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推理将棋第156回解答(2)

[2022年12月25日最終更新]
推理将棋第156回出題の156-2の解答です。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。

関連情報: 推理将棋第156回出題  推理将棋第156回解答(1) (2) (3)
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156-2 中級  Pontamon 作  後手の最多合法手       9手

「あ~あ、残念無念、9手で詰まされてしまったよ」
「どんな将棋だった?」
「僕は手が広くなるように指してたんだ」
「それで?」
「感想戦によると、9手で詰む手順では後手の合法手が最多になる局面で5筋の手を指したのがまずかったみたい」
「後手の最多の合法手の数っていくつなの?」
「気が静まったらあとで教えてあげるよ」

さて、どんな手順だったのでしょうか。

(条件)

  • 9手で詰み
  • 9手で詰む手順では後手の合法手が最多な局面で5筋の手を指した

出題のことば(担当 Pontamon)

 後手の合法手最多の局面は推理できるはず。作者ヒントは合法手数のようです。

作者ヒント

 後手が取る駒種と取り方によって8手目の合法手は88手(Pontamon)

締め切り前ヒント

 飛が8手、角が14手、駒打ち45手が合法手にあり、飛の横利きを遮る5筋の手が悪手。

会話と条件文の修正:

 会話と条件中の「9手詰」を「9手で詰む手順」に修正


推理将棋156-2 解答 担当 Pontamon

▲76歩、△42金、▲33角不成、△41玉、▲42角不成、△99角不成、
▲31角不成、△52香、▲42金 まで9手

(条件)
・9手で詰み
・9手で詰む手順では後手の合法手が最多な局面で5筋の手を指した(8手目△52香、8手目の合法手は88手)

Suiri1562

Suiri1562a初期配置では30手だけの合法手の数を増やす方法としてまず思い浮かぶのは、大駒の利きを通す手を指すことでしょう。かと言って、△34歩だけでは角の利きを通すだけなので、角と飛の両方の大駒の利きを通す手順を考えてみたのが参考1図の手順です。後手は△32飛として先手に33地点の歩を取って貰えば飛の前方が開けて。△37飛不成の手を指すことができました。これにより、8手目の飛の手としては3筋の7地点と7段目の2地点への移動ができ、しかも飛成と飛不成の手を指せるので飛の合法手は18手になり、99地点まで利いている22地点の角の10手(先手陣の3地点への手は成と不成)を合わせると大駒だけで28手となりました。また、37で取った歩を後手の歩が切れている2筋と3筋へ打つことができるので、8手目の後手の合法手の数は56手になりました。しかし、9手で詰んだ参考1図の8手目は△72金なので5筋の手を指す条件をクリアできていなくて失敗でした。

参考1図:▲76歩、△32飛、▲33角成、△62玉、▲23馬、△37飛不成、▲41馬、△72金、▲52金 まで9手

Suiri1562b参考1図の手順の中では8手目が後手の合法手が最多になる局面でしたが、この合法手の数の56手は9手で詰む手順で後手の合法手が最多になる局面ではないことに気付きました。大駒の利きを増やす目的で考えた手順でしたが、歩を取ったことによって、合法手としては盤上の駒を動かすだけではなく、持ち駒を打つ手も合法手になることが分かったからです。でも持ち駒が歩だと、歩が切れている筋にしか持ち駒の歩を打つことができないので、盤上の空きマス全てへ打つことができる角の方が合法手を増やせるはずです。後手が角を持ち駒にできるのは、先手の3手目で▲22角成(不成)を指した駒を銀や飛の同の手で取る手順や更に5手目に動いた先手の角か馬を取る手順、先手が3手目に取った角を5手目に打って、それを同の手で取る手順です。角を持ち駒にすると空きマス全てへ角を打つことができますが、盤上に後手の角が無いので、角の手で合法手の数を稼ぐことができません。参考1図の時の歩を取った飛を先手陣に残すようにすれば手が広くなります。となると、合法手の数を稼ぐのに一番良い方法は、角不成で香を取り、空きマスへの香打ちの手を稼ぐとともに、99の角を動かす手で成と不成の手を指せるようにするのが良いことが分かります。参考2図はこの方針で手を進めたものです。▲99角不成で香を取り、55へ角を引いて角成しますが、香を持ち駒にしたことによって、空きマス(9段目へは打てないが9段目の空きマスはないので空きマス全部への香打ちが可能)への香打ちが全て合法手になり、合法手の数は飛躍的に増えました。しかも、この8手目の着手が△55角成ですので「5筋の手を指した」という条件にも合います。8手目の局面での合法手の数は76手です。

