推理将棋第143回解答(2)
[2021年10月25日最終更新]
推理将棋第143回出題の143-2の解答です。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。
関連情報: 推理将棋第143回出題 推理将棋第143回解答(1) (2) (3)
推理将棋(おもちゃ箱) 推理将棋(隣の将棋) どんな将棋だったの? - 推理将棋入門
143-2 中級 Pontamon 作 角取りを仕掛ける駒 9手
「9手で詰めたらしいね」
「初めて角取りを掛ける着手をした駒の隣への成駒着手で詰んだんだ」
さて、どんな手順だったのでしょうか。
(条件)
- 9手で詰み
- 初めて角取りを掛ける着手をした駒の隣への成駒着手で詰み
出題のことば(担当 Pontamon)
角取りを掛ける最速は2手目の△34歩。24や44への成駒着手で詰むのか?
作者ヒント
2手目は角取りを掛ける着手ではありません(Pontamon)
締め切り前ヒント
角取りを掛ける手は4手目の△54歩です。つまり、初手▲76歩、3手目▲55角です。
余詰修正
会話
修正前
「玉じゃない駒で角取りを掛けられたけど、その駒の隣への成駒着手で詰めたよ」
修正後
「初めて角取りを掛ける着手をした駒の隣への成駒着手で詰んだんだ」
条件
修正前
・後手は玉以外の駒で角取りを掛け、最終手はその駒の隣への成駒着手
修正後
・初めて角取りを掛ける着手をした駒の隣への成駒着手で詰み
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推理将棋143-2 解答 担当 Pontamon ▲76歩、△74歩、▲55角、△54歩、▲82角成、△42玉、 (条件) |
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条件を整理します。最終手は成駒ですが、可能性がある駒種は何でしょう。3手目に取れるのは歩以外なら角、5手目に取れるのは香、桂、銀、金、飛ですが、最終手が成駒なので5手目に取った駒を7手目に打っていては9手目には成ることができても成駒の着手はできません。つまり、最終手の成駒は馬になり、自陣から後手陣へ移動して角が成った馬、または、3手目に取った角を5手目に打って、7手目に成った馬のはずです。
次は角取りを掛ける手を考えてみます。角取りになる最速の手は初手▲76歩の時の2手目△34歩です。34の歩が角取りになっているのではなく、△34歩の手によって88の先手角に後手の22の角の利きが届くので角取りになっています。条件は、角取りを掛ける手のことを言っているので△34歩が角取りを掛けた手の駒になります。最速の角取りを掛ける着手は後手の△34なのが分かりました。
1段目で角成をしないで、61の銀を取ってから▲62角不成とする手順、▲76歩、△44歩、▲同角、△54歩、▲71角不成、△42飛、▲62角不成、△52玉、▲53銀では、これも△45飛ができていませんが、たとえ△45飛ができていたとしても43地点が空いているので詰みにはなりません。
それでは先手が角取りを掛ける最速の手は何になるでしょう。もちろん初手で角取りを掛ける手を指すことはできないので3手目になります。初手が▲76歩以外の時に2手目が△34歩であれば3手目の▲76歩が角取りを掛ける手になります。この場合は最終手は76の歩の隣(76の歩がそのまま動いていない場合)の66か86への成駒着手で詰める必要があり、どうにもそれは無理なようです。しかし、3手目に角取りを掛けることができる駒は76の歩だけではありません。2手目が△34歩でなければ、初手の▲76歩の次に3手目に▲33角不成や▲33角成を指せば、後手の22の角への取りが掛かるので、33に居る角か馬の隣への着手で詰めば良いことになります。先の3手目の▲76歩の時に注釈をつけた通り、条件は角取りを掛けた駒の隣への最終手ですので、33で角取りを掛けた角もしくは馬がその後の着手で移動した場合は最終手の局面でその駒の隣の地点への最終手であれば良いのです。「角取りを掛けた手の隣のマスへの最終手」ではなく、「角取りを掛けた手の駒の隣」なのです。
参考1図は、3手目に▲33角成で角取りを掛けた時の駒である馬が41へ移動して、9手目の最終手は51への着手で詰めたものですが、あいにく最終手は成駒ではなく、持ち駒の金を打つ手なので失敗になります。
仮に最終手の成駒条件が無かったとしても、3手目に「角取りを掛けた手の駒」が角なのか馬なのかの解釈に疑問が残るでしょう。推理将棋での着手した駒の駒種については棋譜に記載されるように、着手時の駒種で判断され、着手後の成駒を指定する場合にはそれが分かるような表現にしなければいけません。
