推理将棋第171回解答(3)
[2024年4月11日最終更新] 余詰修正(赤字部分)、反省コメント
推理将棋第171回出題の171-3の解答です。推理将棋は将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元するパズル。はじめての方は どんな将棋だったの? - 推理将棋入門 をごらんください。
関連情報: 推理将棋第171回出題 推理将棋第171回解答(1) (2) (3) (4)
推理将棋(おもちゃ箱) 推理将棋(隣の将棋) どんな将棋だったの? - 推理将棋入門
171-3 上級 はなさかしろう 作 攻方連続両王手詰 その2.5&その3 2024 44手+45手
「あけましておめでとう! 年が明けたのにまだ両王手に凝っているの?」
「「謹賀新年! ちゃんと指し初めしたよ。二局指したところさ」」
「ひとつは、44手で詰んだよ。
20~44手目の後手の着手はそれぞれ異なる地点の先手玉への13回連続両王手だったな。
7手目は斜め前と斜め後ろに味方の歩がある地点への着手で、
14手目は角頭の地点への着手で、
最終手が初の成だったよ」
「もうひとつは、45手で詰んだよ。
19~45手目の先手の着手はそれぞれ異なる地点の後手玉への14回連続両王手だったよ。
同の手は2回同の手は連続で2回(同の手に対して同の手で応じたことがあった)。
そして、11手目は初めての龍の手さ」
「ふうん。11手目が初めての龍の手はまぁいいけど、ほかはあんまり年賀っぽくなくない?」
「「そんなことないよ。龍といえば、ぎざぎざでなが~い身体の持ち主だからね!!」」
さて、どんな手順だったのでしょうか。
(条件)
A(その2.5)
- 44手で詰んだ
- 20~44手目の後手の着手はそれぞれ異なる地点の先手玉への13回連続両王手
- 7手目は斜め前と斜め後ろに味方の歩がある地点への着手
- 14手目は角頭の地点への着手
- 最終手は初の成
B(その3)
- 45手で詰んだ
- 19~45手目の先手の着手はそれぞれ異なる地点の後手玉への14回連続両王手
- 同の手2回同の手は連続で2回
- 11手目は初めての龍の手
出題のことば(担当 Pontamon)
スーパーマンはローマ数字、ターミネータは算用数字、小数点はダイハード4.0が最初?最近は-1.0の負の数も。さて2.5は何故?
作者ヒント
連続両王手の回数から連続両王手開始直前の局面が概ね推定できれば半ば解けています。その2.5は玉の経路を確保すること、その3は玉方のアシストがポイントでしょうか。(はなさかしろう)
締め切り前ヒント
170-6の結果稿に書きましたが、「最長連続両王手についての考察」(29ページ目)を参考にすると良いでしょう。
171-3Aは「その2」と同様に角2枚のレール上を飛が鋸状の移動で先手玉を99地点まで追います。
171-3Bは飛2枚のレール上を銀が横挽鋸のように細かく移動して先手玉を94地点まで追います。
余詰修正
「B.その3」の会話の2箇所の「龍の手」と条件の「龍の手」の前に「初めての」を挿入して余詰修正とさせていただきます。
会話の「同の手は2回」を「同の手は連続で2回(同の手に対して同の手で応じたことがあった)」に修正し、条件の「同の手2回」を「同の手は連続で2回」に修正させていただきます。
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推理将棋171-3 解答 担当 Pontamon A.その2.5 B.その3 (条件) A(その2.5) B(その3) |
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A(その2.5)
前回の連続両王手の作品は「169-3 攻方連続両王手詰 その2」でした。この「その2」では全て異なる玉位置に対する両王手を連続5回掛け続けたものでした。12手目から20手目までの両王手5回は15と25の角とそれらの利き筋上を飛が移動して、47から69までの先手陣内の5地点の玉に両王手を掛けて行くものでした。今回は「その2.5」となっていることから両王手は2枚の角と飛のシャッターをずらして行く同じ構造なのかもしれません。条件に「14手目は角頭の地点への着手」があるので、これは角頭へ飛を動かして両王手の準備をしているようにも見えます。角と飛での両王手で追う場合は玉は同じ筋と同じ段の着手を繰り返して全体的には斜め方向へ進むので、できる限りの両王手を繰り返すには玉の終点は隅になるはずです。初期状態の角の位置から作図し易い玉の最終位置は99になるでしょう。ここから13回の両王手の玉位置を逆算してみます。
