推理将棋第171回解答(4)
[2024年3月29日最終更新]
推理将棋第171回出題の171-4の解答、第171回出題の当選者(中村丈志さん)を発表します。
推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。
関連情報: 推理将棋第171回出題 推理将棋第171回解答(1) (2) (3) (4)
推理将棋(おもちゃ箱) 推理将棋(隣の将棋) どんな将棋だったの? - 推理将棋入門
171-4 上級 はなさかしろう 作 龍だけど龍じゃない指し初め2024 44手
「あけましておめでとう! 今年は辰年だね」
「謹賀新年! 芥川ってさ、辰年辰月辰日の生まれにちなんで龍之介なんだってね」
「ではさっそく、よろしくお願いします。龍を作って、成駒は取らないようにしよう」
「よろしくお願いします。了解。でも辰という字、元々はハマグリらしいよ」
「ハマグリ…と、王手か。じゃぁ蛤にちなんで合駒しよう。でも辰は蜃の方の原字だね」
「そうそう。辰は振に通じ、草木の形が整った状態、という意味らしい」
「振興の振だね。今年は振るった年になるといいな」
「ほんとにね…と、44手で詰んだね。2024年だから、20と24を足して44さ」
「ちょっとこじつけ気味だけど…それじゃおさらいしようか。
・44手で詰んだ
・詰上りで全ての駒が盤上にあった
・詰上りで成駒は龍2枚、と(※)2枚の計4枚のみ
・成駒を取る手はなかった
・33手目までは駒打ちがなかった
・初手は自陣内の手
・10手目と14手目は同と(※)
・11手目は11の地点への手
・12手目のみが9筋の駒数を増やす手
・16手目は同角
・18手目は移動直後の先手歩の尻への角の手
・21手目は移動直後の後手角の尻へのと(※)の手
・23手目と26手目は7筋の駒を8筋に移動する手
・24、27、28、35手目のみが9筋の駒数を減らす手
・25手目は合駒
・29手目は2筋の歩の手
・34、36手目は同と(※)で取った駒を取った順に取った筋の5段目に打つ手
・37~44手目は19、15、75、71、65、66、45、56の地点に順に駒を打つ手
ということだったね」「うん。指し初めらしい一局だったね」
「「というわけで、本年もよろしくお願いします!!」」
さて、どんな手順だったのでしょうか。
※ 会話、条件共に、(※)を付した「と」は、と金(成歩)のことです。
(条件)
- 44手で詰んだ
- 詰上りで全ての駒が盤上にあった
- 詰上りで成駒は龍2枚、と(※)2枚の計4枚のみ
- 成駒を取る手はなかった
- 33手目までは駒打ちがなかった
- 初手は自陣内の手
- 10手目と14手目は同と(※)
- 11手目は11の地点への手
- 12手目のみが9筋の駒数を増やす手
- 16手目は同角
- 18手目は移動直後の先手歩の尻への角の手
- 21手目は移動直後の後手角の尻へのと(※)の手
- 23手目と26手目は7筋の駒を8筋に移動する手
- 24、27、28、35手目のみが9筋の駒数を減らす手
- 25手目は合駒
- 29手目は2筋の歩の手
- 34、36手目は同と(※)で取った駒を取った順に取った筋の5段目に打つ手
- 37~44手目は19、15、75、71、65、66、45、56の地点に順に駒を打つ手
出題のことば(担当 Pontamon)
長丁場の手順のマイルストーンとなる条件を見極めてじっくり考えてみてください。締切まで約2ヵ月あります。
作者ヒント
条件c)~o)に矛盾しないような、2~28手目の後手の棋譜表記は一意に決まります。(はなさかしろう)
締め切り前ヒント
昨年の年賀詰は「卯」があぶり出されましたが、今年は「辰」のあぶり出しです。
11手目は▲11飛成でもう一つの飛成は△99飛成。歩成は8手目の△17歩成と19手目の▲73歩成。34手目以降は駒打ちが主ですが唯一の盤上の手の35手目は9筋の駒を減らす▲85桂です。とどめは56地点の手ですが、先手玉は居玉のままで詰みます。
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推理将棋171-4 解答 担当 Pontamon ▲18飛、△14歩、▲76歩、△15歩、▲75歩、△16歩、 (条件) |