参考1図:▲76歩、△62金、▲33角成、△42金、▲同馬、△61玉、▲41馬、△72飛、▲51金 まで9手
先手が最初に角取りを掛けた3手目の▲33角成での詰みは無いようなので、次は先後で最速の角取りを掛ける手である2手目の△34歩を考えてみます。手数が短いので角取りを掛ける手の駒である34の歩はその後動くことはなく34地点に居るままでしょう。注意しなければいけないのは、34の後手の歩を取ってしまうとたとえ最終手が24や44への成駒着手(これは馬だと判明してますので以後馬と表記します)で詰めたとしても条件をクリアできません。それも念頭に入れて指してみたのが参考2図になります。
2枚角の手筋で後手玉を詰めようとしたのですが、△51金の手が間に合っていないので後手玉は51へ逃れることができるので詰んでいません。
参考2図:▲76歩、△34歩、▲22角成、△62玉、▲32角、△54歩、▲43角成、△72金、▲44馬右 まで9手
総手数が9手と短いため、角取りを掛ける手は早いことに越したことはないと考えていましたが、2手目でも3手目でも失敗なので、次は4手目での角取りを掛ける手を考えるしかありません。
対局開始後の初の角取りになる必要がありますが2手目に失敗した△34歩を4手目に指す手順を除外すると
A.▲76歩、△44歩、▲同角、△42飛
B.▲76歩、△64歩、▲66角、△65歩
C.▲76歩、△何か、▲55角、△54歩
の3通りでしょうか。
Aの場合、先手残り3手で角を成って、筋違いへ移動して、▲32馬か▲52馬とするしかないので、△同飛で取られてお終いです。
Bの場合、▲33角成や▲93角成をしてから▲55馬や▲75馬を最終手にすることはできますが、入手した歩を使うことすらできないので詰まないでしょう。
Cの場合もBと同様で、▲33角成や▲73角成で歩を取ったとしても▲44馬や▲64馬を最終手に指しても詰みが無さそうです。
しかし、Cの場合には決まっていない2手目の着手があります。詰みになるための協力手を後手が2手目に指すことができればこれが唯一の解決策かもしれません。先手へ歩以外の駒を提供できれば、先手はその駒を打って最終手の馬を支える手に使えるかもしれません。
Cの場合の2手目ですが、先手が後手角を取れるように△34歩を2手目に指しているとすればその手が最初の角取りを掛ける手になってしまうので、歩以外の駒を先手が取れるようにする2手目の協力手は△74歩以外は無いでしょう。つまり、初手から▲76歩、△74歩、▲55角、△54歩、▲72角成で飛を取る際に駒成して、9手目に▲64馬を指せるようにします。先手の残りの手は7手目だけで持ち駒は飛です。▲64馬の馬で王手を掛けているはずですが、△同歩とされては詰みません。持ち駒の飛で△64同歩ができないように63に居る歩を飛でピンすることもできません。64の馬を飛で支えても△64同歩を指されては無意味です。
最終手の▲64馬で王手しているとすれば玉は42に居るはずですが、△同歩で取られる64の馬で王手をしていなくて、実は最終手は空き王手かもしれません。5手目に飛を取った局面では82に馬が居て、最終手が▲64馬の空き王手だとすると、取った飛を7手目に▲92飛へ打っているはずです。となると玉は2段目の何処かにいるはずです。しかし、1段目の金銀は健在なままですので、最終手が空き王手で92の飛で王手が掛かったとしても1段目の金銀で移動合いが可能です。空き王手では合い駒が可能なので、残るは両王手です。両王手の場合、両方の王手している駒に同時に合い駒をすることができないので、両王手をかわす方法は玉が逃げる手だけです。▲64馬が両王手であるなら、後手玉は42に居て、64の馬と92の飛の両方で王手が掛かっているので逃げ場所としては元居た51地点へ戻る手しかありません。その唯一の逃げ場所を自分で塞いでいれば両王手での詰みになります。すなわち、退路を自身で塞ぐ△51金右の手が指されているはずです。以上を踏まえると、6手目からは△42玉、▲92飛、△51金右、▲64馬 の両王手で詰みになります。
この9手詰の両王手の作品はミニベロさんの「4-3 恐怖の9手」で出題されている他、第48回の練習問題や「覚えておきたい推理将棋の基礎知識の講座」の「6 開き王手・両王手」での解説があります。
余詰み手順について
修正前条件は「後手が玉以外の駒で角取りを掛けた駒の隣への成駒着手が最終手」ですので、角取りを掛ける手は後手であればいつ掛けたものでも良い条件になります。
はなさかしろうさんから指摘があった手順は、
▲76歩、△62玉、▲33角不成、△42金、▲同角成、△72金、▲41金、△14歩、▲51馬 まで9手