参考2図:▲76歩、△72金、▲33角不成、△61玉、▲42角成、△99角不成、▲41馬、△55角成、▲52金 まで9手

参考2図ではこの手順での後手の合法手の数が最多になった8手目に5筋の手を指していて条件はクリアしていますが、この手順での後手の合法手の数76手が9手で詰む手順での後手の合法手の最多なのでしょうか?参考2図では後手の飛は初期配置のままで、飛の着手が可能なのは△92飛の1手しかないのが不満です。後手の合法手を増やすのに有効なのは6手目に△99角不成で香を取って、駒打ちの手で合法手の数わ稼ぐとともに先手陣の生の角を残すことで、角成と角不成の手で角の手を倍増することは分かったので、参考2図で不満になった飛の手を増やす手段を考えてみます。飛は初期配置のままでも2段目の角は△99角不成で2段目から居なくなるので、飛の利く地点を減らす原因だった△72金や参考1図での△62玉を指さずに2段目を飛だけにすれば飛の手は参考2図の1手から8手へ増えることになります。また、参考2図では駒取りの手は3手だったので、香を打つ手は初期配置での空きマスの数41に3マス追加の44地点でした。駒取りの数が増えれば持ち駒を打つ手が増えることになります。2段目に飛以外の駒を配置しないので後手玉は1段ですが、9手目の王手で玉が2段目に逃げれないように頭金で仕留めるには玉腹に角を配置するのが都合がよいでしょう。先手はとどめに使う金を入手することになるので3手目の有力候補の▲33角の手を考慮すると△42金で42に居る金を取るのが効率的で、1段目への角移動の際にも銀を取れば、33の歩を取る3手目と後手が99の香を取る手を合わせて4回の駒取りができそうです。初手から▲76歩、△42金、▲33角不成とすれば4手目に△41玉が可能で5手目で金を取る▲42角不成の次の手番では▲31角不成で銀を取れます。6手目は99の香を取る△99角不成です。8手目は飛の横利きを止める必要があるのですが、5筋の着手が指定されています。最終手は頭金の▲42金なので42に利く△52金を8手目に指すことはできませんが、持ち駒の香を△52香とする手がピッタリの飛の横利きを止める5筋の手になり、▲42金で詰みとなりました。この手順では、8手目の後手の合法手は88手になります。

【8手目88手の内訳】
歩の手:8手
盤上の香の手:2手
桂の手:1手
銀の手:2手
金の手:4手
玉の手:4手
角の手(不成7・成7):14手
飛の手:8手
香打ち:45手

なお、参考1図の手順で、▲23馬の代わりに▲42馬を指すと6手目の△99角不成の次の7手目に▲41馬が指せるので、8手目の局面での合法手の数は作意順と同数の88手になります。その後、△72金、▲52金の手順や△64歩、▲63金の手順で詰みますがどちらも8手目が5筋の手ではないので本問の条件をクリアできません。

先行先を確認したところ担当作の「138-1 香の隣」が同一手順でした。違うテーマで作図すると手順が同じでも全く別な作品になりますね。

合法手にまつわる関連情報ですが、将棋において合法手が最多となる局面での合法手の数は593手で、その局面は初期配置から60手で実現できます。(参考:WFP第122号 第104回WFP作品展での拙作『593の合法手がある局面 61手』。解答はWFP第124号

それではみなさんの短評をどうぞ。

(短評)

NAOさん「1段玉、1段角で飛の横効きを増やす手があるとは。
銀を取る手が銀の効きを減らすため盲点。銀の効きが3つ減っても玉の効きが1~2つ、飛の効きが3つ、香の打場所が1つ増える。
※最多合法手の推定
初形の合法手は30個。歩以外の持駒が1枚あると40以上一気に増えるので6手目に角不成で香を取った後の8手目が最大となるであろうと決め打ち。
先手が詰ますために1枚入手するのは、飛、金、銀のいずれか。
ここまでは見立て通りだが、金銀を取る手が合法手が最も多くなった。」

■論理で解いているので、やはり、合法手の数の情報は不要でよかったということですね。88手の情報が無いと解けても自信を持てないかもしれませんが、論理的な裏付けがあれば大丈夫。

原岡望さん「全く見当がつかず降参です。角14手だけでも大変そう。」

■角の手を指せる地点が7か所で、不成と成の手で計14手。合法手の数を稼ぐために持ち駒を作るのが第一のカギ、「不成」と「成」による手の倍増方法に気付くのが第二のカギでした。

諏訪冬葉さん「中間ヒントを見るまでの最高記録は69手でした(以下の順)。
▲76歩△34歩▲22角成△32飛▲62角△同金▲32馬△52金上▲41飛 まで
「合法手を増やすには持駒」として最初に浮かんだのが角を取らせる手でした。」

