象戯勇略と象戯駒競
[2024年2月22日最終更新]
(2024年2月22日追記) 下記で象戯勇略が紹介されているので、あわせてごらんください。
(2023年3月29日追記) 下記で象戯駒競が紹介されているので、あわせてごらんください。
以前、河内勲さんの「九代大橋宗桂 象戯舞玉」、「无住僊良 撰 象戯大矢数」を紹介しました。
古典詰棋書の単なる復刻ではなく、数多くある不完全作のすべてに対して河内勲さんによる補正図を収録しているのが異色なところ。
河内さんは、その後も古図式の補正に取り組んでおられ、昨年3月には二代伊藤宗印の「象遊勇略」を発行、そして、このほど第4弾として初代伊藤宗看の「象戯駒競」が発行されました。
いずれも私家版で、書店では販売していません。
1)象戯勇略
これは五世名人、二代伊藤宗印の献上図式「象戯作物」で、のちに将棋勇略と呼ばれるようになりました。
二代伊藤宗印は、将棋図巧の伊藤看寿や将棋無双の三代伊藤宗看ほど有名ではありませんが、「将棋勇略」100題と、不成百番とも呼ばれる「将棋精妙」100題の計200題を創作した、詰将棋興隆期の重要な人物です。
将棋勇略は玉位置がすべて中段玉あるいは入玉であるのが特徴で、それまでの上段玉・実戦型中心の作品群から新たな境地を開拓しようとしていることがわかります。趣向詰や曲詰も登場していて、「詰将棋400年」では次の2作品を紹介しています。
全作品は、詰将棋博物館で見ることができます。
名人の献上図式でもあり、完全率は高い方ですが、それでも3割程度の不完全作があり、河内さんはそれらに対する補正図を示しています。
2)象戯駒競
駒競は、三世名人、初代伊藤宗看の献上図式「象戯圖式」で、のちに将棋駒くらべ・将棋駒競の名前で出版されました。
初代伊藤宗看には、詰中将棋の作品集「中象戯圖式」もあり、詰将棋にかなり力を入れていたことがわかります。
第68番の途中無仕掛けなど、現代にも通じる詰将棋らしい作品が多く、「詰将棋400年」では、「手余り作も殆どなくなり、現代的な詰将棋の理念を確立した。」と評価され、次の2作品が紹介されています。
駒競も、全作品を詰将棋博物館で見ることができます。
完全作は半数程度で、余詰などの不完全作がかなりあり、河内さんが補正図を示しています。
末尾に、特別寄稿として、北村憲一さんの「将軍家四代」が付いています。元祖宗桂から初代伊藤宗看にいたる将棋家とその詰将棋の事情を解説したもので、読みごたえがあります。
キズを承知で鑑賞することも可能なので、古図式の補正は必須とはいえませんが、補正図により鑑賞しやすくなる面はありそうです。しかし、それよりも、勇略、駒競といった有名でない作品集は、作品紹介も少なく、あまり目にすることがありません。本書があらためてこれらの作品群を鑑賞する契機になれば、その方が有益なのではないかと思います。
全詰連書籍部で取り扱いしているので、興味のある方はお買い求めください。
- 二代伊藤宗印『象戯勇略』河内勲補正 送料とも1500円
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