アートシアターの舞台裏(詰将棋の解説付き連続鑑賞)
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[2014年8月10日最終更新]
2014年7月に川崎市で行われた第30回詰将棋全国大会では、4年前の町田市での全国大会に続いて、コアな詰将棋ファンだけでなく、子供、女性、初級者などを含めてみんなが楽しめるフリータイム(交流タイム)が設けられました。詰将棋サイトおもちゃ箱が、そのフリータイムの企画として提供したのが「アートシアター 華麗なる立体曲詰の世界」。おもちゃ箱の中の美しい詰将棋のコーナー「詰将棋美術館」には立体曲詰もたくさん紹介されていますが、まだ未紹介の作品も含めて、立体曲詰の世界を正面の大スクリーンで一挙に味わってもらおうという企画です。幸い、みなさまに好評で楽しんでいただきました。
今後の全国大会などで、同様の企画を行いたい方のために、どのようにしてアートシアターを実現したのか、その舞台裏をお見せします。細かいところまではなかなか書けないので、実際に企画がある方はTETSU(omochabako@nifty.com)までご相談ください。
今回、試行錯誤でいろいろやってますので、必ずしもいいやり方とは限りません。こうした方がいいなどありましたらコメントでご教示ください。
関連情報: 第30回詰将棋全国大会 大会アルバム(2)フリータイム
解かない詰将棋ファンのために - アートシアターにようこそ
詰将棋美術館 (おもちゃ箱) 柿木の将棋ソフトウェア 冬眠蛙の冬眠日記
1.全体の流れ
PowerPointのスライドショーで画面を進めつつ、Kifu for Windowsで手順を再生、というのが基本的な流れです。進行の制御はRubyのプログラムで行なっています。
このほか、図面作成、かんたん! AI TALK II Plus(解説ナレーションの作成)を利用しました。
- PowerPoint: マイクロソフトの製品。
- Kifu for Windows: 開発者は柿木義一さん。柿木の将棋ソフトウェアより入手できます。
- Ruby: オープンソースのスクリプト言語。
- 図面作成: 開発者は波崎黒生さん。冬眠蛙の冬眠日記より入手でき、また、利用法が紹介されています。
- かんたん! AI TALK II: エーアイの製品。
2.作る(用意する)ファイル
- 鑑賞する各詰将棋の棋譜ファイル(kif形式)
- 解説のプレゼンファイル(PowerPoint)
各スライドに張る図面ファイルは棋譜ファイルを入力に図面作成で作成 - 各スライドでのナレーション(wav形式)
- 進行用のスクリプト(Ruby)
3.詰将棋を用意する
鑑賞する詰将棋について、1作ずつ、柿木将棋のkifファイルの形式でファイルを用意します。kifファイルはKifu for Windowsでも柿木将棋でも作成できます。
kifファイル作成時のポイント。
- 最初の局面にタイトル情報をコメントで入力 「閉じた窓 → ???
添田宗太夫 象戯秘曲集 第82番」 といった感じで - 最後の局面にコメントを付ける 「閉じた窓 → 開いた窓
添田宗太夫「平窓」 象戯秘曲集 第82番」 など
(三段曲詰などの場合は途中の局面にも) - 編集メニューの詰将棋情報で、作品名、作者、発表誌など入力(右上に表示される)
- サンプルの棋譜: 「at0201.kif」をダウンロード (2KB)
Kifu for Windowsは再現中コメントがあるとき一定時間停止することができます。
Kifu for Windowsの設定方法はくるくるシアターの舞台裏(詰将棋の連続鑑賞)をご参照ください。
4.解説のプレゼンファイルの作成
PowerPointでプレゼンファイルを作成します。アートシアターの場合は、立体曲詰の初形と詰上りを同時に見せたいので、各詰将棋について、まず初形だけのスライドを表示、続いてKifu for Windowsで詰将棋の手順を鑑賞、終わってから初形と詰上りを同時に表示という流れにしました。図面は図面作成で作成して各スライドに張っています。アートシアターで実際に使ったファイルを置いておきますので、参考にしてください。
- 「art-theatre.pptx」をダウンロード (945KB)
5.各スライドのナレーションの作成
「江戸時代に作られた、立体曲詰です。初形は、閉じた窓を、表しています。」といった感じで、解説のナレーションの音声ファイルを作っていきます。かんたん! AI TALK II Plusでは4人の話者が選べるので、今回は「かほ」さんの声にしました。
- サンプルのナレーション: 「at012.wav」をダウンロード (222KB)
解説を各スライドの文字だけで済ます場合は、ナレーションファイルの作成は省略できます。
6.進行用のスクリプトを作成
Rubyは日本人(まつもとひろゆきさん)の開発したスクリプト言語だけあって、ネット上の日本語の情報が豊富にあるので、検索するとたいがい誰かがやっている実例が見つかります。PowerPointのスライド遷移を制御できないかなあと思って探したら、やはりありました。
次のページに移動とか、指定したページに移動とか、簡単にできるようでうれしいですね。表示している秒数はRubyのsleepで待たせればいいようです。
スクリプトの説明は難しいので、実際に使ったスクリプトを見てください。
- 「at.rb」をダウンロード (13KB)
一つ説明しておきたいのは、棋譜再現時の時間設定。通常は1手0.6秒にしたのですが、「曼陀羅」のような長手数だと時間が掛かりすぎるので、そのときだけ0.4秒にしています。これは二つの環境ファイル(KIFUW95.ENV)を用意しておいて、それを切り替えることで実現しました。
7.上映の仕方
プロジェクターは事前にPCと接続、スクリーンの大きさやピントなど確認しておきます。
プレゼンファイルをPowerPointで開き、その状態でのRubyスクリプトを起動すると、自動的にスライドショーに切り替わり、詰将棋の解説付き連続鑑賞が始まります。このときスライドの画面をクリックして前面にだし、スクリプトのウィンドウ(コマンドプロンプト)を後ろに隠しておきます。あとは見ているだけです。
画面の解像度は1024×768に設定しておくと、盤面の表示がちょうど画面いっぱいになってきれい。また、ノートPC単体では音量が小さいので、PC用のスピーカーを用意しておくと便利です。今回も用意していたのですが、会場のスピーカーが利用できたので、そちらを使いました。
自分のパソコンで鑑賞するだけなら、このあたりは適当でいいですね。
8.おわりに
やっぱり、いろいろなツールを組み合わせて使うのは大変ですね。本当は手順の再現中にも、もっとコメントや盤面のマスに色を付けたり表示をいろいろ変えたいのですが、やはりそのへんは専用のソフトがないと厳しそうです。最終的には動画ファイルにできると、YouTubeにアップしたりできて便利なんですけどね。
表現の自由度が大きく、連続鑑賞もできる、詰将棋プレゼンソフトの登場を期待して待ちたいと思います。
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