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条件の全体を見て、分かることを整理してみます。まず駒成に関してですが、終局時に盤上に龍2枚とと金2枚があって、成駒が取られることが無かったとのことなので、飛成の手が2回と歩成の手が2回だったことが分かります。また、10手目と14手目は同となので後手は8手目までに歩成をする必要があり、9手目と13手目は次の手で同とができるように先手の駒をと金の利きへ移動する手になります。成駒を作るには自陣の駒を敵陣まで進めるか、取った駒を敵陣近くに打ってからの移動で成ることができますが、33手目までに駒を打つ手が無いとのことですし、34手目以降での駒打ち以外の手を指せるのは先手の35手目だけなので、33手目に駒打ちができない先手と34手目以降の着手全てが駒打ちの手になる後手は、駒を打ってからの駒成はできません。つまり、飛成や歩成は盤上の駒を移動しての駒成になります。
その他としては9筋に関わる条件が2つあって、ひとつは9筋の駒数を増やす手でもうひとつは9筋の駒数を減らす手です。9筋の駒数を増やす手は12手目だけなので初期配置で9筋にある先手と後手の歩と香2枚ずつの他に12手目に9筋へ盤上を移動する手が指されることになります。後手はこの12手目までは、2手目からある筋の歩を突き進めて8手目に歩成をして、10手目は同とでの駒取りなので12手目に9筋へ移動できる駒は飛しかなく、12手目の△92飛が確定します。(この92の飛があとで飛成する必要があります)一方、9筋の駒数を減らすのは24、27、28、35手目なので先手と後手が2枚ずつ9筋から駒を減らす着手をすることになります。先後との2枚ずつの9筋の駒と言われると、歩と香が思い浮かびますが、歩も香も同じ筋内の移動しかできないのに9筋の駒数を減らす着手なんてできないと感じるかもしれませんが、ここにカラクリがあります。たとえば、後手の角で99の先手の香を取る手の△99角不成を指した時、この着手の前後で9筋の駒数に変化はありません。つまり9筋にある相手の駒を9筋以外の駒で取る手は9筋の駒数に変化を与えないのです。この99の角は9筋の駒数を減らす手として他の筋へ移動させることができます。では、9筋にある相手の駒を9筋の駒で取った場合はどうなるでしょうか。9筋から相手の駒が無くなるので9筋の駒数が減る着手になります。92に後手の飛が居るので、9筋の先手の駒を取る手も駒数を減らす手として使えそうです。条件r)では駒打ちする地点が指定されていますが9筋は指定されていないので駒打ちで9筋の駒数を増やすことは無さそうです。条件q)は、10手目と14手目に同とで取った駒を取った筋の5段目へ打つ条件になっています。9筋の駒数を増やす手は12手目の△92飛だけなのが確定しているので、もし8手目の歩成が8筋での△87歩成だったとしても▲98香、△同とという手順にはならないことになります。
次はj)、k)、l)の角に関係する条件が目に留まります。16手目が同角の手とのことですが、この時点までの後手の手は、ある筋の歩を4手突き進めた8手目に歩成して、10手目は同とでの駒取り、12手目は△92飛で14手目も同とでの駒取りです。その次の手番の16手目に同角ができるのはどの地点でしょうか?角筋の11には11手目に指した先手の駒がありますが、16手目に同角を11地点で指すためには11の先手駒が一旦移動してから15手目に11へ戻る必要があります。しかし、14手目の同とのために13手目はと金の利きへの駒移動の手を指すので、13手目に一旦11地点を離れて15手目に11へ戻ることはできません。推測し易い他の手順は15手目の▲33角不成を△同角で取るケースや15手目の▲13香を△同角とする手順でしよう。▲33角不成を△同角の場合、先手の7筋の歩は既に突かれているので18手目の歩尻への△77角不成は歩移動の直後にはならないので除外されます。16手目が▲13香不成を△同角とする手なら、続けて▲56歩に△57角不成のあとで△75角に▲74とと続きそうです。他には後手の歩成が△37歩成だとすると角道が空いているので15手目の▲66歩に△同角のケースがあり得そうです。しかし、8手目の△37歩成で後手がと金を作る場合、11手目に11地点の手を指すことができません。なぜなら、初手は自陣内の手、すなわち8段目の着手になるため、後手が3筋の歩を突き進めて8手目に△37歩成とする間、先手は17の歩を突き進めて11手目の11地点着手を目指しますが11地点へ到達できるのは13手目になるからです。
