推理将棋第130回解答(3)
[2020年8月27日最終更新]
推理将棋第130回出題の130-3の解答、第130回出題の当選者(原岡望さん)を発表します。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。
関連情報: 推理将棋第130回出題 推理将棋第130回解答(1) (2) (3)
推理将棋(おもちゃ箱) 推理将棋(隣の将棋) どんな将棋だったの? - 推理将棋入門
130-3 上級 ミニベロ 作 三捨利警部の推理(4手前のアリバイ・オマージュ)12手
「警部、またまた4手前のアリバイ事件です。
8手目と12手目は、同一駒を同一地点に着手されています」
「またかね。もう4手前のアリバイは、
アリバイとして認められないと判例も出ているんだよ」
「ところが今度は、11手目に玉が動いているんです」
「なに!それは不思議だ。
それなら幻の13手目に、直前にいた地点に逃げられるはずだが・・・」
「当然成る手はありません。いったいどうなっているんでしょうか」
「もしかしたら、あの手を使ったのかもしれん」三捨利警部は何か閃いたのでしょうか。
皆さんも一緒に、このカラクリを解いてくださいね。(条件)
- 駒成なく12手で詰み
- 8手目と12手目は、同一駒を同一地点に着手
- 11手目は、「玉」
出題のことば(担当 Pontamon)
「4手前のアリバイ」条件の習作。127-3結果稿での担当コメントは偽証だと証明されました。
締め切り前ヒント
9手目も玉の手。10手目は王手ではない。
推理将棋130-3 解答 担当 Pontamon ▲76歩、△32飛、▲33角不成、△同飛、▲68玉、△37飛不成、 |
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11手目に先手玉が動いて12手目で王手を掛けられた際、11手目の先手玉が動く前の地点へ戻れないのはどのような場合なのかを考えてみると、10手目に王手を掛けられた時に王手を掛けた駒を取らずに玉が逃げた状況であれば12手目の王手で玉が元の位置へ戻ることはできません。そこは王手が掛かっているはずだからです。
ところが本問の条件では、8手目と12手目が同一地点の同一駒による着手なので、10手目にはその駒が移動する手、つまり、8手目、10手目、12手目は全て同じ駒の着手になります。10手目に王手を掛けた駒は12手目に移動しているので玉が戻っても王手にはなっていないはずですが、玉が戻れないのであれば、駒が12手目地点へ動いたために空き王手になっていると考えられます。そこで、角と飛で両王手を掛ける手順を考えてみたのが参考1図です。
参考1図:▲36歩、△34歩、▲38飛、△55角、▲37飛、△同角不成、▲58玉、△48飛、▲59玉、△49飛不成、▲58玉、△48飛不成 まで12手
10手目は両王手になっていますが、玉の退路があるため▲58玉と上がることができ、△48飛不成で追いかけて王手すると▲59玉へ戻り、△49飛不成で再度両王手を掛けてもかわされます。王手の千日手は後手の負けになってしまいます。
両王手は10手目ではなく、最終手で逃げ場のない両王手を掛ける必要があるようです。
両王手の最短手順である9手の両王手の形を使ってみたのが参考2図です。
参考2図:▲36歩、△34歩、▲68玉、△55角、▲59金右、△28角不成、▲49金、△18飛、▲59金右、△46角不成、▲28銀、△同角不成、▲56歩、△46角不成 まで14手
最終手は4手前と同一駒の同一地点への着手になっていて、見事両王手で詰んでいるのですが、手数オーバーの14手でした。
この手順の場合は最終手の4手前も2手前も王手ではなく、直前の先手着手は玉でもありません。直前の手は、最終手で両王手になるようにするための協力手の▲56歩でした。
両王手で詰まされるための最終手直前の玉の着手とはどんなものでしょうか?両王手を掛ける2つの駒の利きが交わっている地点への玉移動になるはずですが、何処から移動するのかというと両王手のどちらかの駒の利き上を移動することになります。他の地点からの移動であれば、そこが玉の退路になるからです。
両王手の直前の手が玉の両王手で追い浮かぶのは通称0番の手順でしょう。22の角の利きを止めていた33の飛が38へ移動して、88の玉を飛と角で両王手を掛ける手順です。0番と同様に78の玉が88へ移動するのが最終手直前の手でしょうか。本問では8手目の局面で38に飛が居るので8段目の玉に王手が掛かっていたはずです。9手目に合い駒をすると11手目は玉の手なのでこの合い駒が残ってしまい12手目の△38飛不成が両王手になりません。つまり、8手目の△38飛不成の王手に対して、玉は逃げる手を指さなければいけないわけです。8段目を移動しても駄目なので、飛の利きをかわすには段移動をする必要があります。かと言って安全な地点への移動では11手目に玉移動しても12手目の王手の際に安全地点へ戻ることができてはいけません。したがって、8手目の飛の王手に対して玉は角の利き筋へ逃げるしかありません。具体的には△77玉のはずです。しかし、この9手目の時点で77地点は角の利きが及んでいない状態でなければいけません。
ここまでの手順は初手から、▲76歩、△32飛、▲33角不成、△同飛、▲68玉、△37飛不成、 ▲何か、△38飛不成、▲77玉になります。▲77玉を指すには22の角の利きが遮断されている必要がありますが、その駒がその後も角の利きを封じているのも困ります。一気に問題を解決するのが、7手目の▲33歩になります。7手目から▲33歩、△38飛不成、▲77玉、△33飛不成 で33の先手の歩を払い、最終手の△38飛不成の両王手を目指します。先手は11手目に協力手の▲88玉を指します。
それではみなさんの短評をどうぞ。
(短評)
ミニベロさん(作者)「元作の「4手前のアリバイ」と、我々をこの世界に導いてくれた、高坂作「0番」へのオマージュ作です。
直前玉の手は、一見不可能風ですので、解図意欲は湧くかも。
12手では、今の所この形しか知りません。」
■正解者数をみると、締め切り前ヒントで両王手を明かしても良かったのかも。何せ担当は0番だと睨んでいたのに▲33歩に気付かなかったのですから。
はなさかしろうさん「しびれました。かの0番へのオマージュですが、玉の軌道を変えるのが鍵で、2手プラスで「同一駒を同一地点に着手」が実現できてしまう、というのが盲点に。解けて嬉しいです。」
■爽快な解後感を味わえたようで羨ましいです。理由は前述の担当コメント。
RINTAROさん「33歩が絶妙。素晴らしい作品だと思います。」
■9手目の玉移動を可能にする、絶妙なタイミングでの絶妙の▲33歩が光ります。
ほっとさん「両王手にヤマを張ったら意外と易しかった。」
■両王手にヤマを張って解ける人と解けない担当との差は、基本的な将棋の棋力の差か?
