詰将棋創作プログラミング 26 同一作リストの分析
[2019年3月27日最終更新]
詰将棋創作プログラミング 26 同一作リストの分析
私の詰将棋データベース(以下単に詰将棋DBと呼ぶ)は、全詰連のDB(将棋雑誌など)、詰将棋年報(新聞、一般誌、スマホ詰パラなど)の詰将棋に、最近の詰将棋、Webの詰将棋や単行本の詰将棋の一部を私が追加したもので構成されている。
2016年1月に詰将棋創作プログラミング 14 同一作リストの作成で、詰将棋DBの全詰将棋の中で作者名の異なる同一作を調べて同一作リストを作成したことを報告した。詰将棋DBは当時25万作ぐらいだったが、それから10万作以上増加したので、あらためて現時点での同一作リストを作成してみた。
今回は、作者ごとに見られるようにするため、テキストファイルだけでなくCSV形式でも出力するようにした。Excelで開けば作者名でソーティングしたりできるので、いろいろ調べてみた。ただし、14 同一作リストの作成でも書いたように、データベースの情報が不完全、不正確な部分もあり、数字は参考程度にみていただきたい。初出が詰将棋DBに収録されていない場合など、どちらが同一作かの判断が逆になるケースもあり、正確な情報は原典にあたる必要がある。
1.同一作の割合
(2019年3月時点)
全詰将棋 362357
同一図 69890 19.3%
異作者同一作 4136 1.14%
(2016年1月時点)
全詰将棋 256592
同一図 46827 18.2%
異作者同一作 3083 1.2%
割合が少し変動しているが、同一図の割合が増えているのは、最近多く追加しているWebや単行本の詰将棋は既発表作の掲載が多いためだろう。異作者同一作の割合が少し減ったのは、今回ペンネームが分かって同作者と判明した分を削除した影響と思われる。
2.年度別の遷移
最近は 詰将棋同一検索ページ が無料で利用できるので、異作者同一作はほとんど発表されてないことを期待したが、減少はしているもののまだまだ多い(2017年以降は詰将棋年報が未発行なので、今後増加する可能性大)。
2019年 23作(3月時点)
2018年 45作
2017年 17作
2016年 89作
2015年 100作
2014年 97作
少なく共、将棋雑誌や新しい単行本、プロ棋士の出題などでは、100%詰将棋同一検索ページ でチェックして同一作ゼロを目指してほしいものだ。
2019年分の23作は以下の通り。
##### No.9 及川拓馬 将棋世界P199 2019年4月 詰将棋サロン色紙
同一:No.1805 伊藤果 伊藤果@hi1844 2019.1.18 No.832今週の詰将棋
##### No.29 中田章道 将棋世界P203 2019年4月 実戦に役立つ5手7手詰09
同一:No.227378 木村義雄 詰棋通信76号P197 1984年12月 1973.3 文芸春秋
##### No.60 関口勝男 上本町ハイハイ囲碁将棋クラブ 2019.3.5 新しい詰将棋初段150題(羽生善治監修) 今日の詰将棋3月5日(火)出題
同一:No.294165 松下力観 詰棋通信78号P10 1963年9月 河北新報6回
##### No.437 椎名龍一 将棋サプリ2.0 2019.2.3 将棋1手詰入門ドリル 1手詰195問目
同一:No.64329 野口修 日めくり詰め将棋カレンダー2011 2011.1.24
※同一:塚田正夫・宮本弓彦「将棋の詰め方」1954年7月##### No.866 浦野真彦 将棋世界P59 2019年2月 7手詰ハンドブック 第1回詰将棋創作キッズチャレンジ同一:No.59746 飯島栄治 イブニングP018 2011年9月
※7手詰ハンドブックは2011年5月発行なので、浦野作の方が先
##### No.893 浦野真彦 将棋世界付録P35 2019年2月 プロ棋士の詰将棋第18問
同一:No.19669 関根茂 夕刊フジP066 2016年4月
##### No.1209 青野照市 将棋サプリ2.0 2019.1.22 青野照市の基本の詰将棋5手 5手詰183問目小塚英章(詰パラ1957年10月)と同一
同一:No.304803 小塚英章 詰パラP012 1957年10月 20級天国4
##### No.1211 青野照市 将棋サプリ2.0 2019.1.24 青野照市の基本の詰将棋5手 5手詰185問目中本勲(詰パラ1955年1月)と同一
同一:No.216287 芹沢博文 詰棋通信104号P168 1987年1月 1985.5.19 山形新聞
※同一:中本勲 詰パラ1955年1月(左右逆)
##### No.1217 青野照市 将棋サプリ2.0 2019.1.30 青野照市の基本の詰将棋5手 5手詰191問目岡田敏(詰パラ2000年4月)と同一
同一:No.152168 岡田敏 詰パラP4 2000年4月 保育園3
##### No.1305 神吉宏充 大逆転将棋倶楽部Twitter 2019.1.27 中田章道中日スポーツ1992.01.12と同一
同一:No.171563 中田章道 詰棋通信215号P096 1996年5月 1992.01.12 中日スポーツ