ここで、11手目の11地点の着手をクリアする手順を考えてみます。後手角の着手条件が16手目に出て来るので、先手角で後手の角を取ってから▲11角不成とすることはできないので、1筋から11地点を目指すことになります。しかし先手の手だけでは11手目の11地点着手ができないと分かったので後手に協力してもらうしかありません。と言っても、2手目から5手目の▲15同歩で後手の歩を取り、△同香と進んで後手の歩が取られると、駒打ち開始条件があるので歩を打てないし、打てたとしてもその手が8手目なので、8手目に歩成をすることができません。となると、後手が8手目に歩を成るのは1筋の歩を突き進めた17地点のはずです。先手は1筋を一直線に進んで来る後手の歩を取ることはできないので21手目に▲74とを指せるように7筋でのと金作りの準備を進めることになります。初手は不明なのでおいておいて、2手目からは△14歩、▲76歩、△15歩、▲75歩、△16歩、▲14歩、△17歩成で8手目に17でと金を作ります。10手目は同との手なので9手目は▲28銀の協力手を指して△同とです。次の11手目は▲11香成が11地点の手になりますが、駒成は飛と歩だけの条件なので▲11香成はできません。そこで初手に▲18飛としておけば11手目に▲11飛成を指せます。▲11飛不成としておいて、その後の飛移動の際に成るという手順があるかもしれませんが、ここではとりあえず▲11飛成としておきます。12手目の△92飛は決まっています。
14手目は同となので、先手は13手目に28に居ると金の利きへ駒を動かす必要があります。それができるのは▲38金か▲39金のどちらかです。この時点ではどちらが良いのか分かりませんのでとりあえず▲38金として14手目は△同とです。
16手目は同角なので、15手目の▲13香不成に△同角として、動いた直後の歩の尻への角移動ができるように▲56歩、△57角不成と進み、▲73歩成で先手がと金を作ったら20手目に△75角不成として21手目が▲74とです。
参考図:▲18飛、△14歩、▲76歩、△15歩、▲75歩、△16歩、
▲74歩、△17歩成、▲28銀、△同と、▲11飛成、△92飛、
▲39金、△同と、▲13香不成、△同角、▲56歩、△57角不成、
▲73歩成、△75角不成、▲74と まで21手(途中図)
23手目と26手目は条件m)の7筋の駒を8筋へ移動させる手ですが、22手目の時点で盤面(参考図)を確認すると8筋へ移動できる7筋の駒は先手は74のと金で後手は71の銀です。24手目は9筋の駒数を減らす手になりますが、現時点で9筋の駒数を減らせる後手の駒は92の飛だけです。でもこの飛はいつか飛成で龍にする必要があるので、26手目に動かすのなら先手陣へ直射できる△12飛が良いかもしれません。または22手目の今、9筋の駒数の増減なしの△97角不成を指しておいて24手目の9筋の駒数を減らす手で97の角を再移動させることができます。そうすれば27手目と28手目の2手連続で9筋の駒数を減らす手で▲93香不成、△同飛の9筋の相手駒を9筋の駒で取る手を指せるようになるので26手目の9筋の駒数を減らす手で△12飛はやめておいた方が良いことになります。22手目が△97角不成なら24手目の角移動では、条件o)で25手目は合駒となっているので24手目は△86角不成での王手に25手目は▲68銀の合駒です。26手目は7筋の駒を8筋へ動かす手なので△82銀です。29手目は2筋の歩なので▲26歩
途中図以降22手目からの手を並べると、△97角不成、▲84と、△86角不成、▲68銀、△82銀、▲93香不成、△同飛、▲26歩になりますが、30手目から33手目までの4手の直接的な着手条件がありませんが、駒打ちが始まった34手目以降で唯一の盤上の手が35手目の9筋の駒数を減らす最後の手が残っていました。現時点では9筋には91の香と93の飛だけで、もちろん香は横へは動けませんし93の飛は83に歩が居るため横移動ができません。35手目は先手の着手なのに29手を指した時点で9筋には先手の駒が無いのですから、9筋の駒数の増減なしで30手から34手までの間で先手の駒を9筋へ配置する必要がありますし、93の飛はどこかで飛成をする必要があります。なので30手目は△99飛成でしょうか。△98飛成でも良さそうなのですがとりあえず△99飛成としておきます。31手目ですが、最終手の44手目は条件r)によると56地点へ駒を打つ手になっていますが、56地点には歩尻の△57角不成をするために突いた▲56歩が居る状態なので、ここで▲55歩を指しておきます。32手目は9筋の駒数の増減なしで先手駒を配置できるようにするための△97香不成で、続く33手目は△同桂です。これで35手目に9筋の駒数を減らす手として97の桂を△85桂と移動させることができます。30手目からは△99飛成、▲55歩、△97香不成、▲同桂ということです。