▲99玉になるひとつ前の位置は89地点と98取点の2通りがあります。89地点経由でも98地点経由でも13回連続両王手を開始するときの玉位置は33になります。98経由の場合は最初の両王手に対して▲34玉と指すことになるので、後手の角位置を「その2」と同様に縦位置の△11角と△12角に置き、飛を△22飛に配置すると最初の両王手が△23飛になります。後手は△23飛を指せるように準備段階で△24歩を突いておく必要があり、先手玉が▲44玉を指せるように△44歩も必要です。先手陣の邪魔駒としては89の桂、67と77の歩になります。邪魔駒を排除するための▲98香、▲66歩、▲65歩、▲76歩、▲77桂、▲65桂の6手の他、玉が33地点まで行くための玉の6手も必要なので19手までの20手では足りないので後手の協力が必要です。89経由の▲99玉の13回連続両王手を開始する準備をしてみると参考図Aの手順になり、先手の駒配置は19手までに準備できたのですが、協力した後手の手が足りず両王手開始には6手オーバーしてしまいました。
参考図A:▲68玉、△34歩、▲66歩、△同角、▲67玉、△77角不成、
▲56玉、△88角不成、▲98香、△14歩、▲45玉、△13香、
▲34玉、△11角不成、▲77桂、△22飛、▲65桂、△33桂、
▲同玉、△12角、▲96歩、△24歩、▲95歩、△44歩、
▲94歩 まで25手
それでは、玉が98地点経由で▲99玉とする両王手の準備ではどうなるでしょう。玉の経路上にある駒は、87の歩、77の歩と99の香です。後手は△54歩の協力をすれば玉移動の経路の準備ができます。77の歩が邪魔なのですが、▲76歩の1回だけではまだ玉の経路上にあるので▲75歩までが必要になります。8筋の歩は▲86歩の1手だけで大丈夫なのですが、▲75歩を先に指していると▲86歩を7手目に指せると「7手目は斜め前と斜め後ろに味方の歩がある地点への着手」の条件をクリアできます。99の香を▲98香とすると玉が最終的に移動する99地点は空きますが、その前の▲98玉を指せません。▲97香を指すには▲96歩の着手も必要なので、後手角で△99角不成で取ってもらうのが良いかもしれません。
98地点経由の玉移動でも両王手開始地点は33ですが、後手の角や飛の配置が参考図とは異なり、角は11と21の横並びに配置し、飛は22に配置して両王手開始の手は△32飛になります。この配置のためには11の香と21の桂が邪魔になっています。これらを踏まえ、▲98玉から▲99玉への移動になる13回連続両王手の手順を考えてみます。7手目に▲86歩を指すには▲76歩、▲75歩の2手が必要ですが、それだと▲86歩が5手目になってしまうので何か1手指す必要があります。▲96歩、▲97香だと2手必要になるのであいません。▲68玉を指しておくのも良いのですが、玉の手と▲75歩の手順前後が可能になるので、指せる手では角の手でしょう。つまり3手目は▲33角不成で2手目は角の居場所を確保するための△12香が妥当でしょう。初手から▲76歩、△12香、▲33角不成、△同角、▲75歩と進み、7手目は▲86歩ですが、6手目は角道が通ったので後手に99の香を取ってもらう△99角不成です。続けて7手目から▲86歩、△11角不成で角をセットします。先手は玉移動に邪魔な先手駒の始末が終わっているので玉を33へ移動させるための▲68玉が第一歩です。この時点では11の後手角が99まで利いているので次の先手着手▲77玉を指せません。そこで10手目に△33桂で角の利きを止めて貰い、11手目は▲77玉。14手目条件では角頭への着手が必要ですが11の角の角頭の12には香が居るので14手目に角頭の手を指せるように、12手目は持ち駒の角を21地点へ打つ△21角です。続いて、▲66玉に△22飛、▲55玉、△44歩に▲同玉とすれば、18手目の△54歩に▲33玉として両王手開始の準備が完了します。
20手目からは両王手の連続で先手玉を99地点まで追いやって、44手目の初の駒成となる△98飛成で詰みとなります。
20手目からは△32飛、▲43玉、△33飛、▲44玉、△43飛、▲54玉、△44飛、▲55玉、△54飛、▲65玉、△55飛、▲66玉、△65飛、▲76玉、△66飛、▲77玉、△76飛、▲87玉、△77飛不成、▲88玉、△87飛不成、▲98玉、△88飛不成、▲99玉、△98飛成 です。
B(その3)