占魚亭さん「詰み形が全く予想できません。降参。」
■困ったときには両王手を疑うと「覚えておきたい推理将棋の基礎知識」の第6回で記述されています。
NAOさん「皆大好きな両王手の筋。33歩~77玉~88玉とは、不思議な協力手がありましたね。」
■一刀両断の両王手は作者なら皆さん好きなテーマ。
飯山修さん「解けません。中段玉ではないのかな」
■詰み手順がわからないとに疑うのは両王手と中段玉。どちらも通常とは違った感覚になります。
山下誠さん「飛角による両王手パターンをいくつか考えましたが、いずれも手数オーバーで白旗です。」
■惜しい!狙いは当たっていたのですが...。と言う担当も同じでした。
諏訪冬葉さん「130-3 は時間切れでギブアップです」
■申し訳ありません、ヒントがちょっと変でしたかね。10手目は王手ではないのは分かっているからヒントになっていない。
原岡望さん「降参。127-3を参考にしましたが駄目。そもそも自力で考えないのが悪いのか。手順前後のない手はそんなにたくさんはないはずなのに。14手の解はみつかったのに残念です。
例えば 76歩 34歩 55角 同角 36歩 28角 同銀 18飛 68玉 55角 78玉 28角 88玉 55角」
■9手の両王手の変形ですね。0番は思い浮かばなかったでしょうか?
【あとがき】
127-3のメイン条件を採用した作品でしたので、「条件の習作」と紹介しましたが、練習作でも模写でもなく完成された新作ですので、もちろん本作品は習作ではありません。『「4手前のアリバイ」のメイン条件を取り入れた作品です。』が適切でした。
正解:5名
はなさかしろうさん ミニベロさん RINTAROさん ほっとさん
NAOさん
総評
RINTAROさん「分かりやすい条件の秀作3題。楽しめました。」
■出題中の131-3の条件は分かり難いかも。
ほっとさん「今回は割と早めに解けていたのに、いつの間にか8月に入ってしまった。」
■そこそこ難しかったということでしょうか。
占魚亭さん「前回は解けていたのに解答を送信し忘れ、今回は全く手が見えない。もうダメですね……。」
■涼しくなれば復活しますよ。きっと。
NAOさん「今回は結構苦戦しました。前回以上に解答の出足が鈍く皆さんも悩まれてるご様子。中級が意外と難しかったためかな。」
■仕事が忙しくて解答状況をチェックしていなくて、NAOさんからの解答(担当宛へもCc:で送付)で今回の解答ペースが遅いのを知った次第です。
飯山修さん「初級中級がサラッとすすんで上級問題で苦しむ今回のパターンは理想モデルでした」
■上級は解けるか解けないかのギリギリがいいですね。できれば苦しんだ後に解けるのが一番。ヒントの塩梅が難しいです。
神在月生さん「三問目をぎりぎりまで考えたために、各短評や総評を書く時間がなかった、という総評しか書けなかった。」
■チャレンジありがとうございます。
原岡望さん「今月は詰パラも惨憺たる有様で絶不調です」
■不調ではなく、今年の詰パラ推理は難問が続いているのが原因でしょう。7月号は時間がなくて馬鋸を解けませんでした。作り掛けの打ち歩詰め11手と形が違っている8月号の打ち歩詰めも、この結果稿を書いている時点では解けていません。
推理将棋第130回出題全解答者: 12名
はなさかしろうさん ミニベロさん RINTAROさん ほっとさん
占魚亭さん けいたんさん NAOさん 飯山修さん
山下誠さん 諏訪冬葉さん 神在月生さん 原岡望さん
当選: 原岡望さん
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コメント
出題時になぜか「習作」となっていましたが、勿論そんなものを投稿するわけがありません。
「もしかしたら、あの手を使ったのかもしれん」と書いたのは、
前例のある手筋をほのめかしたのですが、やはり難しかったかも。
33歩からの綱渡りが気に入っています。
投稿: ミニベロ | 2020.08.28 09:40
ミニベロさん
127-3のメイン条件を採用した作品でしたので、「条件の習作」と紹介しましたが、練習作でも模写でもなく完成された新作ですので、もちろん本作品は習作ではありません。『「4手前のアリバイ」のメイン条件を取り入れた作品です。』が適切でした。
投稿: Pontamon | 2020.08.28 20:02