です。この手順では△42金で角取りを掛けた金を取ってしまうので、参考2図での銀同様に角取りを掛けた駒(後手の駒)が盤上から無くなっていますが、物理的に同じ駒である先手の持ち駒となった金を打って、その金の隣への馬着手で詰める手順になっています。取った駒を使っていますが、物理的には同じ駒なので角取りを掛けた駒とも言えそうですので、条件設定(注釈等)の不備は否めません。
NAOさんからの余詰指摘手順は、
▲76歩、△34歩、▲22角成、△42金、▲33角、△32銀、▲31馬、△62銀、▲42馬 まで9手
です。後手が角取りを掛けた駒は△32銀で、その銀は盤上に残ったままで、最終手が▲42馬ですので、見事な手順の余詰でした。
粗検、申し訳ありませんでした。
それではみなさんの短評をどうぞ。
(短評)
斧間徳子さん「既出のおもちゃ箱#4-3に比べ条件付けが抽象的なので、この詰型を知らない人には難問となりそう。」
■余詰修正後は簡単になってしまいました。(のはず)
NAOさん(双方解)「手数制限から成駒は馬しかないはずだが、角取りを掛けた駒の隣の馬がなかなかイメージできない。24も44もダメなら64か。納得の両王手。」
■角頭着手での角取り着手が後手陣で発生するのは6手目。7手目の角移動で馬になって角取りを掛けた駒の隣へ戻ってくるとしても、その馬を支える駒が無さそうなので余詰は無いと思っていたのですが、角取りを掛けられた角は不動で3手目に22で成った馬を活用する余詰手順には気が付きませんでした。
ミニベロさん「この順が、こんな1条件で表現できるとは驚きです。最短両王手のこの順を最初に発表した私が保証します。おそらくベスト条件でしょう。推理将棋は「条件が違えば別物」とは、まさにこれです。
解くのに1週間も掛かってしまった。情けない。」
■1条件を意識したものではなくて、状況説明するためには文を分けるよりも1文にした方が誤解が少ないと思ったのですが....。文が分かりにくかったようです。
ほっとさん「条件がわかりにくい。まあこれで合っているはず。」
■分かりにくいのは「角取りを掛けた手の駒」と「角取りをしている駒」の違い辺りでしょうね。
RINTAROさん「1条件に詰め込みすぎで、条件が分かりにくいです。」
■「角取りを掛けた歩の隣への成駒着手」の条件なら分かり易いけど、解図も容易い。
はなさかしろうさん「4-3キタ~! しかし…この順は知らないと出てこないんじゃないでしょうか?!」
■▲55角に△54歩なのが直前ヒントでわかって残り5手。知っていればそのヒントで初級以下になるはずだけど知らないと残り5手は出て来ないですかね。
緑衾さん「54歩を突いた5手目82角成の局面で後手の歩の順番を限定させるための条件なのかもと考えたら解けました。」
■手順がいろいろある9手両王手の形ですが、条件違いの別作品を作ってみようとしたのが作図の切っ掛けでした。手順前後や非限定を回避できる条件になったのですが、余詰検討が不十分でした。
飯山修さん「2段目でしか考えられずヒント待ち。直前ヒント大サービスですね。」
■9手両王手の形を知っている人にとっては大サービスの直前ヒントになりました。具体的に△54歩とは言わずに「4手目が角取りを掛ける手」くらいで良かったのかも。
ジェシーさん「5四歩とは想像もしませんでした。しかも無駄手ではないのが素晴らしい。」
■条件修正後の「角取りを掛ける初めての手の駒」だと、2手目の△34歩、3手目の▲33角不成
諏訪冬葉さん「角取が54歩だからその隣に歩を突くか・・・そういえばここで両王手をかける筋があった。」
■両王手が閃けば簡単な問題でした。
占魚亭さん「馬の単騎詰は無理っぽいので両王手に山を張りました。」
■勘が冴えてましたね。
原岡望さん「両王手に気づかず。ヒント頼み。」
■最終手が成駒でなくてよいのであれば参考1図のような詰み手順があるのですが...。
べべ&ぺぺさん「ヒントを見てもわかりません。5手目に飛を取って、7手目に打って、でしょうか?」
■はい、7手目に飛を打って、9手目の空き王手(9手詰唯一の空き王手は両王手)でした。
山下誠さん「これも忘れた頃に再三出現する筋ですね。」
■解説等で話は何度か出て来ていると思いますが、問題として出題されるのは48回での練習問題に続く2回目だと思います。
正解:14名
斧間徳子さん NAOさん ミニベロさん ほっとさん
RINTAROさん はなさかしろうさん 緑衾さん 飯山修さん
ジェシーさん 諏訪冬葉さん 占魚亭さん 原岡望さん
山下誠さん テイエムガンバさん
(当選者は全題の解答発表後に発表)
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