角2枚で玉を斜めに追う連続両王手では13回連続が最多でしたが、本問のその3では14回連続の両王手という条件です。玉を斜めに追う手筋とは違う両王手の手筋を考える必要があります。玉位置が全て異なるのですから、遠距離の利きが必要になるので、角で駄目なら飛になるでしよう。先手が後手玉に連続王手を掛けて45手目に詰まし、遠距離の利く駒として飛を使うのであれば、横方向に玉を追うことになるでしょう。玉を追うのは後手の初期配置の歩で退路が塞がれている4段目と5段目を使う形が想像できます。両王手の手を指す駒は玉の退路がある銀です。ある筋の5段目に居る玉に対して斜め後ろの4段目から銀で王手を掛けると、玉は銀の腹へ逃げることができ、銀を玉頭へ動かして王手すると、玉は斜め前の銀腹へ逃げることができます。つまり。玉は同じ筋で2回両王手を受けてから隣の筋へ移動することになります。もし、玉が端の9筋で詰まされるのであれば、14回連続の両王手は3筋の35地点の玉に対する両王手から始まるはずです。
両王手を開始する際の駒配置は、後手玉が35地点、先手の飛が14と15に居て、25には先手の銀が居る配置から両王手が始まるはずです。先手は銀と飛を取る必要があるので両王手開始の局面を作ってみたのが参考図Bの手順となります。無事に配置が完了して、19手目から14回連続の両王手ができて、45手目の▲95銀で詰めることができるのですが、条件を確認してみると「同の手2回」はクリアしていますが、「11手目は龍の手」をクリアできていません。第一、飛不成の手があるわけではなく、飛が成る機会すらありませんでした。
参考図B:▲76歩、△32銀、▲33角成、△42飛、▲32馬、△同飛、
▲75歩、△35飛、▲78飛、△75飛、▲同飛、△42玉、
▲15飛、△33玉、▲25銀、△44玉、▲14飛打、△35玉 まで18手
初手で突いた▲76歩を活用して、▲75歩を指し、△75飛を▲同飛で取る11手目でしたが、11手目が龍の手なら9手目までに飛成をする必要があるということです。2手目の△32飛を3手目の▲33角成から5手目に▲32馬として飛を取り、7手目に飛を打って9手目に飛成をすれば11手目に龍の手を指すことはできますが、初期配置の自陣の飛は手付かずになっていて、残り3手では自陣の飛を14か15へ配置したり、銀を取って▲25銀と配置する手は指すことができません。そこで考えたのが先手の自陣の飛を▲38飛とし、どうにかして9手目までに▲31飛成で銀を取りつつ龍を作ることを目指してみます。初手から▲36歩、△32飛、▲35歩、△34歩、▲同歩、△同飛、▲38飛とすれば8手目に34地点の飛を3筋から移動させれば9手目に▲31飛成で龍を作ることができます。飛の配置は14と15でしたので、8手目は△14飛とすれば一石二鳥になるはず。しかし、一石二鳥の手だと思った△14飛は後手の飛なので先手は11手目の龍の手で後手の飛を取れる地点へ移動する必要があります。もし▲34龍から▲14龍で後手の飛を取って▲15飛と打てたとしても、後手玉は▲14龍と▲15飛が配置されている中を△35玉とするには無理があります。後手玉が△35玉とするにはその前に▲25銀を打って15の飛もしくは龍の利きを遮断する必要があります。そこで、10手目は△15飛として先手に飛を取らせる場所を15地点に変更します。11手目の龍の手は▲35龍で、続けて△42玉、▲15龍、△33玉、▲25銀で龍の利きを止め、16手目からの△44玉、▲14飛、△35玉で両王手開始の準備が整いました。
あとは▲24銀、△34玉、▲35銀、△45玉、▲34銀、△44玉の要領で玉を9筋方面を追いやって、41手目からの▲85銀、△95玉、▲84銀、△94玉、▲95銀で詰みとなります。
解答締め切り日に171-3Bでの余詰指摘がほっとさんからありました。粗検、大変申し訳ありませんでした。
Bの余詰:▲76歩、△32飛、▲33角成、△同飛、▲38飛、△37飛成、
▲75歩、△26龍、▲31飛成、△35龍、▲同龍、△42玉、
▲15龍、△33玉、▲25銀、△44玉、▲14飛、△35玉、
▲24銀、△34玉、▲35銀、△45玉、▲34銀、△44玉、
▲45銀、△55玉、▲44銀、△54玉、▲55銀、△65玉、
▲54銀、△64玉、▲65銀、△75玉、▲64銀、△74玉、
▲75銀、△85玉、▲74銀、△84玉、▲85銀、△95玉、
▲84銀、△94玉、▲95銀 まで45手
第172回の解答時にpiyoさんから171-3の余詰指摘がありました。粗検、大変申し訳ありませんでした。
Bの余詰:▲76歩、△32飛、▲33角不成、△同飛、▲38飛、△37飛不成、