##### No.1512 谷口叶多 暁将棋部屋第3号 2019年1月 暁詰将棋
同一:No.171941 清水孝晏 将棋世界P182 1996年4月 5手7手詰1
##### No.1553 山口明 解けてうれしい詰将棋2019年新年号(通巻50号) 2019年1月 中級問題8
同一:No.73552 森信雄 森信雄の日々入門詰将棋 2009.10.26 No.1295-2
##### No.1564 藤井憲郎 解けてうれしい詰将棋2019年新年号(通巻50号) 2019年1月 中級問題19
同一:No.223720 内藤國雄 詰棋通信85号P071 1985年6月 1984.7.24 デイリースポーツ
##### No.1627 伊藤果 絶品!4×4マスの詰将棋 2019年1月 第41問
同一:No.289031 安達康二 近代将棋P105 1966年6月 詰め筋いろいろ
##### No.1629 伊藤果 絶品!4×4マスの詰将棋 2019年1月 第43問
同一:No.101430 関根茂 夕刊フジ 2006.7.25
##### No.1671 伊藤果 絶品!4×4マスの詰将棋 2019年1月 第85問
同一:No.109146 勝浦修 サンケイスポーツ 2005.7.20 第10405回
※同一:福田昭二 将棋評論1951年5月
##### No.1678 伊藤果 絶品!4×4マスの詰将棋 2019年1月 第92問
同一:No.237392 内藤國雄 詰棋通信44号P087 1983年3月 1982.11.7 NHK
##### No.1682 伊藤果 絶品!4×4マスの詰将棋 2019年1月 第96問
同一:No.49810 勝浦修 サンケイスポーツP000 2012年12月 第13041回
##### No.1698 伊藤果 絶品!4×4マスの詰将棋 2019年1月 第112問
同一:No.275191 塚田正夫 詰パラP09 1973年1月 塚田流への郷愁 近代将棋1953年1月
##### No.1705 伊藤果 絶品!4×4マスの詰将棋 2019年1月 第119問
同一:No.132984 岡村孝雄 詰棋めいと第31号P87 2002年11月 詰パラHP2001年10月 マイ・ベスト展番外02
##### No.1728 伊藤果 絶品!4×4マスの詰将棋 2019年1月 第142問
同一:No.222684 中田章道 詰棋通信87号P019 1985年8月 1984.2.16 中日スポーツ
##### No.1821 野村量 詰パラP5 2019年1月 キッズ06
同一:No.37326 摂津正忠 農業共済新聞P005 2014年5月
3.同一作の多い作者
別作者の既発表作と同一作を発表した数が多い作者(イニシャルにした)は以下の通り。ほとんどがプロ棋士である。
左が同一作のあった数、右がその作者の詰将棋DB内のデータ数。
N1プロ 355/958
O プロ 284/9328
N2プロ 212/5289
K1さん 189/516
S1プロ 183/3950
M プロ 155/4841
N3プロ 129/11536
N4プロ 104/8051
I1プロ 97/14287
K2プロ 85/7615
プロ棋士は発表数も多いので、偶然の一致による同一数も多くなるが、偶然では説明できない高い割合で同一作を出題している方もいる。
4.同一作を発表された数の多い作者
逆にあとから別な人に同一作を発表された数が多い作者も調べてみた。
S2プロ 474/2136
O プロ 310/9328
F プロ 112/6838
I1プロ 102/14287
N4プロ 88/8051
N5さん 88/1200
Y プロ 80/245
N3プロ 79/11536
I2プロ 76/1253
S3プロ 72/769
こちらも偶然とは思えない高い割合の方がいる。そこで、誰に同一作を発表されたのか調べてみた。
S2プロの474作のうち313作はN1プロ、141作はN2プロによって出題。
Oプロの310作のうち96作はMプロ、44作はYプロによって出題。
という感じで、両者合意の上か無断盗用かは分からないが、偶然の一致ではなく流用と考えられる。昔は奨励会員などに下請けで作らせるプロ棋士もいたそうなので、そこでどこからかこっそり持ってきたとか、いろいろな事情がありそうだ。
5.同一検索ページの活用を
異作者同一作の1.14%は、偶然の一致にしては高すぎると思ったが、上記のような意図的な流用がかなりの部分を占めているようなので、偶然一致する可能性はずっと低いのだろう。
いずれにしても現在では、詰将棋同一検索ページ でかなり調べられるので、作者や担当者は発表前に必ずチェックするようにしよう。
面倒だからとこの手間を省いて発表後に指摘されると、評判がおちるだけでなく、なぜチェックしなかったのかとか、盗用でないことのいいわけとか、あとの手間の方がずっと大変。作者が投稿するときに「同一作がないことは同一検索ページで確認済み」と書けば、採用の可能性も少しは上がるかもしれない。
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