34手目以降は35手目の▲85桂以外は駒打ちが残っているだけです。条件q)とr)で指定されている順や指定地点へ持ち駒を打って行くだけです。37手目からの駒打ち条件のr)では、この時点で先手も後手も香2枚と歩2枚が持ち駒になっているので、二歩の反則に注意するくらいでしょう。34手目から、△25銀、▲85桂、△35金、▲19歩、△15歩、▲75歩、△71歩、▲65香、△66香、▲45香、△56香 になります。途中の11手目の▲11飛不成か▲11飛成が保留になっていましたが、▲11飛不成の場合だとその後にこの飛を動かせる余裕が無かったので、11手目時点で▲11飛成としておくことになります。また、▲38金か▲39金に△同との手順がありましたが、▲38金が正しかったようです。▲39金に△同とだと44手目の△56香の王手に対して▲48玉と逃げることができます。あと、30手目の飛成ですが、△98飛成と△99飛成のどちらでも32手目の△97香不成を指すことができたのですが、△98飛成だったら44手目の△56香の王手に対して▲58金の合駒が可能なので△99飛成が確定します。
詰み上がってみると「辰」の文字があぶり出されていますが単なるあぶり出しの年賀作品ではなく、最終手の△56香に対して68の銀は角でピンされているので▲同銀とはできず、69の金は99の龍でピンされているので▲58金の移動合いもかなわない見事な詰み上がり図になっていました。最終手の着手地点が明かされている条件なので、56地点近くへ先手玉を移動させて詰まされる形を考えられた方も居たかもしれませんね。(ここに一人は居ます(笑))
それではみなさんの短評をどうぞ。
(短評)
はなさかしろうさん(作者)「あぶり出しは書体の問題が悩ましいです。「龍」の字が好きなのでやってみたかったのですが「竜」でも難しく、簡体字や草書体も考えましたが馴染みが薄いと解きにくそうなので「辰」にしたところ、丁度40枚で盤上になんとか収まりました。チェックポイントを消化していけば解けるように条件をつけるのが理想ですが、いかがでしたでしょうか。」
■単純に、「卯」の次だから「辰」だと思いました。簡体字の龍って「もっとも(尤も)」みたいな字ですよね。知らない人が多そう。来年は「蛇」は難しいからやはり「巳」かな?鎌首を持ち上げたコプラの形もあるけど逆に難しいか。
NAOさん「年賀詰の締めは渾身の書き初め「辰」。条件が多い分、手順のヒントが多く4問中、最初に解けた。条件nの9筋の駒を減らす手順ををいかに実現するかが鍵。」
■条件n)で9筋の駒を減らせと言われても香や歩は横へ行けないし...と考え込んでしまいそう。駒を増減させずに相手の駒を取る妙手がありました。
飯山修さん「直前ヒントを参考にすれば19手目迄は必然で34手目以降も指定されている。残りの14手を考えればいいのだが角の変則移動が意外と難しかった。あぶりだしなのでこの問題が一番入り込みやすかった。」
■同角、歩尻への角、角移動直後の角尻へのと金。この辺りは問題ないけど、9筋の駒数を増やさずにあとで減らすことができるようにする△97角不成が見え難いです。
ほっとさん「条件がいろいろと強引すぎるけど、凄い。」
■単なるあぶり出しの図を作ったのではなく、龍と角で2枚の駒がピンされているという構成が凄いですね。
正解:4名
NAOさん はなさかしろうさん ほっとさん 諏訪冬葉さん
(総評)
NAOさん「年賀詰の後半も解き応えの難問揃い、大いに楽しみました。」
■難問揃いと言う割りには一人ダントツの早期解答でした。また、余詰の発見、ありがとうございます。
飯山修さん「今月は1問のみ解答を覚悟したがなんとか3問になってよかった」
■それは何より。3問に解答していただきましたが、解答見直しのチェック忘れ(?)が残念でした。
ほっとさん「さすがに難しすぎた。」
■40手超えが3題ですからね。
RINTAROさん「1題解答で失礼します。2は少し考えましたが解けず、4はほぼ解けたけど、完全解答には至らず。3に至っては、考えてもいません。最終日1時間じゃこんなもんですね。」
■2ヵ月あったのに...。長手数問題を1時間では無理ですね。
諏訪冬葉さん「今年の目標は「20手以下完答」に下方修正しました」
■23手作の出題はどうしようかなぁ。手数は長いけど中級で行けそうな気がするので大丈夫でしょう。
るかなんさん「171-3,171-4はさっぱり頭が回らず、降参です。」
■まさか暗算ですか?長編は駒を動かして解くのが一番です。
原岡望さん「172-3.172-4 1と2に時間食ったため降参です。残念。」
■44手+45手+44手ですからヒント投入後でも時間が足りませんでしたか。
推理将棋第171回出題全解答者: 10名
NAOさん 中村丈志さん 飯山修さん はなさかしろうさん
ほっとさん RINTAROさん 占魚亭さん 諏訪冬葉さん
るかなんさん 原岡望さん
当選: 中村丈志さん
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