▲同飛、△94角、▲31飛成、△76角、▲35竜、△42玉、
▲15竜、△33玉、▲25銀、△44玉、▲14飛、△35玉、
▲24銀、△34玉、▲35銀、△45玉、▲34銀、△44玉、
▲45銀、△55玉、▲44銀、△54玉、▲55銀、△65玉、
▲54銀、△64玉、▲65銀、△75玉、▲64銀、△74玉、
▲75銀、△85玉、▲74銀、△84玉、▲85銀、△95玉、
▲84銀、△94玉、▲95銀 まで45手
それではみなさんの短評をどうぞ。
(短評)
はなさかしろうさん(作者)「Aはせっかくなので169-3の階段をフルスケールにしてみました。上から行くか下から行くか(解図では最終手の成条件が参考になりそうです)、11ともう一枚の角を12にするか21にするか、手数が最少になっていそうなものを探しました。
Bはもともとは76歩以下の手順(玉方に待ち手が1手発生します)で作問したのですが、Pontamonさんに検討していただいて、いろいろな可能性を教えていただきましたので、11手目が龍の手になる本作意に変更しました。年賀でなければ手順を変え、連続両王手条件と「同の手は同飛2回のみ」として、手数+2条件にまとめたいところですが…その後のNAOさんの169-3コメントを見ると、準備18手は相当なバリエーションがあるようで、なにかと難しい問題だったかもしれません。」
■169-3の締め切り前後に、NAOさんとの間でコメントのやり取りがあったのですね。気付いてませんでしたが、何やら長編作がありそうですね。おもちゃ箱では年賀推理以外で40手超え作の出題は難しいでしょうね。昨年の「卯」のあぶり出しが61手で最長。通常問題だと一乗谷酔象さん作の「100-3 記念対局」の34手が最長で次点は緑衾さん作の「124-1 銀世界」の31手なので、30手辺りが出題の限度かと思います。(現担当者の棋力不足が一番の原因なのかも(笑))
NAOさん「13回連続は2枚角+飛鋸/玉鋸の機構。玉が最短経路の角道を移動するため33桂~44歩は最速ぴったりのお膳立て。
14回連続は飛龍+銀鋸/玉鋸の機構。駒のない中段を活用できるが歩が残ると邪魔になる。31飛成が龍を作り銀を入手する鍵の着手。
両問は作者の連続両王手研究の集大成。171の連続両王手の構想作2題は、予備知識(WFP161号の作者解説)を知らないと相当の難問だろう。」
■手数が長いことも解図意欲低下に働いたのか、解答者は僅か3名でした。
飯山修さん「どちらもサイクル到達に1,2手足りない。残念。」
■特にBの方は素直に14と15に飛(龍)を配置しないのでややこしいですね。△34同飛で4段目に来たのだからそのまま△14飛にしておくと手数が足りなくなります。
ほっとさん(双方解)「A 両王手の舞台を作るまでの手順が派手で良い。
B こちらも舞台づくりが巧妙。余詰の修正は容易でしょう。」
■余詰のご指摘、ありがとうございます。後々に訪問される方のためにも出題ページは修正させていただきました。
《 作者の反省コメント 》 (4月11日追加)
ご指摘ありがとうございます。粗検申し訳ありません。お蔭さまでようやく、ひとつ気付きを得ることができました。
本作の検討不足の直接の原因は、中段がクリアになっている必要があるとの思い込みがあったことですが、遠因あるいは真因は、短評にも書いたように、手数に緩みがあったことにあります。ということで、上記修正(応急手当)とは別に、抜本的な修正(改作)をしてみました。
- 44手で詰んだ
- 18~44手目の後手の着手はそれぞれ異なる地点の先手玉への14回連続両王手
- 最後の真横方向移動に対して唯一の成で応じた
中段クリアに拘らなければ44手(準備17手)で14連続できました。年賀要素は全くなくなってしまいましたが…。
抜本修正(改作)条件の作意は以下の手順です。
▲76歩、△32飛、▲33角不成、△同飛、▲75歩、△35飛、
▲74歩、△95飛、▲88飛、△同角成、▲68玉、△79馬、
▲77玉、△85銀、▲66玉、△96飛打、▲75玉、△86銀、
▲76玉、△75銀、▲65玉、△76銀、▲66玉、△65銀、
▲55玉、△66銀、▲56玉、△55銀、▲45玉、△56銀、
▲46玉、△45銀、▲35玉、△46銀、▲36玉、△35銀、
▲25玉、△36銀、▲26玉、△25銀、▲15玉、△26銀、
▲16玉、△15銀 まで44手
正解:3名
NAOさん はなさかしろうさん ほっとさん
(当選者は全題の解答発表後に発表)
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