18枚
- 盤面豆腐全駒図式: 盤面玉と歩18枚(と金可)
- 盤面豆腐図式: 盤面玉と歩のみ(と金可)
- 持駒趣向(持駒の趣向、盤面は任意)
- 豆腐持駒: 持駒歩n枚 *と金がないのに「豆腐」は変だが・・・
- 歩一色持駒: 持駒歩18枚
- 豆腐持駒: 持駒歩n枚 *と金がないのに「豆腐」は変だが・・・
もう少し体系的な名前にできるとよいのだが、大駒図式と飛角図式、豆腐図式と歩一色図式とベースになっている名前が複数あってレイヤーも異なるので、やむを得ないか。逆に香一色や銀一色など、駒種類趣向の名称がないケースは使用駒香一色図式とか呼ぶのだろうか。
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