■歩、香、桂とは違い、駒打ち可能な段に制限がない角を後手に渡すのも一案ですね。ただ、盤上に後手の角が居なくなるのが痛い。

ほっとさん「8手目が88通りになったので多分合っているだろう。ノーヒントで正解に辿り着けるとは思えないが・・・。」

■解説の通り、8手目の合法手が88通りになる別の手順(▲52金までや▲63金まで)がありますが、8手目に5筋の手を指せるのは最終手▲42金までの手順でした。

飯山修さん「6手目で歩桂以外の駒が入手でき、かつ詰めるのは99角以外ない事は判ったが88手に少し足りない順しか思いつかず最終ヒント待ち。飛車が8手動ける2段目ガラ空きで詰める方法は33銀31玉の形しか浮かばず、これに辿り着きヤレヤレ。」

■少し足りなかったのなら、▲76歩、△52玉、▲44角、△34歩、▲53角不成、△99角不成、▲71角不成、△51香、▲53銀の手順でしょうか?これだと8手目の合法手は84手ですね。

ミニベロさん「どうやっても5手足りない理由が、夜中突然理解しました。
99の香を成りで取ったほうが2手稼げる、と思ったのが大間違い。
生のほうが成の7手を稼げるので、2手失っても5手増える。
やっと計算が合いました。
・最多合法手というテーマが新しい
・付帯条件が付かない
・たった9手なのにパズルとして面白い
これは良い物を見ました。」

152-3153-3と合法手が少ない状況の作品が続いた際、合法手が最多の条件にする逆転の発想で作った154回出題予定の作品でしたが156回での出題になりました。

テイエムガンバさん「後手の合法手を最多にするために、
A.99角不成で香を獲得
B.後手の飛を角と同様に先手陣に突入させる
ことで、飛の合法手を増やす
C.先手の駒取りを最小限(1~2枚)にする
という3点を考慮して手順を考えていたのですが、BとCが読み過ぎだった理由が分かりません。」

■Bは手数が足りなくて実現できません。角不成か飛不成のどちらかになります。角や飛の手の数で言えば△37飛不成の方が2手多い18手ですが、取った歩を打てる場所が激減するので△99角不成になります。
Cについては、後手の駒を取ることによって駒打ち可能な地点を増やす効果と、取られてしまった後手の駒で指せるはずだった手が減ることとの兼ね合いになります。本譜だと42に先手角が居ると31の銀は3箇所へ動けますが、▲31角不成によって銀の手3手が減る代わりに後手の飛の手は3手増え、駒打ち地点も1箇所増えます。また31に銀が居ると△31玉はできませんが31が先手角なら△31玉が可能です。

RINTAROさん「後手の駒取りが必須なので、99香に当たりを付けて解きました。」

■後手が3手指せば先手の全駒種を取ることができます(もちろん先手の協力手があってのこと)が、9手で詰む手順となると後手が取れる駒種は限られます。

はなさかしろうさん「前衛的な試みで私は大好きですが…やってみて、5筋条件からしてこれかな、と思ったものの、出題コメントの通り「解いても自信を持てない」タイプの問題でした。出題は検証が大変そうですが、解く方なのでナイスなヒントにしっかり助けていただき、楽しかったです。」

■論理的な裏付けがあれば、全手順を検証することなく作図可能になります。

桝彰介さん「締め切り直前に気づいたので合法手の数は確認してませんが、感覚的にこれ以外条件満たしてる手順がなさそうなので最後は面白い条件で楽しませていただいた作者を信じます。」

■合法手の数を確認しなくてもこれ以上合法手を増やす手立てがないのであれば正解手順になります。裏読みの一種でしょうか。


正解:9名

  NAOさん  諏訪冬葉さん  ほっとさん  飯山修さん
  ミニベロさん  テイエムガンバさん  RINTAROさん
  はなさかしろうさん  桝彰介さん

(当選者は全題の解答発表後に発表)

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コメント

▲76歩、△32飛、▲33角成、△62玉、▲42馬、△99角不成、▲41馬 の局面で後手の合法手は87手ではないかと思います。歩の手:8手、盤上の香の手:2手、桂の手:1手、角の手:14手は本問解と一緒で、銀の手:4手、金の手:3手、玉の手:1手、飛の手:10手と玉と金のマイナスを銀と飛でカバーしているのですが、香打ち:44手で盤上の駒が一枚多い分打ち場所が減っています。6手目△99角不成はまず動かせないところですが、それでも形によって最後の数枚の出し入れが微妙で、自信は持てなかったですが楽しかったです。

投稿: はなさかしろう | 2022.12.26 00:56

第159回出題の関係で本問を見に来たところ、はなさかしろうさんからコメントが記載されていたのですね。
気付かす、申し訳ありませんでした。ご指摘の手順では8手目の合法手は確かに87手になります。

あと、失敗例の参考2図ですが、55地点の駒が角になっていました。ここは馬の間違いでした。申し訳ありません。

投稿: Pontamon | 2023.02.06 17:11

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